また次の春へ (文春文庫 し 38-14)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 1230
感想 : 83
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  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167905651

作品紹介・あらすじ

喪われた人、傷ついた土地。「あの日」の涙を抱いて生きる私たちの物語集。「俺、高校に受かったら、本とか読もうっと」。幼馴染みの慎也は無事合格したのに、卒業式の午後、浜で行方不明になった。分厚い小説を貸してあげていたのに、読めないままだったかな。彼のお母さんは、まだ息子の部屋を片付けられずにいる(「しおり」)。突然の喪失を前に、迷いながら、泣きながら、一歩を踏み出す私たちの物語集。

感想・レビュー・書評

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  •  久しぶりの重松清さんです。東日本大震災から12年、今年も被災者の方々へ想いを馳せようと、そしてタイトルの優しさに惹かれて手に取りました。

     本書は、独立した7篇からなる短編集で、全て主人公が何らかの形で震災と関係しています。
     大切な人や思い出の地を失くした人たちの、それぞれ続く日常の中から、決して消えない喪失感や気持ちの切り替えの葛藤を、丁寧に掬い取り温かな目線で描かれています。
     一編一編が、優しく愛おしい物語で、一気読みするよりは敢えて時間をかけ、読後感をかみしめたい気持ちにさせられます。何度も涙を誘われました。

     重松さんは、これまでも「希望の地図」「同2018」など、東日本大震災を扱った作品を刊行されており、被災地・被災者への想いも人一倍強い印象があります。自粛ムードが広がる当時から、奇を衒ったものでなく、徹底した取材を元に〝人の気持ち〟にいつも拘った作品を意識していたように思います。本書も間違いのないおすすめの一冊でした。

     毎年今の時期になると、震災関連の書籍を手にします。「想いを馳せたい」「寄り添いたい」と言うのは簡単だし、口にするのは傲慢だと判っているのですが‥。
     震災も人の心の復興もまだ終わっていないのだと、毎年思わされます。せめて毎年訪れる春に、「また次の春へ」と癒しと希望をもたれているよう願うばかりです。

  • 短編7作品収録
    東日本大震災絡みのお話でした
    なので明るい話ではありませんでした
    生き残った人たちはこれからも生きなきゃいけない
    過去を背負って
    そんなことを感じました

  • 「俺、高校に受かったら、本とか読もうっと」。幼馴染みの慎也は無事合格したのに、卒業式の午後、浜で行方不明になった。分厚い小説を貸してあげてたのに、読めないままだったかな。彼のお母さんは、まだ息子の部屋を片付けられずにいる(「しおり」)。突然の喪失を前に、迷いながら、泣きながら、一歩を踏み出す私達の物語集。

  • 東日本大震災を題材にした短編集です。泣かそうと思って泣かされるのは不本意だとつい身構えてしまう。でもやっぱり親子の愛情の話になると涙してしまう。
    『しおり』が1番好きです。中学の卒業式の後に幼なじみが行方不明になってしまう。15歳らしい目線で幼なじみの死を通して震災について考えていく主人公がよかった。

  • 東日本大震災を舞台にした7編の短編集。

    震災後、何度も被災地に訪れた重松氏。
    それぞれの短編に思いが詰まっていました。

    これからの未来に向けて。
    これもおすすめの一冊です。

  • 東日本大震災が大きな1つのテーマの短編小説。
    これまた会社の方にお借りした一冊。

    短編は苦手で、清く正しい国語の教科書的作品は苦手なのだが、これはサクサク読み進められた。

    家族が死亡ではなく、行方不明だった時、どんな風に事実を受け止めるのか。
    その立場にならないと絶対に分からないだろう葛藤がひしひしと伝わってきた。

    こういう正しいだろう正義の小説は苦手だが、そんな苦手視している私の心にも響くものがある一冊だった。
    さすが重松先生。

  • また春が来て欲しい。

  • 読んでないと思ったら、読んでました。六年前。

    胸にじわっときてハンカチを取り出し目元をぬぐう。
    故郷に帰れない人たち、故郷に変えることを諦めた人たち。今、少しでも微笑んでいますか?

    2016年4月18日 一回目 読了☆☆☆☆
    トン汁/おまじない/しおり/記念日/帰郷/五百羅漢/また次の春へ

    東日本大震災から1年半の間に書かれた七つの短篇たち。
    九州の地震で被害を受けた方々の気持ちが偲ばれる。崩れた建物や山の映像を見ると阪神淡路や広島の映像を思い出す。コンビニやコンサート会場で募金箱を目にすると、少しずつでも協力したいと思う。

  • 震災は、経験した人にしか分からない苦しみや喪失感がある。
    それでも何とか助けになりたいと思う人たちがいて、でもその手助けの方法や距離感の難しさもあって難しい問題だと思う。
    それが重松さんらしく丁寧に描かれていた。

    「記念日」の話がとても良かった。
    助けになりたいという子供達の純粋な気持ちや、担任の先生の気持ち、子供の気持ちを汲みつつ震災にあった方が傷つかないように考える両親の気持ちや、震災にあったおばあちゃんの気持ち、それぞれが優しい気持ちを持ってるのだけど、その表現や加減がとても難しいなと思った。
    おばあちゃんの対応に涙が出た。

  • 七篇の中では『記念日』が一番じんときた。

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著者プロフィール

重松清
1963年岡山県生まれ。早稲田大学教育学部卒業。91年『ビフォア・ラン』でデビュー。99年『ナイフ』で坪田譲治文学賞、『エイジ』で山本周五郎賞、2001年『ビタミンF』で直木三十五賞、10年『十字架』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『流星ワゴン』『疾走』『その日のまえに』『カシオペアの丘で』『とんび』『ステップ』『きみ去りしのち』『峠うどん物語』など多数。

「2023年 『カモナマイハウス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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