日本国の研究 (文春文庫 い 17-8)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167431082

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  • 補助金を受けて、赤字を何とも思わない公団の裏には、実質的な天下り組織である特殊法人が莫大な利益を上げている。

    赤字公団の尻拭いは、税金あるいは財政投融資で国民に背負わせて、美味しいところだけ、天下りした役人たちが持って行く。
    そんな日本の構造をあばいた、猪瀬さんの力作。

    そんな日本を東京と大阪から変えてほしい。

  • 今の公益法人改革に繋がる本。形を変えて温存されている。

  • 日の当たらないところで、
    いかに国民が食い物にされていたのかを
    晒し出している本。

    第一章 記号の帝王
    第二章 闇の帝王
    第三章 寄生の帝王

  • 国会議員がすくう永田町、官僚がすくう霞ヶ関、日本国には、永田町と霞ヶ関の他にもう一つ、病理を生み出す町があるという。それが、虎ノ門である。虎ノ門を歩けば、何個もの〇〇法人にぶちあたるという。当書『日本国の研究』は、政治家=永田町、官僚=霞ヶ関の影に隠れて肥大し続けていた借金と利権の温床、行政法人、特殊法人=虎ノ門を告発するノンフィクションである。

    右でも左でもない、著者独特の立ち位置から、粘り強く、論理的に、法人の利権の仕組みに迫る。道路公団は、この本が売れたことによって、民営化されたようなものとのこと。著者猪瀬直樹は、小泉元首相と一緒に官僚機構の行政改革、民営化を行った。現在は東京都副知事をやっており、東京メトロの一元化、東京水道の海外進出プロジェクトなどを推進している。

    行政改革、民営化、市場競争原理の導入によって、日本に格差社会が進展したと言われるが、肥大化した官僚組織と日本国の借金は残り続けている。

  • 猪瀬氏の官僚機構に対する切込みは、流石だ。
    「ペルソナ-三島由紀夫伝」は、三代続いた官僚の血筋から三島に迫るという手法だった。「日本国の研究」は、官僚機構とともに様々な利権を、数字や人脈から洗い出し、批判の対象とする。
    非常にわかりやすい。この国の何が問題なのかをうまく説明してくれる。
    これが書かれた1997年から、さらに時間が経過しているが、いまだに未解決の問題は多々ある。

  • 昔の猪瀬さんの本にくらべると、あまり面白みを感じなかった。題材がイマイチなんだろうか。

  • 恥ずかしながら、今頃になって初めて読んだ。現在では、天下りや財投、特別会計など、官僚とそのOBを中心とした日本国の行政の闇については、かなり指摘されている。それでもこの本に書かれた利権の構造、「もう一つの国」がいかにして運営されているか、という構造の本質は変わっていないと思うし、明らかになればなるほど、官僚はさらにその先を行こうとして、闇のからくりはますます複雑になっているはずなので、この本の価値が薄れているとは思わない。
    ただ、この本に書かれていることは、いわばアウトラインに過ぎない。もうちょっと深く掘り下げてほしい、というのはねだり過ぎかもしれないし、初出が雑誌なので仕方がないかもしれないが、そのあたりを物足りないと思う人もいるだろう。でもきっと、ここからあの道路公団の話につながっていくのだと思うので、この本で完結ということではなく、またがって理解すべきなんだろう。

    読みながら、こんなに憂うつな気分が続いたのは久しぶりだった。国民に何ができるか具体的にはわからないが、怒りの心を持つこと、監視する意識を持つことは、税金を払っている国民の姿勢としてまずは大切だと思う。

  • かなり前の本だけど,いわゆる特殊法人が如何に変なお金の使い方をしてるかをルポしたもの.

  • 080411(s 080425)

  •  「エレベーターの検査機関には日本建築設備安全センターと日本昇降機安全センターが
    あり、九五年に両者が合併、当局は公益法人を統合したと自慢している。だが名称が日
    本建築設備・昇降機センターになっただけ、全国に一万五千人いる検査要員に実務講習
    を受けさせ登録したりしている。
     流行している携帯電話で荒稼ぎしているのが無線設備検査検定協会(郵政省)である。
    新機種について電波法にもとづく技術基準適合証明が必要だとして機種を持ち込む試験
    申請の場合、たとえば二千台について検査すると決め、実際には抜き取り調査なのに携
    帯電話一台当たり三千四百円の検査手数料になり、六百八十万円かかる。九六年五月に
    三〇パーセント値下げしたが、普及台数が爆発的に伸びている。ポロ儲けである。
     厚生年金会館という建物はよく知られている。東京なら新宿にある。北海道から九州
    まで各都市に二十一の会館が建っているや厚生年金スポーツセンターは全国で五カ所あ
    る。十六方所の厚生年金休暇センターは宿泊施設だけでなくテニスコートや体育館など
    が完備している。さらに健康福祉センターが二十二カ所。いずれもサンピアなんとかと
    命名されている。休暇センターと健康福祉センターは、写真で見たところそっくりで、
    どこがどう違うのかわからない。これらはいずれも財団法人厚生年金事業振興団が経営
    している。
     この財団法人は厚生省の外局、社会保険庁の管轄である。ややこ.しい話だが、つぎに
    問題にするのはグリーンピアと呼ばれる施設(大規模年金保養基地)を建設した特殊法
    人である。パンフレットにこう書かれている。
    「緑豊かな自然と人とのふれあいの場としての意味を込め、グリーン(緑)+ユートピ
    ア(理想郷)との合成語で名付けられたグリーンピア。日本各地に十三カ所、恵まれた
    自然環境のなかにそれぞれ百万坪以上のゆったりとした敷地をもっています」
     サンピアだのグリーンピアだのとカタカナ遣いが新しいと勘違いしているオジさん的
    な浅知恵もいい加減にしてくれ、と言いたくなる。
     グリーンピアは、土地の取得と建築費で合計一千九百億円もかかった。特殊法人年金
    福祉事業団がつくり、財団法人年金保養協会が四カ所を運営、残り九カ所は設置県に委
    託され、さらに県所管の公益法人に再委託されている。
     年金福祉事業団とはなにか。じつは一兆円の焦げつきがあるのだ。そのツケは、いず
    れ国民が支払わなければならない。住専の不良債権処理のため六千八百五十億円の税金
    が使われて大騒ぎになったが、人知れずこんなところに一兆円の赤字が生じているので
    ある。
     年金福祉事業団の事業規模は三十二兆円もある。厚生年金と国民年金の積立金は百十
    九兆円になる。年金特別会計から資金運用部(大蔵省理財局)に預けられ、二古二十兆
    円の郵便貯金とともに財投機関の原資となっている。ただし古十九兆円のうち三十二兆
    円は十年前から年金福祉事業団に貸し戻され、運用を任されてきた。
     三十二兆円のうち一般事業勘定は九兆円で、グリーンピアの建設のほか住宅資金の貸
    付けを行っている。すでに住宅ローンについては住宅金融公庫がある。住宅金融公庫の
    融資で足りない分に、年金福祉事業団の住宅資金貸付を上乗せする形が実情で、貸付条
    件もほぼ同じ。審査も実質は住宅金融公庫がやる。なぜ、住宅金融公庫のマネごとをす
    る必要があるのか、理解しにくい。当然、行財政改革の対象とされなければいけない。
     残り二十三兆円は自主運用(資金確保事業勘定、年金財源強化事業勘定)と称している
    が、要するに財テクをやってきたのだ。たしかに二十三兆円を、より有利な形で運用す
    れば年金の資産が増える。だが運用に失敗すればどうなるか。
     国債を買う程度なら安全だが儲けは少ない。信託銀行や生命保険会社に預けて株式な
    どに ″丸投げ″で運用してもらうことになる。結局、バブルがはじけて財テクは失敗し、
    評価損は一兆円に達したのだ。さらに赤字は拡大していきそうな気配である。なぜなら
    財投から高い利回りで借りて、低い利回りで運用する構造、逆ザヤはすぐには解消でき
    ないからである。
     小泉厚相は、大臣就任の翌日、年金福祉事業団について廃止の方向で見直す、と宣言
    した。郵政三事業民営化ではなく、自分の指揮下にある厚生省の特殊法人の廃止を打ち
    出したのだから、俄然、現実性を帯びてきた。だが、どこまでやれるか。
     年金福祉事業団の理事長は、厚生省事務次官の天下り指定ポストである。またグリー
    ンピアを委託経営している年金保養協会の前理事長も事務次官だった。年金保養協会の
    現理事長は社会保険健康事業財団の前理事長、とグルグルと渡り歩いている。そればか
    りではない。調べてみると、年金福祉事業団の住宅貸付部門だけで、財団法人年金住宅
    福祉協会など五十四の社団・財団法人がぶら下がっているのだ。」p248

     

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著者プロフィール

猪瀬直樹
一九四六年長野県生まれ。作家。八七年『ミカドの肖像』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。九六年『日本国の研究』で文藝春秋読者賞受賞。東京大学客員教授、東京工業大学特任教授を歴任。二〇〇二年、小泉首相より道路公団民営化委員に任命される。〇七年、東京都副知事に任命される。一二年、東京都知事に就任。一三年、辞任。一五年、大阪府・市特別顧問就任。主な著書に『天皇の影法師』『昭和16年夏の敗戦』『黒船の世紀』『ペルソナ 三島由紀夫伝』『ピカレスク 太宰治伝』のほか、『日本の近代 猪瀬直樹著作集』(全一二巻、電子版全一六巻)がある。近著に『日本国・不安の研究』『昭和23年冬の暗号』など。二〇二二年から参議院議員。

「2023年 『太陽の男 石原慎太郎伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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