終わらない戦争 ウクライナから見える世界の未来 (文春新書 1419)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166614196

作品紹介・あらすじ

ウクライナ戦争から500日が過ぎ、いよいよウクライナの反転攻勢が始まった。しかしロシア、ウクライナ双方が苦戦を強いられ、膠着する戦線。戦争の終わりは見えず、2024年のロシア大統領選を見据えると、もはや4年目への突入が現実となりつつあるという。この「終わらない戦争」、そして世界秩序の行方は――。『ウクライナ戦争の200日』(文春新書)、『ウクライナ戦争』(ちくま新書)に続くロシア・ウクライナ戦争の著者最新分析。『ウクライナ戦争の200日』でも一つの核をなした高橋杉雄さんとの戦況分析を中心に、本戦争がもたらした日本人の戦争観や安全保障観の変化、終わらない戦争の終わらせ方などを語る。

感想・レビュー・書評

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  • 小泉悠氏が一児の父として子どもに「戦争はダメ」以外に伝えたいことは? - コクリコ|講談社(2022.09.23)
    https://cocreco.kodansha.co.jp/cocreco/general/health/XdyFk

    ウクライナを見捨てれば、日本も同じ運命になりうる。軍事研究者の小泉悠さんは警告する【ウクライナ戦争】 | ハフポスト WORLD(2023年01月01日)
    https://www.huffingtonpost.jp/entry/war-in-ukraine_jp_63abb122e4b0cbfd55de3e0d

    文春新書『終わらない戦争 ウクライナから見える世界の未来』小泉悠 | 新書 - 文藝春秋BOOKS
    https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784166614196

  • 2022年9月から2023年7月まで6回にわたり3人の識者と語ったものを加筆修正。

    ある時点における限られた(そして多くの場合は信憑性の不確かな)情報を専門家たちはどのように捌いているのか、という思考プロセスを記録しておくことにこの対談本の意義があると考えた。

    自身は軍服の色褪せ具合に目が行ってしまう所もありもっぱらロシアの軍事研究を生業にしているかなり珍しい立場にあるが、自身としてはなにかできることをするほかない。それは多分、社会に欠けがちな軍事的知見をフル回転させてこの戦争について語り合うことであろう。

    1.ウクライナ戦争を終わらせることはできるのか。
     千々和泰明氏と「文藝春秋ウェビナー」2022.9.9月号
     ~千々和氏は「戦争はいかに終結したか」の著書がある。この戦争の終わらせ方としては、ロシアがゼレンスキーを打倒してしまう、又はロシアの”妥協的平和”としてウクライナから撤退する、の二つがあるがどちらも現実的に考えにくいので、その中間のどこかになる。交渉では答えが出ず、やはりウクライナが力でロシアを押し返すしかないのではないか。

    2.プーチンと習近平の急所はどこにあるのか?
     熊倉潤氏と「中央公論」2023.3月号
     熊倉:プーチンはロシア社会の中から出て来た存在だから、プーチンがいなくなっても今のロシアは変わらないと思う。中国では賢人統治を望む意識が強い。まだ二十世紀の延長戦を戦っている人たちがいる。十代の時に文化大革命の洗礼を受けて人格形成がなされた習近平のような人たちがフィジカル面で限界を迎えるころに、驚くほど時代の動きか加速するのかもしれない。

    以下高橋杉雄氏と
    3.ウクライナ戦争「超精密解説」
     「文藝春秋」2023.5月号
    4.逆襲のウクライナ
     「文藝春秋」2023.7月号
    5.戦線は動くのか 反転攻勢のウクライナ、バイタリティ低下のプーチン
     「文藝春秋」2023.8月号
    6.戦争の四年目が見えてきた
     「文藝春秋ウェビナー」2023.7.25
     高橋:停戦は、ロシアがウクライナの占領を諦めて引き上げるか、ウクライナが占領されている土地を諦めてロシアに引き渡す、この2パターンしかない。・・現実的な停戦シナリオが描けない。
     小泉:どんな戦争も絶対に、地域的な知識がないと分からないこと、軍事的な知識がないと分からないことがあるので、様々な分野の研究者が皆で話し合いながら、全体像を描いていくべきだと思っている。


    2023.9.20第1刷 図書館

  • 雑誌等に掲載される対談の体裁になっている文章を集めた一冊で読み易い。脇で対談をゆっくり聴くような感じでドンドン読み進め、素早く読了に至った。
    2022年秋頃から2023年夏頃に行われ、各種の媒体に発表された6本の対談が取上げられている。著者は6本の全てで、発言者、聞き手として登場している。対談の相手は軍事関係の研究者、或いは主に中国、加えてロシアを研究しているという3人である。何れも、それほど多く居るのでもない専門家であると見受けられる。そういう皆さんの論を、少し纏まった、更に一般向けに判り易く纏まった形で読む事が叶うのは、非常に善いことだと思う。
    著者はウクライナの戦争を巡って様々な発言を繰り返していて、それらは各種媒体でも取上げられている。本書のような対談を纏めた本ということでは、既に開戦から半年程度の期間のモノを纏めたモノを発表している。それの後を受けて対談を纏める企画が持ち上がった時、前に出した「200日」を受けて「500日」という題を想定したそうだ。が、戦争の“500日目”が瞬く間に過ぎ、戦争が収束する気配も無いことから『終わらない戦争』という題が登場したそうだ。
    6本の対談、その前後の著者による文章と何れも興味深い。が、殊更に記憶に残るのは「戦争を“終える”ということ」に関して、過去の戦争の経過の研究を踏まえたという論だった。
    何らかの思惑が在り、それを実現する見通しが在って、戦争という手段が択ばれて開戦に至る。それは意外に簡単に出来てしまうのかもしれないが、収束を図るのは何時でも困難なのだ。開戦時に明る過ぎる見通しを持ってしまっている、または都合が悪くない想定のみで、簡単にその想定が外れてしまうというのが往々にして在る。
    そういうことではあるが、戦争を継続することで生じる「現在の犠牲」というモノが在り、対して戦争を完遂することで排しておきたい「将来の危険」というモノも在って、両者のバランスという中で戦争の収束が図られるというものなのだそうだ。そして収束に向けた協議は、往々にして少し長い時間も要してしまう。
    「現在の犠牲」が堪え難いということになれば、妥協的な停戦の途が探られる可能性は高まる。が、現状では両陣営が互いに「将来の危険」を排するという側に力が入っていると見受けられる。「終わらない戦争?」という情況である。
    ウクライナの戦争を巡っても、ウクライナ、ロシアの両陣営は各々に「将来の危険」を排しようと「現在の犠牲」を払い続けている。「一体、何処迄?」というようになって行くのだと思われるが、互いに排しようとしている「将来の危険」は「非常に高いハードル」になってしまっていて、収束に向けた協議が巧く進められない状態に陥って時日を経てしまっている訳だ。
    ウクライナで激しい戦禍が続くと、戦争を通じて排する「将来の危険」ということの以前に、国民や社会や国土の「“将来”そのもの」がオカしくなる、または破壊されてしまうのではないかと危惧も抱いてしまう。
    そして気になるのは「4年目?」という話題だ。ロシアで2024年に大統領選挙が予定されている。その選挙を乗り越え、ウクライナでの戦争を更に続けるとなれば、「2025年に“次”のラウンド」ということも在り得る。そうなってしまうと、2022年以来の戦争は「4年目」に突入である。
    更に本書では、開戦以来の戦況に関する話題も色々と豊富である。両陣営が、戦闘継続能力を大きく削ぎ落すような「決定打」に欠けているのかもしれない。そういう様子に、何処かの人達の妙な思惑のようなモノでも絡まっているのか?何やら解り悪い中で戦闘は毎日続いている。
    本書も含め、このウクライナの戦争を巡っては、判り易く纏められたモノも多く世に問われているので、それらに触れて考える材料は収集し続けなければならないと思う。
    戦争は天災ではない。人間が始め、人間が続けるモノだ。とすれば、停めるのも人間がやらなければならない筈だ。少しなりとも早く“過去形”になることを願って止まない戦争である。今、或る程度広く読まれなければならないかもしれないと見受けられる一冊であろう。

  • ロシア・ウクライナ戦争がはじまった年に行われた対談も含まれているので、今更読む必要があるかなと思いつつ読みはじめたけれど、普通に参考になる本だった。

    日本の安全保障と朝鮮半島、台湾の安全保障の間には密接な関係がある。

    あっさり読み終えることができる割には読みごたえもあって良い。
    ロシア・ウクライナ戦争がはじまる前までは、もうこんな戦争は起きっこないと根拠もなく信じ込んでいたタイプなので、戦場のニュースを見ても、戦争をしていることしかわからない。
    こういう軍事的知見に立った読みやすい本が出てくれるのは助かる。こういう本が必要な世界であることは悲しいけど…。

  • 対談本なのでさっと読めました。
    前半は今回の戦争をやや俯瞰的に、後半は時系列で追っていくような構成です。
    おわりにで書かれているように様々な見地から戦争を考えないといけないと改めて思いましたし、終わらせるのは本当に難しいと再認識しました。

  • 【配架場所、貸出状況はこちらから確認できます】
    https://libipu.iwate-pu.ac.jp/opac/volume/569208

  • 「ウクライナ戦争の200日」に続く対談集。

    6本掲載されるが後半4本は高橋杉雄氏とのもので、対談者は3人。

    米国の武器支援出し渋りもあり戦局は膠着、両国国内の事情から早期停戦は困難との見立て。

    本書は何よりマスコミ露出停止前の高橋氏と著者との対談が目玉であろう。

  • ロシアのウクライナ侵攻の経過を著者と軍事専門家の対談という形でまとめられている。終わりの見えぶ、全然も膠着している現状にどう落とし所をつけるのかというのは難問であり、長期化の様相を表している。

  •  小泉と研究者との対談集。この戦争が簡単には終わらないとの点では全員一致。
     千々石と小泉は、力で露軍を押し返すことが前提であり、戦場の状況を合意内容に反映、停戦協議も戦争の一部等と述べ、戦争と停戦協議・合意を一体とした考え方を示す。熊倉と小泉の対談では、指導者像や統治機構の流動性における中露の違いの指摘が面白い。高橋と小泉の対談ではその時々の戦況が主だが、その上で高橋は、現実的な停戦シナリオも戦争後のシナリオも描けないと述べている。

  • ウクライナ戦争の終わらせ方、習近平とプーチンとの比較、戦況解説。

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著者プロフィール

小泉 悠(こいずみ・ゆう):1982年千葉県生まれ。早稲田大学社会科学部、同大学院政治学研究科修了。政治学修士。民間企業勤務、外務省専門分析員、ロシア科学アカデミー世界経済国際関係研究所(IMEMO RAN)客員研究員、公益財団法人未来工学研究所客員研究員を経て、現在は東京大学先端科学技術研究センター(グローバルセキュリティ・宗教分野)専任講師。専門はロシアの軍事・安全保障。著書に『「帝国」ロシアの地政学──「勢力圏」で読むユーラシア戦略』(東京堂出版、2019年、サントリー学芸賞受賞)、『現代ロシアの軍事戦略』(ちくま新書、2021年)、『ロシア点描』(PHP研究所、2022年)、『ウクライナ戦争の200日』(文春新書、2022年)等。

「2022年 『ウクライナ戦争』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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