ハトシェプスト: 古代エジプト王朝唯一人の女ファラオ (文春文庫 ビジュアル版 60-45)
- 文藝春秋 (1998年6月1日発売)
- Amazon.co.jp ・マンガ (242ページ)
- / ISBN・EAN: 9784168110481
感想・レビュー・書評
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山岸涼子3作目。
夜叉御前よりは面白かった。この人は、歴史物のほうがストーリーがわかりやすくて好き。
◾︎ハトシェプスト
紀元前1500年ごろに古代エジプトに実在した女王ファラオの話。
一部が、夫であり異母弟・従弟でもあるトトメス2世を毒殺して、王位を継承するまでの話。
二部が、幼少期の話。なぜ彼女が将来、従弟を殺して妹をも殺し、王位に就くことに決めたのかを説く。
古代エジプトには、泣き女という職役があったり、異母どうしの血縁者だったら結婚できたり、実はハトシェプストは怖い女王だったりして、結構、ヘェ〜がいっぱいあってよかった。
トトメスは妾腹の息子、アメンホテップは嫡男。妾腹の息子が王位に就くには、正室の娘を妻に娶らないとなれない。日本の古代人になんか似てるし、エジプトに行ったらトトメスやらアメンホテップやらいっぱいいるから、この知識だけで少しは関係がわかっていい。
・トトメス1世…ハトシェプストの父
・ワジモーズ…ハトシェプストの兄で、戦死
・アメンモーズ…ハトシェプストの兄で、トトメス2世の母でもある第二王妃に毒殺される
・メリエト…ハトシェプストの妹で、トトメス2世の妻。ハトシェプストに殺される
・トトメス2世(ケペルエンラー)…ハトシェプストの異母弟・従弟・夫。ハトシェプストに毒殺される
◾︎キメイラ
ギリシャ神話上の聖獣だとか。怪物でもあり、聖なるシンボルでもあり、要は悪魔でも天使でもあるということ。
女かと思ったら男だったり、動物に優しいかと思ったら老夫婦殺害の異常な殺人鬼だったり、その狭間で苦しむ一人の人間を描く。
うーん、深い。誰しも善悪の面を持ってて、一度は正しいとわかっているのに間違いを犯して(あるいはその逆も)しぬほど苦しんだことってあると思うけど、まるでそれを極端化したようなストーリー。だから聖獣なのかね。
◾︎スピンクス
古代エジプトの王の威厳を象徴する聖獣ではなく、ギリシャ神話のほうの怪物として描かれる聖獣。こっちをモチーフにしている。
息子を溺愛して狂い死んだ母と、それがトラウマになって母親の束縛から心まで囚われの身になってしまった息子の話。うーん、わかるようで怖い。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ハトシェプストⅠ・ハトシェプストⅡ・キメイラ・海の魚鱗宮・スピンクス
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再読。 特に印象的なのはやっぱりハトシェプストだな! 兄に愛する父をとられるものの、「男でありながら女」としてファラオの座を掴もうとするハトシェプストと、妹に愛するハトシェプストをとられ、寵愛を受けることも叶わず狂うしかないメヌウ。前回読んだときも結局感想が書けずじまいだったけど、やっぱり今回も言葉が出てこない。山岸さんの歴史ものはいいな〜、これに尽きる。
何と言ってもハトシェプストの色気がすごい。。「日出処〜」の厩戸がだぶる。 -
収録作は……
(1)ハトシェプスト1
(2)ハトシェプスト2
(3)キメィラ
(4)海の魚鱗宮
(5)スピンクス
終盤ワーッと謎が解ける「スピンクス」が圧巻。 -
表題作は古代エジプトの女王ハトシェプストの話。
IIが彼女の幼少時代で、Iでは夫のトトメス2世を殺害して王位に就く。
前者については、ファラオは基本的に男性がなるものなので、ハトシェプストの自分の性への苦悩がよく描かれていると思う。
後者は霊能力姉妹のうちのクレタ系美人な妹と男装麗人なシェプストがレズビアンな関係になってたな。
まあ山岸先生だしね。
あとこの妹が擬似処刑で死んだ時の「イメージで血を止める者はイメージで死ぬ」というセリフが印象に残った。
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エジプトの神話・伝説をモティーフにした山岸涼子作品集。
半陰陽の人物をモティーフにした『ハトシェプスト』『キマイラ』に描かれる“性”の苦悩と神話的な聖性、『スピンクス』はモローやレオノール・フィニのそれを連想させるヴィジョンと共に、心理学的な要素が面白い。古代エジプトの衣装・文化等、判る範囲でしっかりと調べ、描かれているので、読んでいて惹き込まれる。 -
表題作もイイですが、『スピンクス』がすごい!!少年の壊れた精神世界が・・