雲を紡ぐ (文春文庫 い 102-2)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167919320

感想・レビュー・書評

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  • いじめに遭い人間関係を上手く構築出来なくなった女子高生、そんな娘にどう接すればいいかわからず仕事も上手くいかない夫婦。彼らが娘が家でしたことをきっかけに、自身や家族のあり方を見つめ直す話。

    正直、娘さんは年齢の割に幼く感じられてしまったし、母親の書き方はオーバーに感じられたけれど、人間関係の摩擦やその対応はデジャブを覚えるほど身近なもので理解しやすい。何より「おじいちゃん」のキャラがとても良くほっこり、最後は感動しつつ読み終えた。
    ただ、娘さんは、支えられていることをもう少し理解してくれるといいな。

    誰もがこの本の娘さんのようになると大変だけれど、こういう人がいても支えられる社会であるといい。

    やっぱり、宮沢賢治は偉大だった。

  • いまの美緒ちゃんなら大丈夫、あせらなくていい、お父さんとお母さんも、きっと今の形が二人にとって居心地の良い距離感になるだろう。
    おじいちゃんの言葉、私の心にもスンと届くものがありました。

    子供の頃に読んだかなー、ぐらいの記憶しかない、宮沢賢治のお話ももう一度読んでみたいと思った。

  • 上手く言葉にできませんが、とても良かったです。
    最近の小説にしては物語の展開がゆっくりしていますが、登場人物たちにもそれだけの時間が必要だったことが、最後まで読めば分かります。
    岩手県の町並みや自然の描写も良く、訪れてみたくなります。
    また、作中に登場する宮沢賢治の「水仙月の四日」を私は読んだことがなかったのですが、是非とも読んでみたくなりました。
    派手さはなく地味な部類の小説かもしれませんが、静かに感動した作品でした。

    なお、文庫本の解説は、先日亡くなられた北上次郎さんが書かれており、作品に対する愛情が感じられました。

  • 高校生の娘、美緒が友達との人間関係に疲れて不登校に。美緒は岩手でホームスパンを作っている祖父のところで修行を始める。
    親子三世代、それぞれの親子の繋がりが丁寧に描かれており、私は母親の真紀さんに近いと思いながら読んでいたが、どの世代の人にも共感できるところがあると思う。
    岩手の自然やホームスパン作りの工房について、知らない世界を知ることも楽しい。

  • 夢中で読みました。仕事サボってカフェに直行したいくらい。
    登場人物は皆善良で、正に読書は癒やし。
    舞台が盛岡というのもタイムリーでした。

  • 2022年に読んだ数多くの本の中で1番大好きで大切な本です。
    おじいちゃんの言葉一つ一つに、何度も何度も心を打たれました。
    普段本に付箋などは貼りませんが、大切なページに付箋をして何度も読み返したいと思ったほどです。
    友人にも貸しましたが、大絶賛しており、「自分で読み返したいから購入しようと思う」と言っておりました。
    とても大切で温かい言葉で溢れている本です。

  • 思春期に学校での悪口(虐め?)に悩み不登校となり青森の祖父の元を訪れ染め/織物を経験しながら今後の道を悩む美穂の生活を描く。

    両親、祖父母其々悩みを抱えながら個々の考えで今後の美穂の道を導こうとするが、その中で美穂自身も悩み染め/織物の世界に没頭する。其々の道で離れて生活していた家族が最後は祖父の死、美穂への想いから気持ちが通じ合い其々新たな道を進む。

    現在一般的な郷土を離れ東京で働く家族の生活の中での問題を疎遠となった青森の風土/伝統工芸に携わる人達のとの再会から相手を思いやる気持ちを思い出し再出発する内容は考えさせられた。

  • ホームスパンと呼ばれる手紡ぎの羊毛織物とそれが生み出される岩手という土地を舞台に繰り広げられる家族とバトンのお話。

    主人公は高校生の美緒という少女。
    東京で父母と一緒に暮らしていたが、家では母の顔色を窺い、父は無関心。
    そんな家庭であったから学校でも周りに受け入れられようと必死に振舞っていた。
    そのためにはいびつな微笑の仮面も身に着けて。
    しかしそれでもある日、学校の同級生からいじめを受けて初めは耐えていたが、いつか心が持たなくなり、引きこもりになった。

    家にも学校にも居場所はなく、ただ絶望の殻の中にいた。
    そんな時に唯一自分を現実に引き留めてくれたのは、美緒が生まれた時に父方の祖父母が手紡ぎし贈ったという赤いショール。
    それにくるまれているときだけ、心底安心できる。
    これが作られた場所・人はどんなところなんだろうと夢に見ていた。

    そんなある日、母がそのショールを捨ててしまった。
    怒りに駆られた美緒は、家出を決行する。
    目指すは夢に見た土地、岩手の工房。

    そこから新しい人生が始まる。

    という始まりの小説。

    導入だけでも引き込まれるが、岩手に行ってからの本書の魅力はかなりの物。

    おじいちゃんが完璧すぎて、笑えてくるレベル。
    文化、芸術に精通し、教養深くて、センスも抜群。
    そして仕事には誇りと矜持を持って臨んでいる。
    これが本当に豊かな人なんだろうと思えた。

    おじいちゃんの人柄だけでも読む価値があるが、
    物語もとても面白い。
    完全に積んでると思われた美緒の家族も、
    美緒が岩手に行ったことで変化が起こり、
    かけがえのない関係になっていく。
    というのも凄く良かった。

    久々に読んだとても良い小説です。

  • ホームスパン
    毛糸を紡いで、布を織る。
    その中で 自分を見つける。

    盛岡の街の素晴らしさを思い出します。

  • 羊毛の感触、鉱物の光など表現がとても綺麗で癒されます。主人公はきっとHSPで、繊細過ぎて周りに振り回されて疲れてしまうんだと思います。そんな繊細な心を持った美緒が職人の仕事を目の前にしたとき、どう心が動かされていくのか。父と母と和解できるのか。とても楽しんで読むことができました。太一くんが作ってくれる羊のマスコットがどんなものか見てみたい、きっと可愛いにちがいない。あと、カフェで食事するシーンが多いのだが、食べ物の表現とかが美味しそうで、ぜひ行ってみたい。

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著者プロフィール

1969年三重県生まれ。中央大学法学部卒。出版社勤務を経て、2008年「風待ちのひと」(「夏の終わりのトラヴィアータ」改題)でポプラ社小説大賞・特別賞を受賞してデビュー。第二作『四十九日のレシピ』が大きな話題となり、テレビドラマ・映画化。『ミッドナイト・バス』が第27回山本周五郎賞、第151回直木三十五賞候補になる。このほかの作品に『なでし子物語』『Bar追分』『今はちょっと、ついてないだけ』『カンパニー』など。あたたかな眼差しと、映像がありありと浮かぶような描写力で多くのファンを持つ。

「2020年 『文庫 彼方の友へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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