- Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167741037
感想・レビュー・書評
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どの作品も良い。短編ではなく続きが読みたい。個人的には犬の散歩の続きが1番読みたい。
お金より大切な何かのために生きる人達の話。
お金が無いと困るけれど、大切にしたいものが無ければ人生は寂しい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
まわりがどう思うかではなく、自分がこう生きたいから、という理由で人生を歩んでいる人たちの物語。
その道が、傍からはどう思われようとも。
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意識的・無意識的にせよ、自分の中の信念を貫いて生きる人たちを描いた6本の短編集。
…と書くと、すべて“美談”のように思えるかもしれないけれど、読み手の立場としては第3者の目線で物語を見ていくため、「守りたいものがあるのはわかるけど、わたしがこの人のそばに居る人だったら、ついていけてなかったな」と思うこともありました。
お話によって、筋はわかったけれど意味はうまく受け取れなかったものもありましたが、ミステリ要素もあり、仏像の知識がゼロなわたしでも、真相の意味がしっかりわかり衝撃がはしった「鐘の音」、お互いのことは好きだけど、人生をかけて守りたいものが違った夫婦の姿を描いた表題作「風に舞いあがるビニールシート」は、印象的でした。
「鐘の音」も「風に舞いあがるビニールシート」も、仏像知識や国連・難民問題についての記述が出てきます。
噛み砕かれて書かれてはいるものの、その知識すべては理解しきれませんでしたが、そうした知識がしっかり書かれているからこそ、物語で描かれる人物たちの苦悩や思い違いがくっきりと浮かび上がっていてきました。
特に「風に舞いあがるビニールシート」は、世界の話でもあり、夫婦の話でもあり、この短いお話のなかにこれだけの視点が、違和感なくおさまっていました。
テーマはすごくよくわかりましたが、お話によって感じ方に落差があったため☆3つにしました。
「自分は自分の信念のまま、人生を進んでいるだけなのに、まわりから理解されない…」と悩んでいる人は、この小説を読むと「自分の姿はまわりから見ると、こんな風に見えているのだな」と冷静に受け止められるかもしれません。
そして「まわりに理解してほしい」という気持ちを、良い意味で捨て去ることができるかもしれない、そんなお話がつまった1冊でした。 -
“大切な何かの為に、懸命に生きる人たちの六つの物語” の中の表題作『風に舞いあがるビニ-ルシ-ト』が、圧倒的な気魄で胸を締め付けてやまない、第135回直木賞受賞作。外資系の投資銀行を退職し、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の一般職へ転職した<里佳>と、危険と隣り合わせのフィールドで、獰猛な風に吹き飛ばされそうな難民たちを救うべく、日夜闘い続ける<エド>との息詰まる物語に精魂尽き果てる。『器を探して』『犬の散歩』『守護神』『鐘の音』『ジェネレ-ションX』・・・其々の登場人物の一途な生き方(考え方)に共鳴し、心震える作品集。
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直木賞受賞作と聞いて買った一冊。
自分だけの価値観を持ってる人達の話だった。
短編集
どの話も大切な何かを持ってる人の話で、何かを守る為には、お金や恋人も捨てる覚悟を持っている。
こうゆう人達は悪い目で見ると頑固だったり変わり者だったり変な括りにされてしまう。
でもこの小説に出てくる人達は頑固にも変人にも見えず、ただ頑張ってる人達に見えた。
その違いがなにかわからない
人柄だろうか?生き方だろうか?
本のあらすじにも書いてあるが
あたたかくて力強い
まさしくそんな人達の小説でした。
自分的には「ジェネレーションX」が綺麗に完結していて面白かった。
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表題作はぐっときたが、「守護神」「ジェネレーションⅩ」あたりが好み。仕事への矜持、自己効力感、計画された偶然...。6編それぞれに登場する人たちのメンタルモデルに触れ、自分が大事にしているものとそうでもないものとを考え、行ったり来たり...。短編ながらオチもしっかりしていて、読後感は良。著者の作品は三作目?他作品も読んでいきたい。
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森絵都さんの作品は
『みかづき』に続き本作で2作目。
前回超長編だったが今回は短編集で6つの物語。
これはきっとサクッと読めるだろう。
なんて軽い気持ちで読み始めたものの、どうやらその予想が大きく裏切られたと2章目あたりから気付いた…
自分の価値観を大切にし、そのために懸命に生きる人々を描いた6編。
こんなにも6編全てが異色で、其々に個性を放ち主人公の価値観に魅了され翻弄され…気付けばとっぷりと森絵都さんの世界にはまっていた。
とりわけ読後の短編らしからぬ満足感に敬服した。
どの物語も所謂分かりやすい良い話ではない。
人間の醜さや狡さや滑稽さを真っ向から描きながらも、その一方で人の強さや優しさを伝えてくれる。その分、読み手側も心して受け取らなくては怯んでしまうほど圧倒的な力を秘めていた。
特に「ジェネレーションX」「風に舞いあがるビニールシート」が印象的だった。
人それぞれ価値観は違う。
何を大切にどう生きるのか…
誰しも様々な経験や周りの方とのご縁を通じて、自分でも気付かないうちに少しずつ変化を繰り返しながら、自分の軸となる部分を形成しているのだろう。
一度きりの人生…
自分と大切な人の価値観を、まるごと愛せるような生き方ができたら幸せだと思った。
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2006年直木賞受賞作の短編集。
森絵都さんの小説を読むのは「つきのふね」以来で、それは確か括りとしては児童文学だったから、一般文芸の作品を読むのは初めて。
第一印象、あらゆる意味において、巧いと思った。
読ませる文章力もだし、それぞれの短編のオチもだし、そもそも収録されている六編の印象が違うから、同じ作者が書いているように思えなかった。
表題作と「器を探して」「鐘の音」辺りは“お仕事小説”的な側面もあって、とくに国連の職員が主人公の表題作と、仏像修復師について描かれている「鐘の音」は、自分が普段触れることがない世界を垣間見ることができて興味深かった。
難民を救出する活動をしているアメリカ人の夫を持つ女性が主人公である表題作を読んで、今の世界の状況と照らし合わせて色々と考えてしまった。
風に舞いあがるビニールシートのように、はたはたと揺らめきすぐにでも飛んで行ってしまいそうな命たちの重さ。取り憑かれたように立ち向かった夫と、保身を考えてしまい立ち向かえなかった妻とのすれ違い。そしてその後。
実際、他人の命を救うために我が身を投げ出すことが出来る人間はこの世にいるのだろうけど、果たして自分は、と考えるととても気が遠くなった。そういう思いは一体どこから生まれてくるのだろう、って。
各物語の主人公はみなそれぞれ自己というものを強く持っていて、周りと調和するためにひた隠しにしようとしたりその逆に人とぶつかったりしながら、自分の生き方というものを探っているように見えた。
一本取られた!という思いですかっと読み終えられる物語ばかりで気持ちよかった。 -
なかなか濃厚な6つの短編集でした。
表題作の風に舞上がるビニールシートを読み終わったあと、「はーっっ。」と深く大きな吐息が出たあと、胸がいっぱいになりました。
ほんとは色々書きたいのですが、言葉に表すと安っぽくて、つまらない文章になるので諦めます。
弥生も、恵利子も、祐介も、潔も、健一と石津も、里佳とエドも、みんな懸命に生きる姿が印象的で人間臭く、力強さを感じられました。 -
とても幅の広い作品。物語も登場人物も雰囲気も。誰にでも、好みの短編が見つかるのでは。