瀧夜叉 (文春文庫 み 13-5)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (443ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167440053

感想・レビュー・書評

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  • 狂おしい、とはこのことか。
    すごい。
    圧倒された。
    ラストも、これしかない、という終わりだった。余韻すら残さない、残してくれない。
    狂うということ、愛するということ、これまでの基準概念がどかっと燃やされた気がした。
    美丈丸がもっとそこまで思われるほどの好人物だったらなあ、とそこは残念。
    片思い書かせたらすごいな本当に。

  • 蘆屋道摩と美丈丸が…これも一つのブロマンス…
    何度も重ねられた唇は、情愛か、執着か…
    敵対することで深まる絆…
    美丈丸を想う道摩の図は皆川博子節全開だなって思ったけど
    仮死状態みたいになってる道摩に精液かけまくる賀茂保憲が気持ち悪くて凄い…すごい…でもこの少年愛ムーブもまた皆川博子節…

  • 主人公は、平将門の、娘の夜叉姫の、婿の、従卒と、懇意であった持衰(じさい、船を守るため、いざとなったら海に捧げられる贄となる者)、なので、一体なぜこんなタイトルなんだ、いつどう夜叉姫で〆るんだ、と思っていたらこの持衰、つまり千代童、後の蘆屋道摩、が瀧夜叉だった。
    婿の従卒だった美丈丸と敵となることでより強まる愛。愛し合うには美丈丸は千代童の性を受け入れないことを彼は知っている、なんとまあすごい愛です。

  • タイトルから単純に滝夜叉姫(平将門の娘とされてるけど基本的には架空の人物で怨霊キャラ。国芳の骸骨の浮世絵が有名)の話だと思い、のわりに、肝心の夜叉の扱いがイマイチだし、その夜叉という魅力的な女性キャラがいるにも関わらず、におわせどころか露骨なBL展開に仰天しつつ最後まで読んで、やっとそういうことかと納得。「瀧夜叉」とは夜叉個人を差してるわけではなかったんですね。

    平安中期、平将門の乱とその後の一門の行く末を描いてはいるけれど、実質主人公は美少年・蘆屋道摩(道満)。彼の能力を利用しようとする興世王、ライバルなのに一目惚れしちゃう賀茂保憲(なんかもう変態すぎて滑稽というかいっそ気の毒)、幼馴染で名前の通り美丈夫?の美丈丸などが、道摩とBLワールドを繰り広げます(違)

    道摩のキャラクターは面白かったけど、この道摩が執着する美丈丸のほうが、なんとなくイケメンでなんとなく逞しくてかっこいいっぽい、という以外、とくに魅力的な人物に思えなかったので、ちょっと共感度はイマイチでした。単に幼馴染、というだけで二人が惹かれあうための具体的なエピソードがなかったからだと思う。

    その他、良い子だけどやたらと泣き虫で根性なしな少年時代の安倍晴明、政略結婚とはいえ夜叉の夫でありながらいつまでも夢見がちで流され体質の九郎など、男性キャラクターの魅力がイマイチ。女性陣(如月尼と夜叉の姉妹)はそれなりに魅力的だったけれど、いかんせんあんまり活躍しなかったからなあ。伏線回収された終盤の盛り上げは面白かったですが、視点が絞りきれなかったので全体的には少し散漫だったかも。

    含みを持たせた終わり方だったけれど、「瀧夜叉」たちがアジトにしてるのが大江山なあたり、続きがあるとしたら源頼光による鬼退治だろうな・・・

  •  藤原九朗が主人公だと思っていたら、本当は蘆屋道満が主人公だった件。
     舞台は主に平安時代で、前半は承平・天慶の乱(平将門と藤原純友の乱)を中心に据えて展開され、後半は乱以降の移ろいを描いている。主人公格は4人いるものの最も登場回数及び発言数の多いことから蘆屋道満が主人公であることは明らか。
     私が読書する際に主人公に求めているものは作中における精神の変化又は成長だったりする。九郎は最初から最後まで宙ぶらりんな心のままであり、その点道満は作中何度も悟りに至り、更には他の人物たちの動きを操ろうとするから、尚更九郎の良さが判らなかった
     ただ、意外だったのは平安時代の戦国ロマンかと思いきや、内容は蘆屋道満・安倍清明を巡る伝奇ロマン色の方が強かったことだ。
     この作品はどうやら歌舞伎に元ネタがあるらしい。歌舞伎に全く興味の無かった私でも少々気を惹かれるものがあり、いずれ歌舞伎に興味をもった際には観劇してみたい演目だと思った。
     しかし、全体として結局何を書きたかったのか判らないのが残念だった。

  • 誰が主役なのかが漠然としたまま終わってしまいました。
    蘆屋道摩の美丈丸への執着が物語の中心なのでしょうが最初に主役のように登場をした九郎がそれ以降あまり目立たなかったので私の中では何だか変な感じで…。
    同性愛的表現や倒錯的な場面と言った耽美さと陰陽師や巫と言った呪術の世界が絡まったねっとりとした世界に何人かの登場人物が付いていけないように思えました。

  • 久しぶりの何度目かの再読。
    以前読んだときより、道摩が健気に可愛く思えた・・・年を取ったか私(笑)

    結構九郎が好き。
    美人丸はイマイチ魅力が感じられない。

  • 最後のほうは、これ一冊で終わってしまうのが惜しいような展開。九郎が主人公かと思っていたけれど、蘆屋道摩として運命をにぎる千代童の情念が特に圧巻。そして彼は妖美すぎる。

  • 記憶に残っている印象的な設定が幾つかある。かなり際どいところで人間の魅力を描いている。伝奇小説ということだけど、まさにそうだと思う。同性愛の表現が生々しいような空想めいているような調子で描かれているのもそう。最後までどこか残酷な展開が続く。終わり良ければ、とは言えない最後だと思った。

  • 手持ちは単行本

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著者プロフィール

皆川博子(みながわ・ひろこ)
1930年旧朝鮮京城市生まれ。東京女子大学英文科中退。73年に「アルカディアの夏」で小説現代新人賞を受賞し、その後は、ミステリ、幻想小説、歴史小説、時代小説を主に創作を続ける。『壁 旅芝居殺人事件』で第38回日本推理作家協会賞を、『恋紅』で第95回直木賞を、『薔薇忌』で第3回柴田錬三郎賞を、『死の泉』で第32回吉川英治文学賞を、『開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―』で第12回本格ミステリ大賞を受賞。2013年にはその功績を認められ、第16回日本ミステリー文学大賞に輝き、2015年には文化功労者に選出されるなど、第一線で活躍し続けている。

「2023年 『天涯図書館』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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