三年身籠る (文春文庫 た 69-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (314ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167762018

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  • まごうことなき妊婦の冬子。しかし腹の子は十月十日を過ぎても出てくる気配はない。
    不倫夫だった徹。冬子の妹のパンク娘・緑子。そして緑子の恋人で医学生の海くん。に、巻き起こるひとつの物語。

    私のいちばん身近な子持ちは姉で、ここ数年友人でも数人出産した人がいて思うのは、妊娠して出産するまでにたくさん心構えをしたつもりでいても、実際産まれてみなきゃ分からないことの方が多くて、悩んで辛い思いをして果てはノイローゼになりかけたりもして、少しずつ母親になっていくのだろうということ。
    私だってもう子どもの一人や二人いてもおかしくない年齢だけど、もし今妊娠したとして、手放しで喜べる自信はない。

    この物語に出てくる夫婦も、年齢的にはとっくに大人だけど大人になりきれていなくて、お腹に子が宿っても心の準備がしきれていなくて、周りも何だかがちゃがちゃしていて、そんな中お腹の子が空気を読んで(?)お腹にとどまってしまっているという、ファンタジーなんだけど現実めいた不思議なお話だった。

    著者の唯野さんは女優さんだそうで、検索してみたら「あ!観たことある!」と思った。キラリと光る脇役的な女優さん。
    女性特有の感覚で綴られた物語かもしれないけれど、からりと乾いていて女臭くはなかった。それがとてもよかった。
    何より妹の緑子がキュートだった。

    今で言うと…自分の置かれた状況とかは別にして、政治的な意味合いで、新しく子どもを産んでいいものかどうか悩んでしまう世の中になってしまったと思う。
    最初から色んなことが不安なのに、さらに不安要素が増えてしまっていることが悲しい。
    自分のなかの不安だけと闘える状況は、本当はとても幸せなのかも、と思った。

  • 三年身籠っている間子供はどうなってるのか?と思ったら、きちんと泣くし、笑うし、動き回るし、想像以上に元気。
    出産前の状態で大きくなっていくわけじゃないのね。

    2年目までは誰の気持も行動も納得できないような気がして、読みながらむずむずしたけれど、3年目まで読み進めるとようやくそれぞれがぴたりとはまった気がする。

    女同士の親族たちの会話、微妙な間、丁寧に用意される色とりどりの料理、お互いを受け入れきれない姉妹(冬子、緑子)、頼りにならない男性たち(徹、海)、
    面白かった。

  • 「BOOK」データベースより
    冬子29歳、ただいま妊娠9ヵ月。まごうことなき妊婦である。しかし十月十日を過ぎても子どもは産まれてこない。―個性的な女優が映画制作に先がけて初の小説に挑戦、不思議な傑作が誕生した。書き下ろし長篇450枚。

    これはアイディアも突飛でとっても面白いし、文章もかなり達者で川上弘美を思わせりるユーモラスさがある。ありえないファンタジーなんだけれども妙にリアルな手触りがある。うーん女優さんが書いたのかあなんて偏見かもしれないけれど大したものだと思います。

  • もう少しおどろおどろしい話かと身構えていたけど、ウイットあるいい話だった。
    歴代彼氏の描写など面白い。
    ラストの、冬子の反撃は迫力があってとても良い。
    格好よさが嫌味になっていった海くんが、よりによって女装してる時に病院へ駆け込まされるのもいい仕打ち。

  • 十月十日を過ぎても赤ちゃんが産まれず、三年が経過してしまうタイトル通りの話。京極夏彦のウブメの夏を連想してしまったが、こちらはミステリーではありません。それにしても食べ物の描写が多く、食欲をかきたてられてしまう。

  • 読み終わって冬子三年身籠る意味がわからなかった。普通に生まれるまでの間十月十日で物語れるんじゃないの?

    解説を読んで気がついた。周りの大人達に迎える準備ができていないということを。そこに気がつかないくらい、個性的なキャラが多かった。母親に対して辛辣な評価をする緑子が好き。

  • 身籠もった冬子から、十月十日たてども子供がいっこうに産まれてこない。
    そんな冬子と妹の緑子の物語。

    こういうぶっとんだ登場人物の話は苦手です。
    設定はおもしろいと思うけど。

    「個性を純粋に保つにはすべての不自然な情報を遮断すればいいのだ。」

    「お経は強烈な個性的なひとつの思考」

    「サンタクロースはノストラダムスが扮してるのではないかと自分は疑っている。地球滅亡に向けて未来を担う子どもたちに呪いをかけるため、贈り物には罠を仕掛けて、あたかも善行のようにみせかけて世界中を飛び回っているのだろう。なぜなら、わかり易い善行というものは、得てして悪を潜ませているものだから。」

    タイトルと、文庫のカバーデザインは好き。


  • 十月十日で産まれてくるはずの赤ちゃん。
    でも、主人公はタイトルの通り3年の間も身籠ったまま、、、。

    何というかなぁ、、、。
    親の気持ちの都合で、お腹の中の赤ちゃんが3年間頑張ったって感じ?(笑)

  • 途中から斜め読み。

  • 現代小説とSFがまじりあったような不思議な小説。

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著者プロフィール

1973年東京生まれ。女優、映画監督、脚本家、作家。多摩美術大学在学中の97年、斎藤久志監督の映画「フレンチドレッシング」で女優デビュー(毎日映画コンクール・スポニチグランプリ新人賞を受賞)。その後、「大いなる幻影」(監督:黒沢清)、「BULLET BALLET」(監督:塚本晋也)、「金髪の草原」(監督:犬童一心)「さゞなみ」(監督:長尾直樹)「『また、必ず会おう』と誰もが言った。」(監督:古厩智之)などに出演。その他の出演映画に「いたいふたり」「透光の樹」「血と骨」「それでもボクはやってない」「Sweet Rain 死神の精度」「ゲゲゲの女房」などがある。2006年「三年身籠る」で長篇映画監督・脚本家デビュー(高崎映画祭・若手監督グランプリ受賞)。映画の進行と同時に、同名の長篇小説を書き下ろし、小説家デビューも果たす。

「2018年 『彼女たちがやったこと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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