- Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167913410
感想・レビュー・書評
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ひとり旅立つ少年「音もなく少女は」イギリスの推理作家
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19世紀半ばのアメリカ。詐欺師の親子が「奴隷制度廃止運動のため」と称して巻き上げた大金を巡るロード・ノヴェルだ。開始早々、たった1人で行動することを余儀なくされた少年は、父が騙ったでまかせを実現するため遥かな地を目指し困難な旅に出る。それは贖罪ではない。プライドの問題なのだ。少女→犬→少年と追ってきたが、すべて期待以上の作品だった。すごいなテラン。最近ようやく入手した過去作も早く読まねば。
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【『音もなく少女は』『その犬の歩むところ』に続く感動作】悪党が狙う大金を奴隷解放運動家に届けるべく少年は一人でアメリカ縦断の旅に。非道の中の人間の尊厳を描き続ける巨匠の会心作。
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かくして、少年はおとなになっていく…。けれども、その道のなんと険しいことか…。一人で考え一人で悩み一人で決めて一人で傷つく…。ただ、それが出来て初めて「おとな」なのかもしれない…。
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ミステリーでは無いかもしれないが、少年の結末がどうなるのか 一気読み。
面白かった。この時代が今に繋がっているのかと思うと現在のアメリカの悩みは深刻やなー。
ボストン・テラン読もう。 -
19世紀半ば、人種差別が横行するアメリカ。父親の負の遺産を継ぎ、贖罪の旅を歩み出した少年の物語。
出会いと別れが少年の血肉となる。冒険小説としての躍動と、虚構と言い切れない問題意識。
読んで良かった。 -
南北戦争前、詐欺師の父がだまし取った金を、騙した名目の通り届けようとする少年の話。
タイトル通り「ひとり旅立つ少年」なんだけど、ゆく先々で助けられる。というか、少年というのはあまりにもか弱い。子供である以上、どうしても庇護が必要なのだ。
そのあたりが、切ない。
容赦なく、周りに振り回され、自分ではどうしようもできない、その過酷さが悲しい。
<まるで白人に見える黒人>というものの存在を始めて知った。
もう、こうなると真実なんて意味がないよね。
その意味のない世界で、父と自身の罪を贖うために歩き続ける彼は、尊い。
人間の尊厳とか矜持とか、そういうものを考えさせられる作品だった。
にしても悪役が怖すぎて…。まじ怖かった。 -
19世紀のアメリカ。奴隷解放運動は萌芽しているが、社会は苛烈だ。命の価値は軽く、人権は一部の権力者達のもので、普遍性はない。人権どころか、一部富裕層以外は人ですらない。
その頃、主人公の父親は詐欺師で、奴隷解放運動のためとしてだまし取った金を別の悪党に狙われ殺されてしまう。少年はだまし取った金を奴隷解放運動家に届ける旅に出るが、それは金を狙う悪党から逃げる旅でもあった。
自らが白い黒人として奴隷にされたり、悪党を撃ち殺したり・・・。少年が成年へ成長する過程で支払った対価は大きい。聡明な少年の視線を通して見る19世紀アメリカの風景が静かな筆致で描かれ、読み手の心も静かに満たされていく。