- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163912608
感想・レビュー・書評
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★4.0
全5編が収録された短編集。「ただ、運が悪かっただけ」と「忘却」は、まだ主人公の心を軽くしてくれる内容だったものの、他3編は見事なまでに主人公がどつぼに嵌っていく作品揃い。中でも、「埋め合わせ」で嘘を塗り重ねていく主人公があまりに痛々しい。そして、「ミモザ」の元彼が本当に気持ち悪いものの、最終的なオチは少し分かりやすかった。当事者は気が動転しているから気付かなくても、第三者は夫が帰ってきた時点で「あれ?」と思ってしまう。全体的に腑に落ちる話揃いで面白くはあるものの、直木賞はちょっと違う気がする。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
お金にまつわる後味の悪い短篇集。
些細な悪意やズル、余計な事をしたばかりに面倒に巻き込まれる後悔。ふとした瞬間に陥る取り返しのつかない事態。
サラサラ読みやすくてよく出来たお話で、本当に嫌な気分になった。 -
日常のちょっとしたことが徐々に影響を及ぼしていく。そのじわじわくる感じが不気味。なんとかごまかそう、逃げ延びようと画策することと、打ち明けようという迷いの葛藤。大きな仕掛けがあるわけではないけれど、だからこそ日常に続いているのを感じられ誰の生活にもスッと入り込んでくるような物語。一編一編は短いけれど心になにか残るようなものがどの短編にもあってとても面白い。
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平穏に夏休みを終えたい小学校教諭、認知症の妻を傷つけたくない夫。元不倫相手を見返したい料理研究家…始まりは、ささやかな秘密。気付かぬうちにじわりじわりと「お金」の魔の手はやってきて、見逃したはずの小さな綻びは、彼ら自身を絡め取り、蝕んでいく。取り扱い注意!研ぎ澄まされたミステリ5篇。
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「ただ、運が悪かっただけ」 「埋め合わせ」 「忘却」 「お蔵入り」 「ミモザ」
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初めはほんの小さな出来心、保身、思いやり、といった小さなほころびだった。それが、もがけばもがくほど広がり、とうとう修復不可能なところまでいってしまう。その家庭の心象風景や、自身で感じられる周囲の景色の変化が恐ろしくて、興味深い。思わず次の展開を待ち望んで引き込まれてしまう。こんなはずじゃなかったが、これはすべて自分の罪なのだろうか、と自問するとき、人は、本性をさらけ出すのかもしれない。他人事ではない恐ろしさをはらんだ一冊だった。 -
ラストでドキッとするような感覚がとても面白い。芦沢先生のそういう話がとても好き。
特に【忘却】と【お蔵入り】のオチがとてもゾッとする話でお気に入りでした。
【忘却】は意味が分かると怖い話風でシンプルに怖い。
【お蔵入り】はオチを察したけど、それでも最後の一言が怖いな、、、と感じた。
全ての話でお金が絡んできてるせいか緊張感がとても伝わり、話の進行と共になんとなく「やばい、、、」と感じてしまい恐くなる。
殺人事件のミステリーとは違ったお金と言うテーマの話であった為、芦沢先生の他の作品と違ったようなキレを感じた。
個人的にはインパクトのある事件を絡めた話の方が好きだったし、期待し過ぎた感があり物足りなさを感じてしまった。
この作品を読んで面白いと感じたのなら、「許されようとは思いません」を読んでほしいなと思いました。 -
初・芦沢央でした。短編集,例えば2作目「埋め合わせ」は,過ってプールの水を抜いてしまった小学校教諭が水道料金の請求を恐れてごまかしを図る話で,途轍もなくスリリングな物語に仕上がっています。他作も些細な綻びが徐々に広がっていき破滅に至る様に手に汗握る。脇役の悪意にもヒリヒリする。
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五編の短編集。初めて読む作家の本。う〜ん、なるほどと共感するところもあり、そうかなぁ?と首を傾げるところも。でも最終編の「ミモザ」はイライラがつのるそんな主人公の行動には全く共感出来ない。
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心理描写が上手い作家さんだ。
主人公が追い詰められていく過程にぞわりとさせられた。
5編の中でも「埋め合わせ」と「忘却」はリアル過ぎる!
ああ〜読まなければよかった。 -
汚れた手になったとして、それを見なかったことにすると…。自分にもこういう要素があるんだろう。