季節風 夏 (文春文庫 し 38-11)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167669119

感想・レビュー・書評

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  • 「夏は思い出も、失敗も、そして終わりも作り出す。」
    今までの「冬」「春」とは少しテイストの違う「夏」。
    過去の思い出、失敗に今の自分がどう向き合うかという話が多かった。やはり、そこに答えは無く、でも周りの世界は優しい。相変わらず暖かい小説たち。
    「べっぴんさん」「タカシ丸」には号泣。最近の若い作家では到底及ばない、人死をこんな暖かい話しにしてくれる手腕に感謝。その2作の後の「虹色メガネ」で、ほっこり笑顔に。さすがの重松清様でした。

  • 季節風シリーズの『春』が面白かったので、お盆前に買って少しずつ読んでいたが、ようやく読了。
    お盆を挟む期間であり、どうしても「死」に繋がるストーリーが多く、気持ちが沈んでしまい、何となくページが進まなかった。1話読んでは数日空けるスピードだった。夕暮れ時や夜に「ちょっとしんみり」したいなら問題無いのだが。。
    でもまあ、「終わりからの再生」ということで、どの話も登場人物が人生の新たなステージに向かう構成になっており、安心させられた。
    中盤の高校球児の話や、親友と海まで自転車で行く話がお気に入りある。少年達のほろ苦い思い出だが、これから経験するであろう困難を乗り越えるエネルギーに昇華させていくのだろう。

  • 季節風シリーズの「夏」編。
    子供が主人公とか、または大人になって振り返る子供の頃の思い出とか、さらには親の死、友達の死など、別れを題材にした作品が多い。
    やはり、お盆や終戦記念日あるいは日航機事故とか、夏は過去に思いを致す鎮魂の季節ゆえか。
    なかでも、家族愛を描いた『あじさい、揺れて』『ささのは さらさら』『タカシ丸』が、特に印象深い読後感。

  • 重松 清氏の季節風シリーズ第3弾「夏」を読みました。
    12編からなる短編集。
    重松氏の夏のイメージは「ドキドキ」とのこと。
    夏は「終わり」が似合う。
    作品のタイトルにもなっている「終わりの後の始まりの前に」が一つのテーマになっています。
    (重松氏の作品はどれも??)
    家族、友人、恋人を想う12の物語。
    重松氏らしい作品集です。

    読むのが止めれなくなり、あっという間に読んでしまいます。
    次は季節風シリーズ最後の「秋」を読む予定です。

  • 季節風シリーズを順番に読んでいます。
    この中では、「魔法使いの絵の具」が好きです。
    自然の中での遊び方を大人になっても覚えているところが羨ましいというのと、
    状況や性格が違う相手に対して、蔑んでしまったり逆に劣等感を感じてしまう心理描写が刺さったというのが理由です。

  •  あとがきにあった、夏は四季の中で最も「終わり」を意識する季節という記述に納得する、どこか切なくほろ苦い夏の短編集。『僕たちのミシシッピ・リバー』『あじさい、揺れて』『その次の雨の日のために』『ささのは さらさら』『タカシ丸』が良かった。私の父は余命宣告を受けた2日後に亡くなったため、最期に思い出作りができた雅也が少し羨ましい。『虹色メガネ』は可愛らしくて好き。夏休み最終日のあの空気感が見事に再現されている。
     季節や心情の切り取り方が本当に上手く、まだ秋・冬の2作品楽しめるのが嬉しい。

  • とくに

  • 短いストーリーに大きな感動、毎度毎度泣かされる…。夏の旅行鞄に忍ばせました。

  • 電車の中で読んじゃダメだった。
    涙が滲んで、何度も心を落ち着かせるために本を閉じてた。

    短編集。
    どの物語も、喉の奥がひゅっと痛い。
    友人や身内の死が出てくる話では、父を癌で亡くした自分を重ね合わせてるのかなぁ。

    「タカシ丸」は、まさに父親が癌で命を落とそうとしてる物語。
    家族を遺して逝ってしまう父の寂しさ、無念さ…を我が父に重ね合わせ。
    最期の時間を過ごし、父との記憶を作れた雅也。感情のままに声を上げて泣くことができたことが何よりの幸せかな。

    重松さんの物語は心をきゅっとされるけど、「あぁ、私の中のわだかまりってこういうことなんだ」とある意味すっきりする泣き方ができる。

  • 電車の中では読めない本。

    『小学五年生』を描くことの得意な作者が、元気でキラキラして、そしてちょっぴり切ないお話をいくつも載せているのが、この“夏”だと思って読み始めた。
    もちろん、『僕らのミシシッピ・リバー』は、その筆頭だと思うし、『終わりのあとの始まりの前に』も、少し年上の高校生の話ではあるけれど、そういうイメージで読めた。

    別れのお話が多い。
    夏って、そんな感じだったっけ?
    気温もテンションも楽しさもピークなのが夏・・・と思っていたが、考えてみると、ピークということは、あとは下るしかないということなのだろうか。

    そういえば、お盆も終戦記念日も夏だ。
    蛍も一週間の輝き、蝉も二週間くらいしか生きられない。
    銀河鉄道の夜も夏の話だったっけ?
    夏祭り・・・お祭りというのも、もともとは死者の霊を祀ることだ。

    もちろん、読後感の悪い作品はひとつもない。
    終わりの中に再出発が必ず描かれている。
    けれど、再出発するためには、そこに残されていくものもある。
    再出発する人にエールを送るとともに、残されて忘れられていく者への鎮魂歌を贈る、そんなお話が多くてしみじみとする。

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著者プロフィール

重松清
1963年岡山県生まれ。早稲田大学教育学部卒業。91年『ビフォア・ラン』でデビュー。99年『ナイフ』で坪田譲治文学賞、『エイジ』で山本周五郎賞、2001年『ビタミンF』で直木三十五賞、10年『十字架』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『流星ワゴン』『疾走』『その日のまえに』『カシオペアの丘で』『とんび』『ステップ』『きみ去りしのち』『峠うどん物語』など多数。

「2023年 『カモナマイハウス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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