- Amazon.co.jp ・本 (469ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167705879
感想・レビュー・書評
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ナチのホロコースト、人種差別、聾学校の様子、手話でのやりとり。著者、自身がもしかして聴こえないんじゃないかと感じました。
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耳の聞こえない少女イヴと母親クラリッサ、イヴの保護者となるフランの壮絶な物語。
希望と絶望の間を揺れ動くエピソードの積み重ねで物語が進み、女達が懸命に闘う姿に胸を打たれる。
重苦しい話の中でも美しいタイトルと文章、そしてイヴの撮る写真が光のように感じられる。 -
大戦後のブロンクス、最悪な混沌とした街を物体に生まれついての不幸な運命に弄ばれる女性たちの話。家族とは、友情とは彼女たちに取って男とは何か?
胸に深く突き刺さる小説だ。 -
奥付を見ると原題はWOMAN。
男性優位の、銃と麻薬に溢れたアメリカの町。障害を持ち女に生まれたイヴ。母とその女友達と彼女と。言葉が景色が写真が文章になってここにある。心情は文章で直接表されていないのに心情が溢れてくる。親の目でイヴを見、子供の目でクラリッサとフランを見る。クラリッサは何でロメインのような奴と夫婦でいるのか‥‥
終盤は読むのが苦しい、でも読まずにいられない。朝読み終わったのに、夜中の今思い出すと胸が苦しい。人生を考え、女を考え障害を考える何度でも 何度でも -
苦難に流され泥にまみれながらも、愛情を忘れず勇気をもって生きる女たち。
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負けず頼らず芯の強い女達。時に支え合いながらも、甘えず力強く生きていく女達。
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三種類の女がでてくる。
ナチスの迫害を生き抜いたものの、女としては致命的な傷を心身に負った孤高の女・フラン。暴君のような夫に虐げられる生活の中でも良心に根ざす信仰を失わず、障害を持って生まれた娘に無償の愛情を注ぐクラリッサ。
そんな二人に慈しまれ、銃の代わりにカメラを武器にしなやかに成長していくイヴ。
女と女の友情の話である。
イヴと名付けられた希望の種を巡る、女たちの静かで激しい戦いの記録でもある。
中でも魅力的だったのはクラリッサ。横暴な夫の虐待を耐え忍び、幾多の悲劇を乗り越え強く在ろうとした姿が感動をよぶ。
立場と性格は違えど同じ逆境を体験した者同士、相通じるものがあるフランと共に屋上で鳩を抱く場面の無垢なる美しさは言葉にできない。
文章は類稀な詩情に溢れ繊細で美しく、灰色の現実の中でも決して色褪せない真実の宝石を写真の如く切り取っていく。
撃鉄を落とすようにシャッターを押し、自分を弾圧する人生への対し方を学んでいくイヴ。
冒頭、イヴと恋人が手話で交歓するシーンに溢れた素朴な信頼と愛情は、物語を追ってイヴという少女の過酷な前半生を知ればこそ、それがどれだけ得難き価値のあるものか得心がいく。そしてイヴが撮った写真、肌の色が異なる家族が食卓で手を繋ぎ輪になる情景にこそ聖俗併せ呑む愛の核心が集約されるのだ。
本作には素晴らしいもの、尊きものが散りばめられているが、それらを脅かす唾棄すべき悪の存在もまた容赦なく描かれる。しかしだからこそ、弱き女たちが自分よりさらに弱きもののために戦いに挑む姿は、精神の気高さから生まれた崇高な美しさを保ち得るのだ。
「自由の女神が聾唖でもいいじゃないの」
これは母と子と希望の物語だ。 -
しんどかった。苦しかった。感情が鍛えられるという帯の言葉は間違いじゃない。でもわたしはこれを誰にも薦められない。
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麻薬やら銃やら暴力やら、アメリカの暗部を象徴するステレオタイプなネタではあるんだけども、ともかくいちいち細かく書き込まれてて、当たり前だけど、っぽいっと撃たれて死んで終わりじゃないよな、って事を思い知らされる。重い分読むのには時間がかかるけども。
それにしたってアメリカという国は、一面的にせよ、ともかく混沌としていて一筋縄ではいかないのだよなぁ。