汚れた手をそこで拭かない

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163912608

感想・レビュー・書評

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  • 不穏な予感に満ちた芦沢央さんの短編集。
    どれも些細なきっかけから選択を少しだけ誤ってしまった人たちが落ちていく様子が恐ろしい。イヤミスの真骨頂って感じで私は大好き。
    サクッと読めてサクッと落ち込みたいときにぴったり。笑

  • 5つの「どうしてこんなことに」短編集。
    第一話以外はそれぞれに、別の選択をしていたらこんなことにはならなかった、という最悪のイマ。
    あの時、別の方法を選んでいたら、という後悔は誰にでもある。しかもあの時選んだのは短絡的で自己中心的で、その場しのぎの選択たち。つまり別の「正しい道」を選ばなかったがために引き起こされた最低で最悪の現状。これはもう自業自得の極み、なのだけど、なのだけど、あぁ、わかるわかると思ってしまう。
    もし自分だったとしてもそうしていたよね、と。それは正しい選択じゃない、とわかっていたとしても選んじゃうよね、という。
    それは弱さなのか、甘さなのか、隙なのか。
    ただ、ひとつわかるのは、もし彼らが今後別の同じような目に遭ったとして、多分やはり選ぶのは、この、最悪のイマへの道だということ。

  • 一つの過ちを誤魔化そうとしてまた過ちを犯し収集つかないほど罪が広がっていく冷や汗だらっだらになるミステリーが収められた短編集。
    汚れた手を拭いてはいけないところで拭いちゃったから、どんどん汚れが広がっていってしまったような短編集で、だから「汚れた手をそこで拭かない」というタイトルが本当に秀逸!
    子供の頃、海外の衝撃事件を紹介するテレビ番組で、アメリカで虫歯が痛すぎて猟銃で虫歯を撃って顔の半分が吹っ飛んだ人がいて(確か一命は取り留めたと思う)。
    それ見て、あああ気持ちはすごいわかる!!と思った。
    冷静に考えれば今より悪くなる行動なのに、その時はダメージの大小の判断がつかない。
    この小説もなんかその感覚と同じだった。
    ごく普通の人たちが罪を上乗りしていくので、わかる!私もテンパってやっちゃうかもなーと、思わせるリアルさにハラハラしました。
    そして各小説の結末がまさかそんなところから!というところから足元をすくわれるようなホワイダニットで、やられたーーー!と、気持ちよく裏切られます。

  • そもそもこれがミステリだと知らずに読み始めたのが良くなかったのかも。自分の読解力のなさによるのかもしれないけど、あまりいい印象を得なかったです。
    ◎ただ、運が悪かっただけ
    病気の奥さんが、過去の知人の事故死が俺のせいだといつまでも言う夫に違うよと言ってあげるお話し…かと。一度読んで何が言いたいのか分かんなかったんでネット解説(評価高め)見てみたけど、あまりにも感想が違い過ぎたんでじっくり再読してみた。やっぱつまらん
    ◎埋め合わせ
    だからどうした⁈って感じ…オチがよく分からん。誰か説明して欲しいくらい
    ◎忘却
    ミステリなのかな⁈
    ◎お蔵入り
    「埋め合わせ」の彼もそうたけど、この彼も素直じゃない行動するからこうゆう流れになるんやんって心奥底でずーっと感じて気分が悪い。ミステリというか嫌な人物像を描いたお話しって思えてくる
    ◎ミモザ
    女性にも男にもイライラしまくったわ。帯の「ミステリはここまで到達した」はある意味その通りかも。

  • 日常に
    潜むわずかな
    落とし穴
    誤魔化す嘘が
    首絞めてくる


    5編からなる短編集
    どれも最後に心をザラっとさせるが
    癖になる作品でした

  • 「火のないところに煙は」、「許されようとは思いません」を立て続けに読んだところで本作を読みました。

    ゾクっとするようなストーリー展開に慣れてしまったからなのか、先の2作品で感じたスリルがなかったように感じました。

    しかし、人の負の面を切り取った描写は本作も健在で、特に差し迫る恐怖や罪悪感に耐えきれず、逃げたり隠したりする登場人物の心理描写は流石でした。

    個人的には、「ミモザ」のどうしようもなさが1番好みで、ゾクっとしました。

  • 5つの話。
    ただ運が悪かっただけは結構好きな話。
    他の4つの話は読んでて辛かった。
    なんか現実にそこで起こりそうで。自分もしてしまいそうで怖い。でも一つ言えるのは嘘はいけないということかな。

  • 読書備忘録592号。
    ★★★☆。
    短編サスペンス集です。
    タイトルが内容を良く表しています。汚れた手を拭く。要するにやってしまったコトを拭って無かったことにしたい。
    どれもこれも地味にやってしまったことが、大きな事態を巻き起こしてしまったのでは、と心配になる物語。
    地味に怖いですね。確かに不安になる。笑
    [ただ、運が悪かっただけ]不治の病を患った妻。夫は工務店を営む。夫が語った若かりし頃のわだかまり。自分が客に中古の脚立を売った為に、その客が転落死した、というわだかまり。しかし、その話を聞いた妻は驚きの解釈をする。私が死んだあと残される夫の荷物を下させるために。悪いのは・・・。
    [埋め合わせ]学校の教師。どうやらプールの排水バルブを閉め忘れて、水道代数十万円の損失を出してしまった。教頭に言おうとするがタイミングを逸する。外部から侵入した者がやった悪戯と見せかけるためにいろいろするが、同僚の先生に完璧に見破られる。同僚が取った対応は?
    [忘却]高齢夫婦が暮らすアパートの隣室の高齢男性が室内で熱中症によって孤独死していた。どうやら電気代滞納で電気を止められていたようだ。電気代滞納の封書が間違って高齢夫婦のポストに投函されていたことで、隣人に渡せていなかったことが、エアコンを使えなかったことに繋がったのではと夫は悩む。しかし事実は小説より奇なりであった・・・。
    [お蔵入り]映画の撮影。傑作になると映画監督は意気込む。そんな時、主演男優の覚せい剤疑惑が。このままでは映画は公開できない。勢いあまって、主演男優を撮影現場の宿泊施設のバルコニーから突き落としてしまう。関係者は事故に見せかけたが、ネットに殺人だとのデマが流れる。流した犯人の根深い恨みが。
    [ミモザ]昔、独身時代に憧れた妻帯者と不倫した。そして今は結婚して料理研究家として成功した。憧れた妻帯者は離婚して落ちぶれていた。そして再会。落ちぶれた男に金を無心される。泥濘にハマるように男の罠にハマっていく・・・。
    ミモザが一番怖いね。

    • ほくほくあーちゃんさん
      どの話も面白そうです!!
      「埋め合わせ」の水道代損失は、ニュースにもなりますもんね。
      「お蔵入り」は、覚醒剤疑惑ってのが現実世界でもありうる...
      どの話も面白そうです!!
      「埋め合わせ」の水道代損失は、ニュースにもなりますもんね。
      「お蔵入り」は、覚醒剤疑惑ってのが現実世界でもありうることなので、どの話も起こりそうなもので、読んだらざわざわしそうー
      2021/06/24
    • shintak5555さん
      若干ネタバレしちゃいましたが、是非手に取ってみてください。
      ほくほくあーちゃんさんなら1時間もあれば読み終わるでしょう。
      若干ネタバレしちゃいましたが、是非手に取ってみてください。
      ほくほくあーちゃんさんなら1時間もあれば読み終わるでしょう。
      2021/06/25
  • 心の奥を抉るような重さとサクサク読める軽快さを兼ね備えた文章。短編集の場合タイトルはどれか一話のものか全体を貫くテーマになることが多いが、本書はどちらでもないという謎。

  • めっちゃ面白い。特に最後のはドキドキハラハラ。(私の残念な語彙力。)

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著者プロフィール

1984年東京都生まれ。千葉大学文学部卒業。出版社勤務を経て、2012年『罪の余白』で、第3回「野性時代フロンティア文学賞」を受賞し、デビュー。16年刊行の『許されようとは思いません』が、「吉川英治文学新人賞」候補作に選出。18年『火のないところに煙は』で、「静岡書店大賞」を受賞、第16回「本屋大賞」にノミネートされる。20年刊行の『汚れた手をそこで拭かない』が、第164回「直木賞」、第42回「吉川英治文学新人賞」候補に選出された。その他著書に、『悪いものが、来ませんように』『今だけのあの子』『いつかの人質』『貘の耳たぶ』『僕の神さま』等がある。

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