- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167515027
感想・レビュー・書評
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星野さんの言葉で書かれる文章がとても素敵で出会ったこともない広大なアラスカの大自然が終始目の前に浮かんできた。自分の知らないところで、自分とは異なる様々な生活様式の人がいるんだと、こういった生き方もいいのだと思わせてくれた。新しいことをはじめるときや人生の分岐点に立ったときに最初の一歩を踏み出す勇気がもらえるような一冊。
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雑誌やSNSで取り上げられていたので
読んでみた。
著者のことは全く知らなかったが、
ヒグマに襲われて亡くなられたのですね。
言葉の表現がとても美しくて、
アラスカの大自然の中に自分も
いてるような気分になれた。
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心が洗われる。
星野さんの感じた世界が、自分も感じることができる。静かな夜や、大自然の中で読みたい一冊 -
一章が短く読みやすい。手軽にアラスカの空気を感じることができ、風景が鮮明に浮かび上がる。自然の厳しさの中では人の温かさや生命の温もりが浮き彫りになるのだろうと感じた。
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幸せと結果ばかり追い求めていく世の中で、過程をいかに大切にすべきかわかる本。俯瞰して見ることで見えてくる幸せがある。幸せな道夫さんの生活が見えてくる。自分もいつしかこのような人になれるだろうか
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自然を大切にしよう、とか、アラスカに行こう、じゃなくて、日々の、自分の目の前の暮らしを大切にしたいと、と思える。そういう不思議なアラスカでの生活のエッセイだった。もちろん、オーロラを見たいしクジラを間近で見たい。
星野道夫が見る世界の豊かさを知ることができる。見たことないアラスカの景色を、雄大な自然を、涙が出るほど美しい風景を、なぜか感じることができる。こういう読書体験が出来るから本ってすごいんだよな。解説に、星野道夫は熊に襲われて亡くなったことを知った。最後に彼が見た景色はどんなだっただろう。
とくにすきだったやつ↓
ルース氷河
子どもたちとオーロラを見る話。子どもたちそれぞれのオーロラの楽しみ方、アラスカでの生活が見えてよかった。いつかこの経験を思い出すといいと思う、って言ってる星野道夫が良い。
もうひとつの時間
日常生活の同じ時間に生き物が生きていることを感じる。自分が生活してる今この瞬間、クマが森の中を力強く歩いて木を乗り越えている。自分が働いている今この瞬間、大きな海でクジラが潮を吹いている。そうやって考えること。
「ぼくたちが毎日を生きている同じ瞬間、もうひとつの時間が、確実に、ゆったりと流れている。日々の暮らしの中で、心の片隅にそのことを意識できるかどうか、それは、天と地の差ほど大きい。」
旅をする木
この話の中で出てくる、旅をする木の話。トリ?のイタズラで思わぬところにタネを落とされ、木になり、沿岸が削られていく中でその木は海に流れてしまう。そこから木があまり生えない島に流れ着き、ランドマークとなり、キツネがテリトリーの匂いをつける場所になる。キツネの足跡を追っていたエスキモーがそこにワナを仕掛け…。
普通の物語の「終わり」風な出来事が訪れても、世界は周り生活はつづく。私たちだって旅を続けているし、大きく見ると人間だって旅を続けている、っていうまとめかたがよかった。
16歳のとき
16歳の時にアメリカ放浪旅をしようと決意した星野道夫。高校生がアメリカでヒッチハイクすることに対してみんな反対したのに、父だけが応援してくれたのが泣けた。
「バスを一台乗り遅れることで、全く違う体験が待っているということ。人生とは、人との出会いとはつきつめればそういうことなのだろうが、旅はその姿をはっきりと見せてくれた。」
アラスカに暮らす
星野道夫と奥さんの話。アラスカで住むことを決意し、そこについていくと決めた奥さん。小さなホームパーティを開いてたくさんの地元の人がやってくる。雨が降る時は降るんだ、みたいなアラスカの人の考え方とか人との接し方も好きやし、最後に奥さんがちゃんとニコッとしたのもいい。
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読めば読むほど魅力にハマっていく本。
あるいみ、あとがきもよかった。
人は死んだら終わりではなく、死んだなりの役割がある。 -
人は誰もがそれぞれの物語をもち、それぞれの一生を生きてゆくしかない。
寒いことが、人の気持ちを暖める。
離れていることが、人と人とを近づける。
私たちが生きてゆくということは、誰を犠牲にして自分自身が生きのびるのかという、終わりのない日々の選択である。
人はその土地に生きる他者の生命を奪い、その血を自分の中に取り入れることで、より深く大地と連なることができる。
死がすぐ隣にある生を、静かに感じられる本
1ヶ月かけてゆっくり読了 -
人生を生きていく上で、自分の目に見えていることだけが世界の動きではないと知っていることはかなり重要だと思った。
私が仕事をして疲弊している時にもザトウクジラはアラスカで飛び上がっていると考えたら確かにこんな疲労感なんてどこかにいってしまいそうだ。
星野さんのエッセイは読み進めていくうちに思い出す自分自身の旅や文章がいくつもあった。
懐かしいような、知らないことのような、不思議な気持ちになりながら読み進めた。
"風がすっぽり体をつつむ時、
それは古い物語が吹いてきたのだと思えばいい。
風こそは信じがたいほどやわらかい、真の化石なのだ"
このフレーズは谷川雁さんの本からの引用らしいのでそちらにも興味がわいた。 -
この『旅をする木』の著者である星野道夫は、アラスカに住む人々や動植物の写真を撮り続けた写真家です。
この本は、著者がアラスカでの旅の間に出会った人や生き物、体験した出来事を書いたエッセイです。
私がこの本と出会ったのは、中学三年の時です。母親の本棚に入っていたこの本の『旅をする木』という少し不思議なタイトルがふと気になり、手に取ってみました。
優しい文体と彼の自然観に夢中になり、毎晩眠る前に読むのが楽しみになりました。
極寒の地アラスカ——。北極圏に位置するアラスカは、冬になるとすぐ白夜の季節がやって来る、厳しい土地です。しかし、そこにはクマやカリブーなどの動物や、それらを追うエスキモーやインディアンなどの先住民、そして彼らを取り囲むツンドラや高山の植物など、たくさんの生き物が暮らしています。
そんなアラスカを描いた彼の数多くのエピソードの中で、私の印象に強く残ったのは「もうひとつの時間」という話です。
彼は、東京の友人と夏のアラスカの海を旅していました。あるとき、2人はクジラの群れに遭遇します。二人がクジラたちを眺めていると、突然、一頭のクジラが海面から高く飛び上がりました。
その一瞬、その一頭と二人は時間を共有したのです。
「私が東京であわただしく働いている時、その同じ瞬間、もしかするとアラスカの海でクジラが飛び上がっているかもしれない、それを知った」と、筆者の友人は話します。
「僕たちが、毎日生きている同じ瞬間、もうひとつの時間が、確実に、ゆったりと流れている。」
このもうひとつの時間を意識できるということは、とても大きいことだと思います。
このエピソードを読んだ後に、星野道夫の写真集を見ました。
写真を眺めているときに考えるのは、たった今自分がこうして寝そべっている間にも、こんな動物が氷の大地を踏みしめ歩いて行くのか、ということや、狩猟民族の人々が獲物を仕留めた喜びと自然への感謝を分かち合っているのか、ということなのです。はたまた、何万年も前から変わらないと言われるアラスカの大地や岩山、氷山が今も眠るようにそこにあるのだな、ということでもあります。
そしてこのもうひとつの時間は、本を閉じても、写真集をしまいこんでも、心のなかに残るのです。
歩いているときやバスに乗っているときにも、遠くの行ったこともない土地に流れている見知らぬ時間を意識し、そこに憧れを覚えると同時に、自分が暮らしている世界がなんと小さいものか考えさせられます。
ただ、このもうひとつの時間は失われつつあります。
そう遠くない昔、アラスカに入ってきた資本主義と近代の技術は、急速にアラスカの文化を変化させました。
「・・・昔から、インディアンが考えていることは三つしかない。大地、動物、そして人間だ。生き延びてゆくためにな。富、そんなことは誰も考えはしなかった・・・」これは、アラスカの文化が純粋に残っていた頃から生きていたインディアン、デイビットが星野道夫に語った言葉です。
現在のアラスカでは、こうはゆきません。お金があれば便利な暮らしができますが、逆にいえば、お金がなければ生き延びてゆけないのです。
この文明化の流れは誰にも止められません。アラスカの人々も、目の前にある豊かさを放っておくことはできませんし、外の人々が変化を妨ぐことも不可能ですから。
私はせめて、このもうひとつの時間が失われてしまうその前に、この時間を自分の目で、耳で、体感したいと思います。
そして今残っている時間を失わないためにも、この別の意味で豊かな時間があったのだということを人に伝えられたらと思います。
では、自分が感じたその時間、景色の美しさ、豊かさをどうやってひとに伝えたらいいのでしょうか。
星野道夫の友人が彼に語った言葉に、こんなものがあります。
「いつか、ある人にこんなことを聞かれたことがあるんだ。たとえば、こんな星空や泣けてくるような夕陽を一人で見ていたとするだろ。もし愛する人がいたら、そのうつくしさやその時の気持ちをどんなふうに伝えるかって?」
彼はその問いに対して、言葉で伝えると答えます。すると友人はこう続けます。
「その人はこう言ったんだ。自分が変わってゆくことだって・・・その夕陽を見て、感動して、自分が変わってゆくことだと思うって」
私もそうして、ひとにもうひとつの時間を伝えたいです。
#夏の読書感想文