- Amazon.co.jp ・本 (686ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167549039
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
「3秒で泣くスイッチ」
<マイ五ツ星>
手紙:★★★★★
<あらすじ>-ウラ表紙より
予備校受験のために上京した受験生・孝史は、二月二十六日未明、ホテル火災に見舞われた。間一髪で、時間旅行の能力を持つ男に救助されたが、そこはなんと昭和十一年。雪降りしきる帝都・東京では、今まさに二・二六事件が起きようとしていた-。
<お気に入り>
「今カラデモ遅クナイカラ、原隊ヘ帰レ」
ふきが右手をあげて、敬礼をしてみせるのが見えた。手の甲がぴんと伸びた、きれいな敬礼だった。
◎終章のすべて
<寸評>(文中敬称略)
出会ってよかった、心から思った一冊。
タイムスリップ小説、ある意味定番の一つの形ではある。『戦国自衛隊』(半村良)に始まり、『時生』(東野圭吾)しかり、『君の名残を』(浅倉卓弥)しかり、『リピート』(乾くるみ)しかり……。
だが本作は圧倒的である。
「歴史」というものに対する登場人物たちそれぞれの考え方、読み進めるうちに自分はどうかと自問自答する。そして、それぞれは終章において、見事なまでにすがすがしく結ばれていく。ここに宮部みゆきの真骨頂がある。
そして、そんな理屈抜きにしても、爽快で美しい感動の涙を誘ってくれる。『模倣犯』『火車』『理由』などの現代ミステリーや『日暮らし』などの歴史物で宮部みゆきを知ったという方は、ぜひ読んでほしい。全く違う彼女の魅力がここにある。
タイトルからして「屋敷物ミステリー」っぽいが、誤解である。『二・二六事件』という歴史上の出来事が、主人公孝史にとっては「蒲生邸」という閉ざされた狭い世界の出来事であった、おそらくそんな意味のタイトル『蒲生邸事件』ではあるまいか。
未読の方のためネタバレを怖れて、これ以上は書けないが、第五章の5~終章は、ぜひゆっくりと落ち着ける場所で、ティッシュ1箱用意して読んでもらいたい。 -
個人的には、宮部さんの本は『クロスファイア』が一番お気に入り。
結構好きですが、この作品ではいろいろな要素がつぎはぎのように
なっている気がして、読むと渇きを覚えるというか、
まとまって揃ったお話を読みた~い!(だだっ子)気分になってしまいました。
タイムトリップなどのSF要素もありますが、
能力者が魅力的でない、というのも“落ち”の要素ですね。
そんな従来どおりでないトコロが宮部氏らしくて読みやすいところですけれども。
可愛いふきが主人公の孝史君の目の前で悲劇にあってしまうのも
すこし残酷すぎるような気がしました。
それで、煙突を直したりする孝史君は微笑ましいです。
平田とのタイムトリップを通じて、主人公が成長し、「ニ・二六事件」に対して
また、歴史に対して問題意識をもって取り組むようになる過程は素晴らしいと思いました。
ただ、登場する珠子嬢、鞠恵さん、貴之君などはあまりキャラを生かしきれていない、と
思えてしまったのは私だけでしょうか?
反対に蒲生大将閣下と葛城医師、黒井や平田などはとても活き活きと
生命力をもって活躍していたと思います。
蒲生閣下の遺書、「この国はいちど滅びるのだ」という言葉がとても印象に残りました。
なんとなく、考え深い一冊でした -
2・26事件へのタイムスリップ。
宮部さんはその時々の登場人物を介し、誰にでもある感情を掘り下げる。そういうところが好き。
ちなみに恩田陸さんの「ねじの回転」を読むと、どうしてもこの作品も思い出しちゃうんだよね。全く違う話なのに226つながりで。 -
場所の雰囲気の解るエンタメ推理小説
-
多分、自分が宮部みゆきの名前を意識し始めるきっかけになったのが本作。B!誌で古屋さんが書評を書いていて、それがいかにも面白そうに思えたのに加え、表紙のヘタウマな絵が頭に焼き付いてしまった。で、30年越しくらいにやっと読めたのでした。やたら小さく思えて仕方ない主人公の造形が好きじゃなく、結局そのイメージは、物語が閉じられるまで覆ることはなかった。こういう人物だからこそ、高校卒業したてくらいの設定を充てたのだろうけど、そのキャラと終始付き合わなきゃならないってのは、なかなかのストレスでもあり…。これ以外の著作をいろいろ読んでいる現状、本作が氏のベスト級とはとても思わないけど、それでも面白さはさすが。
-
主人公の少し強引で厚かましいキャラクターが印象的だった。
-
ニ・二六事件が大きなテーマですが、蒲生邸に住む人々、タイムスリップした受験生、時代の流れ全てが圧巻です。ラストは主人公ととある女性の会話に癒されます。自分がタイムスリップした感覚すら覚える作品です。