- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167277215
感想・レビュー・書評
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タイトルに惹かれて購入。小説家、放送作家の向田邦子さんの子供の頃の日常が淡々と書かれている。時代は違うものの共感できる部分が多く、ほっこりする。トイレを「ご不浄」と言ったり、迷信や古い慣習をばからしいと思いながら守ったり、父親が特権的に威張り散らしていたり、おばあさんが毎日お経をあげたりと、自分には経験あることも無いこともなぜか懐かしく感じる。どのストーリーもとてもビジュアル的に感じられるのは、テレビドラマを描くことが多かったからかな。
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向田さんのエッセイ。
先日、とある番組で有川浩さんが「私のバイブル」とおっしゃってたので読んでみました。
ほんと、昭和っていう時代がよくわかる。楽しいエピソードや辛いエピソード、どれも昭和を感じる物ばかり。一度は読んでみるのはいいのかも。 -
語彙力に富み、日常をこんなにおもしろくユーモアいっぱいに書ける人がいるなんて感動した記憶がある。時代は昔、まだ男性社会で男尊女卑が当たり前。父親が一番。そんな時代だから、現代との違いを知るのもおもしろい。
でもこの人のものの見方、角度、それを文章にする力は私は尊敬している。何度読んでも色あせない。何度読んでもクスッと笑える。エッセイのおもしろさはこの本から私の場合は始まったのだと思う。以後、彼女の本を買い集めたけれど、飛行機事故で亡くなったことが悔やまれてならない。 -
味わいがある。
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なんてキレイな文章なんだろう。
身近に起こるなんでもないような事が、向田邦子の手にかかればこんなに素敵で面白い。
大好きな1冊になった(^^) -
30年以上前に描かれた、昭和(しかも戦前が主)の思い出だというのに
どうしてこんなに色褪せないのだろう。
自分が通り抜けていない時代の話でも
細かく、そして生き生きとした描写で
同じ時代を過ごしたような気分にしてくれる。
出てくる人たちに、きちんと血が通っている。
これがエッセイで、実在の人物を元にしているからというだけではなく
鋭い観察眼と、それを表現する言葉を持ち合わせているからこそできることなのだろう。
背伸びせず、誰にでもわかる言葉で、
色んな気持ちを与えてくれる。
素晴らしい作品だと思った。
人生はクローズアップで見れば悲劇、ロングショットで見れば喜劇
チャップリンのこの言葉が、ものすごく似合う文章を描くひとだなと感じもした。
泣きながら笑う人を暖かく描けるのは、素敵だ。 -
部分的にはいろんな場所で、いろんな機会に読んできたが、きちんと読んだのは今回が初めて。
生活の細部を、よくこうもみずみずしく描けるものだなあ、と感心してしまう。
自分なら…文章力は棚に上げても、ここまで子どものころのことを覚えているだろうか。
後書きを読んで、さらに印象が変わった。
第一随筆集にあたるこの本は、著者の病気療養が終わってすぐに書き始められたとか。
死を意識して書いていたのか。
生活を、思い出の細部を慈しむような筆致になるのは、そういうことだったのかもしれない、と思った。 -
まもなく娘の父になるタイミングで、長年気になっていた名エッセイを手に取りました。
タイトルにひきつけて感想をいうなら、父上の小人物っぷりが怒りでもなくからかいでもなく哀れみでもなく、「あるかたちの愛」としかいいようのない暖かさで描かれていて、それが心にしみました。
テレビドラマの脚本家だからなのか、とても映像的。それでいて文章でしかできないような読み手の想像力に委ねられた余白があり、例え好きな作家であってもエッセイは苦手な私がするする読めました。
以前、あるテレビドラマの人気脚本家の書いた小説を読んで「テレビはテレビ」と思ったことがありますが(だって、「牧子はその時悲しいと思った」レベルの、あらすじかト書きかといぶかしくなる奥行きのなさでしたから)、その時の印象を見事に覆してくれました。 -
まさに文章の名人。なぜ今まで読まなかったかと思うほど感動。目に浮かぶようなテレビドラマの脚本みたく丁寧な描写と、年齢に裏打ちされた深みのある人生のノスタルジーの数々。一見雑多なエピソードも、ある方向から光を当てると綺麗にまとまる。またそれらの掌編は楽しげでもあるが、常に死の影が潜んでいる。飛行機事故で命を亡くした彼女のことを想うと、過去を丁寧に綴ったこの第一エッセイはなんだか遺書のようだ。この本のように、自分の人生の色々な巡り合わせと経験は、物語として語れるように一つ一つ大事にしていこうと思った。