イギリスはおいしい (文春文庫 は 14-2)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167570026

感想・レビュー・書評

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  • 久しぶりにリンボウ先生。
    日本語のリズムがとても良い。
    古き良き時代のイギリスにリンボウ先生の居住まいはぴったりね。

  • イギリスの食文化について、個人的な感想をたっぷり含めて紹介している面白い本。

    野菜を煮すぎるお話やパブの文化、アフタヌーンティーのお話も好き。発行からしばらく経っていて、今はまた変化しているだろうけどイギリスの食文化を知りたいならうってつけだと思う。

  • アメリカ人の妻、日本人の家と並び「地獄」と評されるイギリスの料理。本書の冒頭から、「まずいイギリス料理」が次々と紹介される。またその描写がおもしろい。しかし最後は、「イギリスの食卓には、私たちの国ではもうとうの昔に失われてしまった、なにか美しい『あじわい』が残っている」と締めくくる。

    その「あじわい」の本質は、「雰囲気」と「コミュニケーション」。オックスフォードやケンブリッジ大学の伝統、ハイティーブル・ディナーにしても然り、パブにしても然り、勿論アフタヌーンティにしても然り。イギリスでは、各人が飲み物を手にして、あるいは食事をしながらくつろいで話をする「コミュニケーション」に主眼があるのだ。つまり、料理は、味そのものを追求するものというよりは、ディナーやお茶会や呑み会の席に皆で集まって会話を楽しむためのツールと言えそうだ。だから、旧知の友も初めて招かれた客も心地よく過ごせるように、すごく気を配る。それが、おいしさ」に繋がっているということだろう。

    そして、イギリス人にとっての家庭料理は、家族揃った食卓の、静かな、落ち着いた雰囲気の中でくつろいで談話を交わすという、そのことに実は一番大きな目的がある。料理そのものが主役ではないのである。
    一見、イギリス料理を揶揄しているかのようなタイトルではあるが、実は多くの日本人が忘れかけていた「大切なこと」に気付かされるのである(少なくとも、テレビを見ながらの夕食は止めなければならない…)。

    最後に印象に残った点をもう一つ。「パンは、その素材感、その機能、その食生活上に位置といったことまでも、ことごとく在来の日本の食習慣の構造的影響下にねじ曲げられ、変質して、今では世界中の他に類のない独特な存在となりおおせている」。ここで想起するのは芥川龍之介の『神々の微笑』。日本人が持つ、外来文化を「創り変える力」を、料理においても改めて実感するのである。

  • 軽妙な語り口でイギリスの料理について述べたエッセイです。イギリス人の大らかな性格が感じられてとても面白かったです。

  • イギリスの食について、いかに美味しくないか、面白おかしく書かれていながらも、著者のイギリスへの愛が伝わってくる。時々、"そうそう"などと思って、クスっとしながら、あっという間に読了。

  • 2016/12/16

  • w

  • イギリス料理及び文化についての随筆集。結局、英国料理そのものは大抵が不味いようだ。塩加減が滅茶苦茶なのと、茹で過ぎるためだ。タイトルを「おいしい」としたのは、食事の際に交わすウィットに富んだ会話や雰囲気を含めてのことであろう。美味しかった料理は丁寧にもレシピを載せているので、料理を嗜んでいる方には良い発見があるかもしれない。然程ではない私は、主食と副食を分ける文化が無いことや雑過ぎて衝撃的な弁当(と言えるのか?)やら手作り披露宴の話を楽しんだ。

  • スコンが食べたいスコンが。

  • どういうシチュエーションか忘れたけれど、「だってイギリス人って、緑の野菜を茶色く茹でる人達なんですよ!」って後輩が言ったことが忘れられない。
    家族でイギリスに留学した人に美味しいものあった?って聞いたら「ローストビーフ以外は全て食べる価値なしです」と言われたこともあったなあ。

    リンボウ先生の分析によると、イギリス人は塩加減に無頓着。つまり味がないか、しょっぱいか極端であるらしい。
    そして、食感に無頓着。歯ごたえ、のど越し、舌触り。そういうものに、とんと興味がないらしい。

    だから茹ですぎる。
    とにかく茹で倒す。
    味のないでろでろした野菜を平気で食べる。(それはベビーフードではないの?)

    それは、質素倹約を旨としたピューリタン精神に基づくものである、という説もあるのだそうで、おいしい料理を食べておいしいと喜ぶのは罪深いことであると。
    確かにフランスもイタリアもカトリックだな。

    とはいえ、私が思うには、子どもの頃に周りの人たちが「おいしいね」と言いあいながら食事をとる経験がないと、おいしいものに対する感性が鈍くなるのではないかなあ。
    赤ちゃんの、最初の一口から好き嫌いはあると思うけど、それとは別においしいものを喜ぶこと、これは文化なのではないかしら。

    というのも、私の実家は父が大の偏食家で、母は認めないけど結構な偏食家だったのではないかと思うのね。
    そして料理下手を自認していた母が、「おいしいから食べてごらん」なんて言うはずもなく、大抵のものは味も感じないで義務として食べていたように思います。

    ところが結婚したら、まあなんでも「おいしい。おいしい」と食べる人に当って、大して料理が得意でもない私が勘違いしそうな勢いで食べてくれる。
    好き嫌いなくなんでも食べる人につられて、大人になってから好きになった食べ物数知れず。

    そんなわけで、好き嫌いは個人の味覚だと思うけど、おいしく料理を食べるというのは文化だと思うわけです。
    イギリスは食事そのものよりも、食事の際の会話が大切な文化だから、あんまりおいしくて会話がおろそかになってはいけないから、味には無頓着という説もあるようです。

    それにしても、魚を焼く前にお湯でぐらぐら煮るというのは、日本人には考えられませんね。
    さかなの出汁がたっぷりとれた茹で汁は、惜し気もなく捨てるそうです。
    ああ…もったいない。

    そして、イギリスにはイギリスパンと言われている山型のパンはないそうです。
    イギリス人には主食と副食という概念がないので、パンが主食とは考えていない。
    では、パンとは何か?
    おかずを載せて食べる台。
    だからうすーくうすーく切るのがよい。
    厚切りだとそれだけでお腹いっぱいになっちゃうからダメなんですって。

    でも、イギリスのスコーン(本場の発音ではスコン)は、絶品らしいです。
    こうなってくると逆に気になってくるのが不思議。

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著者プロフィール

1949年東京生。作家・国文学者。

慶應義塾大学文学部卒、同大学院博士課程満期退学(国文学専攻)。東横学園短大助教授、ケンブリッジ大学客員教授、東京藝術大学助教授等を歴任。『イギリスはおいしい』(平凡社・文春文庫)で91年日本エッセイスト・クラブ賞。『ケンブリッジ大学所蔵和漢古書総合目録』(Pコーニツキと共著、ケンブリッジ大学出版)で、国際交流奨励賞。学術論文、エッセイ、小説の他、歌曲の詩作、能作・能評論等著書多数。『謹訳源氏物語』全十巻(祥伝社)で2013年毎日出版文化賞特別賞受賞。2019年『(改訂新修)謹訳源氏物語』(祥伝社文庫)全十巻。ほかに、『往生の物語』(集英社新書)『恋の歌、恋の物語』(岩波ジュニア新書)等古典の評解書を多く執筆。『旬菜膳語』(岩波書店・文春文庫)『リンボウ先生のうふふ枕草子』(祥伝社)、『謹訳平家物語』全四巻(祥伝社)『謹訳世阿弥能楽集』(檜書店)『謹訳徒然草』(祥伝社)等著書多数。

「2021年 『古典の効能』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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