聖女の救済 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167110147

感想・レビュー・書評

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  • 東野圭吾ガリレオシリーズ5作目(2008年10月単行本、2012年4月文庫本)。天才物理学者、湯川学と友人の刑事、草薙俊平とその後輩女性刑事の内海薫の三人を主人公とした科学ミステリー小説。今作は「容疑者Xの献身」に続くシリーズ2作目の長編小説。
    会社社長の真柴義孝とパッチワークの教室を経営する真柴綾音の夫婦は結婚して1年、子供が出来ない理由で離婚することになっていた。夫婦は義孝の大学時代からの友人で義孝の会社の顧問弁護士を務める猪飼達彦と妻の猪飼由希子の夫婦、綾音の弟子で教室の指導員の若山宏美の3人を自宅に招いてパーティを開いた。そしてその日に義孝から綾音に離婚の告示があり、その翌日から綾音は札幌の実家に帰っていた。
    そしてその二日後に義孝は亜ヒ素酸により毒殺された。
    宏美は義孝と不倫関係にあり妊娠していた。草薙は宏美を疑うが犯人ではあり得なかった。そして義孝が結婚する前の恋人津久井潤子にたどり着くが2年前に自殺していた。
    薫は綾音を疑うが完璧なアリバイがあった。何よりも毒殺の方法が特定されていなかった。
    津久井潤子の自殺の理由、潤子と綾音の関係、綾音と義孝の結婚までの経緯、殺人の動機が過去に遡って徐々に見えてくる。どうしても解らないのが毒殺の方法だ。理論的にはあり得ても現実にはあり得ない虚数解、これを湯川が見事に解明する。
    毒殺の方法もその経緯もあまりにも難解で奇抜すぎて湯川以外には思いつかないし実行も出来ないだろうと思う。ましてやこの犯人には絶対無理だと思ってしまう。だからこその痕跡を残してしまい逮捕されることになってしまうのだが…
    読み終わってタイトルの「聖女の救済」の救済の意味が初めてわかった。結婚したことが救済だったんだ。そして離婚を告示された時が救済期間の終焉だったんだと。
    「容疑者Xの献身」とはまた違った味のある東野圭吾ワールドを堪能できた。大満足。

  • ガリレオシリーズです。

    最初から犯人は分かっていますが、どのようなトリックを使って、殺人を犯したのかが描かれています。

    草薙と内海のやり取りも面白かったです。
    ずっとプランターに水やりをやっていたので、何か怪しいなぁと思っていましたが、そういう意味だったのかと納得し、スッキリしました!

    オススメの作品です!!

  •  出版後、すぐにハードカバーで読みましたが、先日のドラマされたものを観て、「あれ、こんな話だったかな?」と思い、再読。
     
     原作はもちろんとてもよい作品なのですが、ドラマ版もよく2時間にうまく収めたなと関心しています。時間の都合上、登場人物や犯行動機、トリックも大きく変更されているところがあり、それは別の作品としてみればおもしろいと思いますが、やはり原作の奥深さは超えられません。ドラマ版しか観ていない人は是非、原作も読んで欲しいと思います。

     この作品を初めて読んだ時、思い出したドラマがあります。『古畑任三郎』シリーズの『ニューヨークの記憶』という、鈴木保奈美さんがゲスト出演されている回です。夫を殺したものの裁判で無罪判決となり、完全犯罪を成し遂げた女性が、そのことを「ある友達の話」として、偶然長距離バスで隣り合った古畑任三郎に話して聞かせるというもの。(うろ覚えなので間違っていたらすみません、)
     
     綾音も、ほんのあと少しで完全犯罪を成し遂げられたのに……という思いで二度目を読み進めました。完全犯罪を遂行するためには、炎のような執着心と氷のような冷静さ、気の遠くなるような精神力、忍耐力、綿密な計画性が必要不可欠で、それは女性にしか無理なのではないか……と、この2つの作品を通して思いました。

     この作品の評価は分かれると思います。こんなトリックはどう考えても無理だと思って白けてしまう人。「理論的にありえても、現実的には考えられない」方法に夢をみる人。私は後者でした。1年間も夫を浄水器、いやキッチンにすら近づけさせず、夫を守る聖女のように、真柴の言葉を借りれば「リビングの高価な置物」としてパッチーワークをしながら佇んでいる綾音の姿を想像すると、胸が震えます。

     
    以下、自分メモ↓
    ・草薙が如雨露代わりの空き缶を取っておいたのは、ただの刑事の勘だけではなくて、彼も綾音を実は疑っていたということを表しているのではないか。大学時代の捨て猫を介抱している場面で「(介抱しようがしまいが、どちらにせよ猫は死んでしまうが)それがどうした。」という発言をしている。綾音が犯人かもしれない、でも「それがどうした」、ただがむしゃらに他の犯人の可能性を否定しないで捜査し続けたのかと。
    ・内海は今回、いつもにもまして鋭い推理をしていたと思います。シャンパングラスや化粧直しの痕跡など、女性らしい細やかな視点での推理がおもしろいです。
    ・ドラマ版の良い点。天海祐希の演技。しっとりと抑えた演技が素晴らしかったです。真柴との仲睦まじい回想シーンもその後に続く展開を知っているだけに、より優しく残酷に映し出されていました。庭とベランダにある花をパンジーではなく、薔薇にしたのも華やかになりよかったと思います。映像化ならではですね。湯川と綾音が一緒に博物館にいって恐竜のCTスキャンの話をしたのは良かったと思います。
    ・ドラマ版の悪い点。2時間に収めるためには仕様がなかったのかもしれませんが、登場人物を大きく削ったために、犯行動機の重さを表現できていなかったのではないでしょうか。また、湯川と綾音が同級生だったという設定もなくてもよかったのでは。『容疑者Xの献身』での湯川の悲壮が報われないと思ったのは私だけではないはずです。

  • やっぱり東野圭吾作品のガリレオトリックはすごい衝撃的。

    今回は草薙の心理的描写が面白くもあったのに、後半が軽く終わってしまったかも。
    そこが残念なトコロですが、
    完全犯罪あっぱれです!

    次のガリレオに会えるのはいつになるのかな??
    早く会いたいです!

  • 久々!何年ぶり!のガリレオシリーズ。
    途中で読むのやめてたんですが、再開。
    前作の感想を読んでみると、どうも自分の中で飽きちゃってやめたらしい(失礼)
    久々なせいか割と面白がって読みました。

    ただ久々なせいで…
    あれ?内海さんいなかったよね??ドラマからの逆輸入だっけ??
    湯川と草薙が微妙な雰囲気って何があったの???
    と、一人完全に置いてきぼり状態。笑
    ちゃんと再読すればよかったですよね。

    さて、肝心の本編です。
    読みやすい!東野圭吾読みやすい〜!ミステリーなのに読みやすい〜!(褒め言葉)
    ああやって見ると最近のミステリーはひねってひねってになってるので面白いのですが疲れるんだよね。。。
    こちらは読みやすい!(ぶん、単調な気もする)

    最初は痴情のもつれかな~、なんて思ってましたがちょっとだけ深掘りされた動機でした。

    とある地名に飛び上がったのはナイショ。
    なんで知ってたんだろう。。。



    @手持ち本

  • タイトルに聖女と入っているだけあって、作者が感じている女の人特有の冷たさ、聡明さ、ずる賢さがひしひしと伝わってきて、読んでいてドキドキしました。

  • 面白かった。まさかのトリックだったので衝撃が残る。間違いなく名作。

  • 最後の畳み掛けというか、
    話が繋がっていく感じハラハラしつつ、とても心地よかった
    次も楽しみです

  • ガリレオシリーズ6冊目
    入手した順番の関係上、真夏の方程式と順序逆転

    湯川先生が「虚数解」と表現した程の難解な真相を解き明かしていく作品だった。
    トリックが明かされていく後半部分は、このストーリーとトリックを組み合わせた著者に感服しながら一気に読んでしまった。
    本書のタイトルに含まれる「救済」の意味もわかり、スッキリした。

    ただ、恋愛感情の影響で冷静さを失った草薙刑事の言動は、彼のこれまでのイメージに合わなかったので、個人的には受け入れ難い演出だった。

  • いやー、女ってこわい。

    中盤少し中だるみを感じ
    星4か迷ったが

    綾音の執念とタイトルに
    星5にしました。


    同じことができるだろうか。
    いやどう考えても無理だ、
    そんな驚きです。


    草薙の思いがなければ
    完全犯罪になったのに
    その運命の悪戯も
    面白かったです

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著者プロフィール

1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業後、生産技術エンジニアとして会社勤めの傍ら、ミステリーを執筆。1985年『放課後』(講談社文庫)で第31回江戸川乱歩賞を受賞、専業作家に。1999年『秘密』(文春文庫)で第52回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者χの献身』(文春文庫)で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、2012年『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(角川書店)で第7回中央公論文芸賞、2013年『夢幻花』(PHP研究所)で第26回柴田錬三郎賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞を受賞。

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