- Amazon.co.jp ・本 (314ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167762018
感想・レビュー・書評
-
まごうことなき妊婦の冬子。しかし腹の子は十月十日を過ぎても出てくる気配はない。
不倫夫だった徹。冬子の妹のパンク娘・緑子。そして緑子の恋人で医学生の海くん。に、巻き起こるひとつの物語。
私のいちばん身近な子持ちは姉で、ここ数年友人でも数人出産した人がいて思うのは、妊娠して出産するまでにたくさん心構えをしたつもりでいても、実際産まれてみなきゃ分からないことの方が多くて、悩んで辛い思いをして果てはノイローゼになりかけたりもして、少しずつ母親になっていくのだろうということ。
私だってもう子どもの一人や二人いてもおかしくない年齢だけど、もし今妊娠したとして、手放しで喜べる自信はない。
この物語に出てくる夫婦も、年齢的にはとっくに大人だけど大人になりきれていなくて、お腹に子が宿っても心の準備がしきれていなくて、周りも何だかがちゃがちゃしていて、そんな中お腹の子が空気を読んで(?)お腹にとどまってしまっているという、ファンタジーなんだけど現実めいた不思議なお話だった。
著者の唯野さんは女優さんだそうで、検索してみたら「あ!観たことある!」と思った。キラリと光る脇役的な女優さん。
女性特有の感覚で綴られた物語かもしれないけれど、からりと乾いていて女臭くはなかった。それがとてもよかった。
何より妹の緑子がキュートだった。
今で言うと…自分の置かれた状況とかは別にして、政治的な意味合いで、新しく子どもを産んでいいものかどうか悩んでしまう世の中になってしまったと思う。
最初から色んなことが不安なのに、さらに不安要素が増えてしまっていることが悲しい。
自分のなかの不安だけと闘える状況は、本当はとても幸せなのかも、と思った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「BOOK」データベースより
冬子29歳、ただいま妊娠9ヵ月。まごうことなき妊婦である。しかし十月十日を過ぎても子どもは産まれてこない。―個性的な女優が映画制作に先がけて初の小説に挑戦、不思議な傑作が誕生した。書き下ろし長篇450枚。
これはアイディアも突飛でとっても面白いし、文章もかなり達者で川上弘美を思わせりるユーモラスさがある。ありえないファンタジーなんだけれども妙にリアルな手触りがある。うーん女優さんが書いたのかあなんて偏見かもしれないけれど大したものだと思います。 -
もう少しおどろおどろしい話かと身構えていたけど、ウイットあるいい話だった。
歴代彼氏の描写など面白い。
ラストの、冬子の反撃は迫力があってとても良い。
格好よさが嫌味になっていった海くんが、よりによって女装してる時に病院へ駆け込まされるのもいい仕打ち。 -
十月十日を過ぎても赤ちゃんが産まれず、三年が経過してしまうタイトル通りの話。京極夏彦のウブメの夏を連想してしまったが、こちらはミステリーではありません。それにしても食べ物の描写が多く、食欲をかきたてられてしまう。
-
読み終わって冬子三年身籠る意味がわからなかった。普通に生まれるまでの間十月十日で物語れるんじゃないの?
解説を読んで気がついた。周りの大人達に迎える準備ができていないということを。そこに気がつかないくらい、個性的なキャラが多かった。母親に対して辛辣な評価をする緑子が好き。 -
十月十日で産まれてくるはずの赤ちゃん。
でも、主人公はタイトルの通り3年の間も身籠ったまま、、、。
何というかなぁ、、、。
親の気持ちの都合で、お腹の中の赤ちゃんが3年間頑張ったって感じ?(笑) -
途中から斜め読み。
-
現代小説とSFがまじりあったような不思議な小説。