死神の浮力 (文春文庫 い 70-2)

著者 :
  • 文藝春秋
3.85
  • (416)
  • (859)
  • (525)
  • (67)
  • (13)
本棚登録 : 8768
感想 : 544
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167906474

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 死神の精度の続編。前作では短編集のような構成になっていた一方、こちらはほとんど千葉と山野辺のみの視点で一つの物語が進んでいく。本城という他人の苦しむ姿に喜びを感じる人間(いわゆるサイコパス)は、オーデュボンの祈りの城山やマリアビートルの王子など、これまでの伊坂作品でもたびたび取り上げられている。彼らの狡猾さは読むたびに絶望や苛立ちを感じる。しかし、「伊坂幸太郎ならきっと読者が絶望するような(サイコパスが勝利するような)終わらせ方はしないだろう」という信頼があるのでどんどん読み進められた。本城という「二十五人に一人」に対して、妻の美樹や箕輪、小木沼といった山野辺側の人間が裏切らずに立ち向かっていくのも良かった。思わず応援しながら読んだ。

  • 一作目とは違って1人の担当に焦点を当てた長編だった。一作目は連作短編集だったからか最初は少し手が進むのが遅かったかも。ただ、内容がだんだんわかってきて、本城さんの行動の怖さが明らかになってきた辺りからは一気に読んだ。

    内容自体は、私からしたら結構シリアスだったと思ったが、死神たちの的外れな返答がひょうきんに感じて、読んでる最中の感情も重くなりすぎなかったように感じた。

    山野辺夫妻がホテルに乗り込んだあと、本城さんすごくくどく攻撃するな、と思っていたけれど、読み進めたら、それだけ余裕があるに見えた本城さんを山野辺夫妻が追い詰めていたのかも、と感じた。


    同情や情状酌量なんて考えを持たない千葉さんが、最後、自転車を引っ張ってきて山野辺さんを後ろに乗せる場面、2人のために面倒なことをやったことになんだか感動して、少しうるっときた。

    中盤過ぎた辺りで、既に千葉さんは山野辺さんを可にすることを決めていたようだけれど、決して冷たいわけじゃなくて、千葉さんなりの山野辺さんに対しての労いのようなものなのかな、と思った。

  • 前作に比べて重い展開が続くが、いつも通りの千葉さんと山野辺夫妻のちょっとズレたやり取りが唯一の和みポイントで、クスッとできた。作中に出てきた“寛容”と“不寛容”の話については、色々考えさせられる。タイトルの“浮力”の意味も最後にわかり、読後感も悪くない。

  • 死神の精度が面白かったので、こちらも気になって読んでみました。やはり千葉のキャラクターが良いので、飽きずに最後まで楽しく読めます。終わり方も納得ができて好きでした。

  • 『死神の精度』を読んだので、本書に進む。今回は長編。ベストセラー作家・山野辺の娘がサイコパス・本城に殺害され、その復讐に燃える山野辺に死神・千葉が1週間の調査に訪れるという悲劇的な設定。なのだが、異化効果のおかげで読者は楽しく読めるのが、この小説の良いところ。憎々しさMaxの本城にも別の死神の調査が入っており、最後に死神の判定が(読者にだけ)爽快感を味わわせてくれた。『浮力』にはいくつかの寓意が込められているのだが、この物語の終盤の、山野辺と千葉の会話にニヤリとさせられた。

  • 人間には不可能な倍率で物を見たりすることができる設定。感覚の解像度が違う。そのズレが面白い。
    伏線回収が巧みなため、読みながら予想するのが楽しい。痛快。

  • 「娘を殺された夫婦と千葉の7日間!」と書かれたのを見て、刑事さんか弁護士さが被害者夫婦とともに真犯人を暴く、的な推理小説かな〜と読み進めていったら予想のはるか上。まさかの死神さんとの復讐劇だったとは!
    本城は、もう救いようのない奴だったけど、死神さんの「還元キャンペーン」のおかげで、最後に復讐ができて爽快でした!笑
    ちょっとズレてる千葉さんとそれに困惑する登場人物に何度もクスッとさせられて、クールだけどそこがなんか素敵で、好きになりました!笑
    伊坂幸太郎、面白い...これから伊坂幸太郎読みまくりたいなと思える作品でした。

  • 再読。死神の千葉さん第2弾。とある事件の犯人と復讐をする被害者、そこに千葉さんが巻き込まれにいって…。結構前に読んだので、忘れてる部分が多く改めて楽しめました。千葉さんとの言葉遊びはサイコーです。

  • このキャラ…本城…。
    マリアビートルの王子だ。
    そして千葉さん!相変わらずのおとぼけキャラで大好きです。カッコいいビジュアルを想像をしてしまう。
    ホントにホントのラストまで引っ張られました。
    ラストは…そうか。山野辺さんは…。

  • まじで大好き。千葉愛してる
    千葉とバディ組んで死神業したい

    p.24
    "寛容は自らを守るために、不寛容に対して、不寛容になるべきなのかどうか。"

    p.205
    "「敬意とは、面倒くさいことをする、ということを意味する」"

    p.365
    "「のっぴきならないんだ」「のっぴきならないですからね」"
    うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!

全544件中 61 - 70件を表示

著者プロフィール

1971年千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。2000年『オーデュボンの祈り』で、「新潮ミステリー倶楽部賞」を受賞し、デビューする。04年『アヒルと鴨のコインロッカー』で、「吉川英治文学新人賞」、短編『死神の精度』で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞。08年『ゴールデンスランバー』で、「本屋大賞」「山本周五郎賞」のW受賞を果たす。その他著書に、『グラスホッパー』『マリアビートル』『AX アックス』『重力ピエロ』『フーガはユーガ』『クジラアタマの王様』『逆ソクラテス』『ペッパーズ・ゴースト』『777 トリプルセブン』等がある。

伊坂幸太郎の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×