死んでいない者 (文春文庫 た 101-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 661
感想 : 50
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167912444

作品紹介・あらすじ

「とても大きな小説を読んだ」 津村記久子氏(解説)通夜のために集まった親族たちの一夜のふるまい、思い、記憶――傑作の誉れ高い第154回芥川賞受賞作。滝口悠生の代表作を文庫化!単行本未収録作「夜曲」収録。

感想・レビュー・書評

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  • ある通夜から紡ぎ出す、死んでいない者たちが、故人を送る時に、何を感じるのか。死んでいない者たちの様々なストーリーが紡がれていく。
    芥川賞を受賞した著者の代表作です。
    登場人物が多いので、頭の中で整理するのが難しかったです。解説で、津村記久子さんが、「こんな大きな小説は読んだことがない。」と、言われていたので、ストーリーの壮大さと、親族間の人間関係にも注目してほしいです。誰にでも訪れる死、死を迎えた人と、迎える人たちの厳かな濃密な1日を、感じてほしいです。

  • 亡くなった故人を偲ぶ為、通夜に集まった親戚のそれぞれ。故人と関わり、今なお生きている者達、生きていく者達との回想録。挽歌。登場人物が多く、認識するのが大変だった。まともと言われる者とはみ出し者、果たしてその線引きはどこで誰の基準で判断されるのか?それぞれの事情と語られることのなかった事実。どこにでもありそうで、どこにでもいる者達のどこにでもない物語。

  • 表題作は芥川賞受賞作品
    それともう1短編収録
    表題作は、死んだ男の通夜に集まった親族たちの
    一夜のお話
    男の子供たちそのまた子供たちと登場人物は多く
    とても把握しきれませんでした
    なんてことないお話と思っていますがでもそこに
    何かを感じることができるのかもしれない
    短編はママさんがやってる飲み屋のお話
    ママの過去がちょっと語られるがもっと
    深堀してほしかったかも

  • こう言っては失礼だが、、すごく面白い訳じゃないけど、何となく心に残る話だった。
    葬式で身内が集まって、不謹慎だかどことなくお祭り感のある空気が絶妙。
    ただ、登場人物が多すぎて、よく理解できなかった。相関図書けば良いっちゃ良いんだけど、サボった。

    同時収録されてる「夜曲」が良かった。本編に深みが出ている。

  • 一人の老人が亡くなりその葬儀に集まった親族達の様子を、それぞれの視点で何気ない一言や頭の中で考えていることが次々と描写されていく短編小説。

    登場人物達自身も、葬式の場で久しぶりに会う面々でお互いに「誰の家族か、何て名前だったか」という状態のため、次々と視点の主が変わるので「今、誰が話の主なのか」が時折混乱してくる。しかしそこで描写される情景は、何気ない過去の記憶(なのになぜか良く覚えている)に飛んだり、発した言葉の一瞬のうちによぎった思いだったりが巧く表現されていて、「こんな感覚、たまにあるよなあ」と思わされる。

    特に大きな事件が起こるわけでもない。全体的にゆったりと時が流れて行く話だが、そんな「たまにある感覚」を妙に楽しめる小説だった。

  • 死んで、居ない者 と 死んでいない=生者 のダブルミーニングのタイトルがぴったりだなぁと思った。

    大往生し子や孫が多かったある老人の通夜の後。身内だけが居残っていて、特に悲しみも感傷もなく飲んだり会話したりしている。
    その光景は自分の記憶のようにはっきりと目に浮かぶ。

    何も起きないがところどころにわずかなささくれがある。
    終始まったくシチュエーションは変わらず時間もほとんど進まない。
    なんというか、不思議な読後感だった。

    同時収録の「夜曲」もとあるスナックのとある時間帯で終始し、ところどころにわずかなささくれがある。この作家のスタイルなのだろう。

  • 初めての滝口悠生。芥川賞受賞作なことは知らずに手に取った。
    最初は、とにかく登場人物が多いことと通夜に集まったそれぞれの視点や記憶を行き来する書き方に戸惑い、また各人のエピソードが延々続くのに正直少し疲れた。ただ途中で、「この作品は誰がこう考えてる、どういう境遇にいる、ということが物語の筋に関係するものではないため、把握しなくていいんだ」と理解してからは、その渾然とした印象も含めて不思議な味わいを楽しんだ。
    その場に集まった人々にとっての、人生の中でのたった一夜の話で、しかもそれぞれにおいてそこまで重要ではない一夜。「親戚」という括りで繋がっているだけで普段はそこまでやり取りをしない人々は、葬式が終わればまたそれぞれの人生に戻っていって、この一夜も大した意味を持たずに日々に埋もれていくんだろう。
    ただ一方で本当の意味での「何でもない日」では決してなくて、その後の誰かの人生を変えるようなことはなくても、連なる日々の中の、「"何か"のあった一日」だったんだろうなと思う。
    個人的に、冒頭の「押し寄せてきては引き、また押し寄せてくるそれぞれの悲しみも~」の部分、方丈記や奥の細道のような古典文学の入りを思い出して好きだ。

  • なんとも言えない寂しさが残る感じ。
    生がある者としてみんな生きていく。



  • 文芸春秋
    滝口悠生 「死んでいない者」

    芥川賞受賞作を読んでみた


    葬祭の場で起きる 故人と親戚の追憶の物語。死から生を問うているようにも読めるし、親戚の滑稽さとしても読める


    主人公は誰なのか、話し手は誰なのか 不明のまま、親戚(死んでいない者)が 次から次と出てきて 故人との記憶をたどる展開。私には読みにくいが、玄人好みなのかもしれない


    最初の文章〜斎場からお通夜に至る悲しみの感情の変化の描写は見事だと思う。親戚たちについて「血のつながっていない配偶者たちもなぜかどこか似ている」というのも面白い



    自分の死について、それがなんなのかさっぱりわからないまま、刻々それに近づいている、あるいは近づかれている〜生きるとは結局その渦中にある連続


  • 絶妙である。
    お祖父さんが死んで、その葬式の一夜の話なのだが、その子、孫、ひ孫の様子や側面を少しずつ描いていき、一族の全体像が見えてくる。
    みんな本当は全然別の考えを持つ他人なのに、家族という雑な枠組みで集まってくる異様さ。
    葬式という厳粛な場だけど、非日常の祝祭感もある。
    爽やかさもある。
    こういう面白さがほんわか感じられるのが良い。

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著者プロフィール

滝口 悠生(たきぐち・ゆうしょう):小説家。1982年、東京都八丈島生まれ。埼玉県で育つ。2016年、「死んでいない者」で第154回芥川龍之介賞を受賞。主な著作に『寝相』『ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス』『茄子の輝き』『高架線』『やがて忘れる過程の途中(アイオワ日記)』『長い一日』『水平線』などがある。

「2024年 『さびしさについて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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