非正規レジスタンス 池袋ウエストゲートパークVIII (文春文庫 い 47-14)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167174170

感想・レビュー・書評

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  • 派遣労働が社会問題になったのは、大学生くらいの頃だったかな。
    派遣の品格とかドラマも流行ったし。

    今の自分の働き方と幸運を考えてみる。

  • IWGPシリーズ第8弾。
    このシリーズは、書かれたその時代の社会現象であるとか、経済や世相の情勢などから題材が取られる傾向にある。それも、若者目線であるところが魅力だ。
    この第8弾が書かれた頃の題材としては、シングルマザーの悲哀、ケータイ全盛期のリベンジポルノ、非正規社員と悪徳人材派遣会社との闘いなど。
    不器用で、ちょっと生き方が下手な若者たちの、それでも必死にひたむきに闘う姿は、いつの時代でも心に響くものがある。

  • マコトの母ちゃんはやっぱりかっこいい!

    千川フォールアウト・マザー
    マコトのおかんの話。シングルマザーが立ち直るためにおかんが一肌脱ぐ話。真島家の生い立ちが語られて、それと重ね合わせるように物語が進行する。カッコいい!
    池袋クリンナップス
    珍しくキングからマコトへの仕事の依頼が舞い込む。ボランティア団体のリーダーが誘拐にあう。当然の成り行きとして身代金の要求となるが、警察には届けずに解決しようとするのは解せない。
    定年ブルドッグ
    またしてもタカシからの依頼。元カレに脅される女性の話。
    ここに出てくる元刑事のかっこいい活躍と女性に相対するときの優しさのギャップがいい。
    非正規レジスタンス
    非正規の人たちの悲哀を描くのかと思えばそうではなく、非正規の人たちの組合活動を通して支援する女性の話。最後の最後でどんでん返しがあったが、組合代表の女性は最後まで正義を貫き、よかった。
    今回の話は最初の話を除いてどれも敵対する構図の中で、相手のお偉いさんと繋がっている点が、なんか違和感を感じるが、マコトとタカシの活躍に他ならないので、よしとするか。

  • 再読。 2018.12.15.

  • [千川フォールアウト・マザー] 
     シングルマザーで、寝る時間もなく働く。遊びに行くことなんて出来ない生活では体力も精神も荒んで行く。ユイも3歳の子供を育てながら、一生懸命やっていたが無理が出てきてしまうのは分かる。
     マコト母が、マコトをどういう風に育てたのかが分かる。今の状態で無理だと思ったのなら、子供と共倒れになる前に、公的な援助をもらって生活を安定させるのは良い選択だ。子供に手をあげたりすると、子供も自分も傷つけることになる。
    [池袋クリンナップス]
     カズフミはゴミ拾いをしていた。それだけなのに人が集まって組織になった。優秀な彼は全て計算していたのだろう。全ては、格差社会で千切れてしまった人を繋ぐための行動だ。
     優秀な人は、みんなのために働く。力とは自己で消耗させては勿体ないのかもしれない。
    [定年ブルドック]
     彼氏からSM写真をばら撒かれたくなかったら、200万円もってこいと脅された。
     マコトは、柔道が得意な60代の元警官(大垣)と共に、事件を追う。襲われても大垣が投げ飛ばしてくれる。
     久し振りに単純馬鹿な相手だ。全体的にコメディ感がある。
    [非正規レジスタンス]
     前話の緩さを忘れさせるようにヘビーな話題。
     ネットカフェ難民という言葉は一時期話題になった。今はどうなっているのかな。あまり行った事はないが、最近のネカフェは快適にはなっているはずだ。だからと言って、そこで暮らすのは大変だろう。
     派遣についてもあまり詳しくは無いので実情は分からない。マージンを高く取られるだとか、基本的に弱者が損を受けるのは世界共通だ。どうすれば良くなるのか。東京じゃなければいけないのか。東京は家賃も高いので、地方の方が住みやすいんじゃないかな。地方には若者がいないのだから、何かありそうなものだけど、どうなんだろう。
     サトシは派遣社員として働いて、毎日ネカフェに泊まって、コーヒーを飲むのも贅沢なほど金が無い。バイトで荷物を運んで腰を痛めてしまい、コルセットが無いと生活出来ない。このような状況になったら、抜け出せなくずにホームレスになるしか無いのか。それでもサトシは精神を高く保っていて、何があっても挫けずに人のせいにしたりはしない。
     私は精神性が高かったら、貧乏でも良いと思っている。マコトのように本やCDを買うくらいの贅沢で良い。世の中には金も未来もなく、精神は削られて行って、何も見えなくなって行く若者がたくさんいる。それは決して、楽をしているから、怠けているから、そうなったわけでは無いことを分かって欲しい。
     
     今回は親子と富裕と貧困についてだった。金と親子を繋げて、両極端に置く。そうすることで問題が分かりやすくなっていた。

  • 涙ではなく怒りで読んで欲しいという最初のくだりにグッときました。
    戦後高度成長期の中で私たちが何を切り捨ててきたのか、考えるきっかけになりました。このシリーズ少し読み続けてみたいと思います。

  • まあまあ

  • 派遣会社からの日雇い仕事で食いつなぐフリーターのサトシ。
    悪徳人材派遣会社に立ち向かう決意をした彼らユニオンメンバーが次々襲撃される。
    「今のぼくの生活は、ぼくの責任」と言い切る彼をマコトもGボーイズも放っておけず、格差社会に巣食う悪と闘うことに。
    表題作他3編収録。
    大好評IWGPシリーズ第8弾。

  • 2016 5 12 13冊

  • 社会の弱者の話で、今から約十年ほど前に書かれた話なのに、当時より今の方が切迫した状況にあるのかもしれないと思いました。

     『千川フォールアウト・マザー』はシングルで子どもを育てている若い母親がコンサートに行っている間に、運悪く、一人で留守番していた3歳の子供が3階のバルコニーから転落してしまう話。
    一人で仕事と子育てを頑張ってきた若い母親ユイが、友達から大好きなアーティストのコンサートに誘われ、行きたいと言う。その間、3歳の子どものことをマコトに見てもらいたいと頼みに来たのだが、マコトもその日は取材があって駄目だった。
    どうしても行きたかったユイは子どもの食事を用意し、お昼寝をしている間に出かけてしまったのだが…。

     そのことが新聞にのり、ユイは世間から非難されてしまいます。二年間休まず仕事と子育てを頑張ってきたのに、たった一日の息抜きさえ贅沢と言われる、胸が痛みます。
     弱った彼女の心につけこむ悪い男。それを撃退したのがマコトの母親です。ユイが身も心も崖っぷちなのをみて、「だったら子どもを捨てな」と言う。捨てると言っても一時期涙を呑んで子どもを施設に預け、生活を立て直してから引き取りなさい、ということらしい。
     マコトの母親も一時期そうしたことがあったようです。それでも、ちゃんと人の役に立つ男に育っているマコトを頼もしく思い、自分の子育てに安堵していることでしょう。なんだかんだと言いたいことを言い合える親子っていいですよね。
     ユイが一日も早く子どもを引き取り、幸せに暮らせるようになってくれればよいなぁと思います。

     表題作『非正規レジスタンス』も弱者、派遣労働者の話でした。
    足を伸ばして寝ることが出来ず、大切な持ち物はコインロッカーに預けて、日々の派遣労働で何とか生活している、地方から出てきた若者。保険証がないので病気になっても病院に行けない。職場で怪我をしても派遣先が労災を使ってくれない。
     そんな労働条件を何とか改善しようというフリーターズユニオンがあるのだが、それに加入している者が次々と襲われてしまう。マコトが知り合ったサトシも襲われて怪我をしてしまった。
     サトシのためにも大手派遣会社と闘う決意をしたマコト…。

     地方から出てきた者が安定した生活をするためには、やはり安定した収入(職)がないと厳しいと思います。
    ですが、なかなか正社員での採用が難しい今の状況では、普通の生活すらも夢なのかもしれません。

    なんだか切なくなる話でした。

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著者プロフィール

1960年東京生まれ。成蹊大学卒業。代理店勤務、フリーのコピーライターなどを経て97年「池袋ウエストゲートパーク」でオール讀物推理小説新人賞を受賞しデビュー。2003年『4TEEN フォーティーン』で直木賞、06年『眠れぬ真珠』で島清恋愛文学賞、13年 『北斗 ある殺人者の回心』で中央公論文芸賞を受賞。他著書多数。

「2022年 『心心 東京の星、上海の月』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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