悲劇の名門 團十郎十二代 (文春新書 805)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (303ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166608058

作品紹介・あらすじ

三百五十年にわたり歌舞伎界をリードしてきた市川宗家。十二人の團十郎はいかなる人物だったのか?舞台で刺殺された初代の血塗られたエピソード、「劇聖」と呼ばれる九代目の苦悩…。華やかな芸とスキャンダルに彩られた血筋を描く。

感想・レビュー・書評

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  • 数ある歌舞伎書の中で、團十郎を通して上手にコンパクトにしあげていますね。型や芸談が多い中、誰もふれたくないスキャンダラスを扱っている点は異色です。歌舞伎用語も、ほぼ注釈に頼らず本文ですすめていく姿勢に好感。
    江戸の時代背景も少し触れながら、時代を追っているので、文化史としても読めますね。
    「世襲」や「家」とは何かを問うたものであるが、弾左衛門や初代の出生を少し扱っているが、考える点は多いですね。
    民主主義(実力主義)と世襲(封建主義)を考えるのに参考になる1冊ですね。
    芸能の世界では、世襲が理解できる部分があるとするが、果たしてそうなのであろうか。理解できる事柄は、多々あるが、問題もある。
    課題がまた一つできました。

  • 12代が亡くなる前のものなので、読んでいてタイムラグの違和感が残念(筆者のせいではないが)。
    増補版がほしいところ。

  • クラシック音楽評論家として名を聞いていた人が、よもや探し求めていた團十郎の列伝を書いていようとは。
    著者みずからも言うように、歌舞伎よりは歴史に振った内容。舞台を観たことはないが歴史好きという、私のような者には願ってもない本だった。逆に、芝居は好きだが舞台を下りた役者には興味もないという人には、期待はずれとなるのかもしれない。
    初代から当代に至るまで、歴代の團十郎の生涯と事績を丹念に追って読みごたえがある。一般の歴史や社会の動きにも触れており、時代の中に息づく血脈を実感できる。著者は(私は浅学にして知らなかったのだが)クラシックと同じくらい歌舞伎をメインフィールドにしているそうで、調べてみればそれ関係の著作も多い。そんな人が、「初代生誕350周年というのに」特に何のイベントもないことを惜しみ、「市川家に頼まれたわけではないが」書いたというだけあって、その丁寧な仕事ぶりには何よりも愛がある。
    歌舞伎愛好家だけあって、役者として大成したわけではない贈十代についてはあっさりめだが、それでも現時点でこれ以上のものは望めないだろう。團十郎空位、おまけに戦後の混乱期における市川家当主としての功績にもきちんと言及されており、まずは申し分ないと思われる。
    強いて言うなら、系図を各章の扉にぶつ切りで掲載する方式は、やや見にくい。また、代が下るにつれて他の名跡との絡みも複雑化するので、できれば系図はそれらも網羅したものを、独立して付けてほしかった。
    「十一代目團十郎と六代目歌右衛門 悲劇の『神』と孤高の『女帝』」なる著書があるらしいので、次はこれを読んでみたいと思った。


    2015/5/16〜5/17読了

  • 初代市川團十郎から十二代團十郎と現在の海老蔵。歌舞伎界市川宗家の系譜と略歴を垣間見れる贅沢な本書。
    初代からの成田山との関係性や、代々、歌舞伎者ならでの挿話。また、初代、二代、五代、七代、九代の礎はいまも歌舞伎十八番のお箱の功績。
    筆者があとがきにて書いているように、九代目まで血縁者で継承されてきた血縁関係はいまない(現在は松本幸四郎家系統)。なのに市川團十郎
    、海老蔵たらしめるのか。それは「市川團十郎」たる「名前」のもつ地位や名誉によって生まれる正統な「團十郎」らしさなのかもしれない。
    傲慢さこそ「團十郎」。

  • まさしく、お芝居みたいな人生をたどる、

    一族。劇的。


    ざっくり読み。早く本物観たい。

  • 初代〜8代目までは文献から歴史を追う形で勢いで読ませる。9代目がなぜ劇聖になったのか、10代目が團十郎の名をなぜ生存中に継げなかったかのところで、ブラームスとベートーヴェンの話が出てくるところが、クラシック専門のこの人「らしく」面白い見方だと思った。そして11代目も著者の思い入れが感じられる記述で好感。市川宗家だけではなくその他の家の歴史にも触れており、歌舞伎そのものの歴史を追っている形になっている。

  • 「市川宗家」である「團十郎」の重みがなんなのか
    なんで今の「海老蔵」君があんなに騒がれるのか。
    そしてその背景にある江戸という時代、
    なかでも、今では当たり前の演目になっている「勧進帳」がどのようにして生まれたか(能の安宅だけでなく講談からも引用)
    このあたりは更に掘り下げるとおもしろそう。「泉祐能」(なんと三味線の入る能があった?)の存在は知りませんでした。
    ああ、知らないことがたくさんあります。。。

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著者プロフィール

1960年生まれ。早稲田大学第二文学部卒業。「カメラジャーナル」「クラシックジャーナル」を創刊し、同誌のほか、ドイツ、アメリカ等の出版社と提携して音楽家や文学者の評伝や写真集などを編集・出版。クラシック音楽、歌舞伎、映画、漫画などの分野で執筆活動を行っている。

「2019年 『阪神タイガース1985-2003』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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