- Amazon.co.jp ・本 (369ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167323073
感想・レビュー・書評
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学生時代の仲間とあの時の部屋でやりたいなあ、麻雀。丸二日くらい、ヘロヘロになりながら。
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あくまでも番外編。3までのような緊張感はない。坊やも足洗ってるし。でも、いくところのなくなった博打打ち、というのが描かれていてまたおもしろい。ギリギリの勝負は、全てを失うリスクがあってこそ。僕らにはできない。だからこそ読んでいておもしろいし、没頭してしまう。そういう作品だった。
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最終巻「番外編」は、その名の通り、哲ではなく、九州出身の在日中国人李さんを中心に進みます。
町の雀荘に巣くって何とか食べている李さんは、天涯孤独、文字通り体を張って打っている、過去の遺物のようなおっさん。
たまたま出張中(!)の哲と知り合って、バクチ心に火がつき、哲たちと打たんがため、がむしゃらに上京します。
しかし、彼らの命がけの勝負の周囲では、警察の取り締まりや、組織による雀荘の乗っ取り工作がすすんで、ゲームそのものが成立しにくくなっていく。
終戦後の混沌を背景とした「放浪記」の世界自体が、いよいよ終焉に向かいます。
四巻を通読してあらためて、通俗小説の枠におさまりきらないこの小説の魅力にため息が出ます。
麻雀をめぐるウンチクやドタバタを軽快に追う一方で、作者の視野は、広く、周辺の社会や人としてのあり方などにまで及んでいる。
まともな人間がほとんど出てこないピカレスク小説が、「時の話題作」にとどまらず、今読んでも得るもののある、普遍的な魅力をもつのは、作者の知的な分析力に負うところが大きいのだろうと思います。
いや、「投機」(投資ではありませんよ)と名を変えたバクチが、世間に大手を振って歩く現在、今こそこの小説が本来の意義を発揮するときなのかも。
ことの本質を理解するために、非常によく書けている参考書です。