ジブリの教科書3 となりのトトロ (文春ジブリ文庫 1-3 ジブリの教科書 3)

制作 : 文春文庫編集部 
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  • Amazon.co.jp ・本 (335ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784168120022

作品紹介・あらすじ

森へのパスポートはどこ?あのへんな生き物って、そもそも何なの? あさのあつこ、半藤一利ら豪華執筆陣が、不思議な魅力に満ちたトトロの秘密を解き明かす。

感想・レビュー・書評

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  • 宮崎駿のロングインタビューが必読。
    トトロが「存在しているだけで」サツキとメイは救われているんだ、という言葉を、実際に映像で細やかに実現する苦労はいかばかりだったろうか。
    その生真面目さと優しさと観察眼の厳しさ。
    大塚英志がトトロを、ウィニコットの移行対象……ライナスの毛布に譬えている。
    ここ数年で「ドラえもん」や「トイ・ストーリー」やで感じたのだが、思春期以前の「あの感じ」を追体験させてくれる作品に、弱くなってしまったなあ。



    ナビゲーター・あさのあつこトトロのとなりで。──少女の解放の物語Part1 映画『となりのトトロ』誕生
    スタジオジブリ物語『となりのトトロ』編
    鈴木敏夫 二本立て制作から生まれた奇跡・viewpoint・半藤一利
    大きな忘れ物Part2 監督が語るトトロの世界
    宮崎 駿 トトロは懐かしさから作った作品じゃないんですPart3 『となりのトトロ』の制作現場
    [美術]
    男鹿和雄 「ここまでやったのは、初めてですね。ずいぶん修業になりました」
    [原画]
    二木真希子 「やってる時はいつも、もういやだって思うんですよ」
    [仕上]
    保田道世 「優しくて透明感のある色が欲しいとオリジナルの色の絵の具を作りました」
    [録音演出]
    斯波重治 「『ナウシカ』『ラピュタ』以上に神経を使ったところも」
    [音楽]
    久石 譲 「日本が舞台でも あえてそれを意識しなかった」
    宮崎 駿×糸井重里 読者とか観客をちゃんとやれる人って少ないですよ、いま
    宮崎吾朗  「マックロクロスケ出ておいで!」の家
    宣材コレクション
    映画公開当時の新聞記事を再録!Part4 作品の背景を読み解く
    中川李枝子 鈴木さん・宮崎さん そして トトロと 私
    川上弘美 涅槃西風(ねはんにしかぜ)
    鎌田東二 鎮守の森から見たトトロ論
    from overseasピート・ドクター トトロから学んだこと
    小澤俊夫 昔話の語法から見た『となりのトトロ』
    藤森照信 人間の住まいに、お化けはどう住んだか
    長島有里枝 トトロの中の家族の記憶
    蓬田やすひろ 鏑木清方と『トトロ』の絵づくり
    平松洋子 追憶のかなたで輝く味
    淀川長治 私の、トトロ!
    大塚英志 『となりのトトロ』解題
    出典一覧
    宮崎駿プロフィール
    映画クレジット

    ■あさのあつこ。薪を持ったサツキ、風、あっネコバスだ。あなたも子供時代美しく生きていたのですよ、と。サツキがトトロの胸で泣き崩れたとき、ほっとした、これでこの子は壊れずに済む、トトロに会わなければいつか自壊していた。
    ■鈴木敏夫。オバケとお墓ではダメだ。ということで配給先が難航。近藤喜文の取り合い。併映でどちらも60分の予定。高畑勲が80分越えると知り対抗して、分かった姉妹にすればいいんだ、そうすれば話が長くなる。ポスターはひとりのまま。
    ■宮崎駿。近代化しきれない過渡期のお化け。中尾佐助の照葉樹林文化論。雲南、ネパール、ブータンとか、ふっくらしたお米。源氏物語や秀吉といったくだらない歴史と思っていたが、壮大な、国や民族を超えた世界とのつながりを感じて、解放された。それで植物や風土が大事で、風土を壊すと最後の日本人への引っかかりがなくなる。森の暗さ、恐さ、アミニズム。トトロはサツキを助けたのではなく、サツキかわいい、メイなんてすぐ近くじゃないか、じゃサービスしてネコバスで連れて行ってやった。あのバス停、雨は気にしていない。葉っぱを頭に乗せているのは、音がいいから。サツキが貸してくれた傘を、なにかすてきな楽器だと思った。夢だけど、夢じゃなかった、という台詞を、サツキはともかくメイが言うのは失敗だった。パンダコパンダ。宮沢賢治のどんぐりと山猫。ネコバスは、もののけがバスを見て面白そうだからマネした。トトロも縄文人から縄文土器を習って、江戸時代に遊んだ男の子のマネをしてコマ廻しをしている。トトロが「存在しているだけで」サツキとメイは救われている。迷子を見つけるときに手助けしてくれたけど、あのときトロロが一緒に行っちゃダメだ。ラピュタはやっぱりあった、それだけでいい。走るという動きへのこだわり。母とのスキンシップ、4年生になれば抱きしめるとかではなく、髪を梳くという儀式が、サツキにとって大事。ずっと母代わりをして妹の世話。一度くらいどなって泣いてということをしないと浮かばれないと思った。だからエンディングの止めの絵では、お母さんが帰ってきたから安心して、普通の子供にまじっている、顔も他の子に似てどれがサツキかわからないくらいで、それでいんだ。お気に入りは、サツキがどなったあと、別々の部屋でただ寝ている場面。子供にとっては経っていられないほどで自己防衛で寝る。その後おばあちゃんの前で泣くサツキを見て、メイは初めてこれは大変だとわかる。あのときおばあちゃんが、トウモコロシを持っていけばお母さんは元気になると言っていた、お母さんが大好きなメイが取ったものだからきかないわけがない、と。ああいうことはみんな子どもの時に一度や二度は経験しているんじゃないか。
    ■男鹿和雄。美術監督。緑と茶。透明感と色の反映。土の色は関東ローム層の赤土。月光と雨。時間経過を背景で。
    ■宮崎駿、糸井重里との対談で。二歳半から五歳までなんだな。孫に対しては演技的にでも、恐ろしくて不思議で不気味なクソジジイになりたい。
    ■鎌田東二。メイはシャーマン的な交通、サツキはプリースト(司祭)的な交通によって、トトロと交信した。カミとは超すごいモノであって、日本人の霊的ファイルをすべてとりこむ霊的フォルダ。ルドルフ・オットーのいわるる聖なる体験ヌミノーゼ、畏怖(コワーイ)と魅惑(ステキーッ)という両極感情を生起させる存在が森のヌシ神トトロ。ここで南方熊楠と宮沢賢治の「生態智」。1、日本のカミガミの原風景としてのトトロ、2、日本のカミガミの弱体化と蘇りを希求する千と千尋、3、日本のカミガミの死と時代の苦悩としてのもののけ姫。さらにナウシカのマンガは旧約聖書的・黙示録的に深い苦悩の中で救済を待ち望む、アニメは新約聖書的・顕示録的に救いが実現する。
    ■小澤俊夫。昔話。唐突に現れる彼岸的援助者は、主人公と外的には離れ、内的には同じ次元の中にいる。無時間制。トトロは自然からの来訪者。それも日本的な。
    ■藤森照信。トタン葺き屋根は1960年代に始まったやり方で、日本の農村の緩慢な死を告げる合図だった。住まいは、自分の内面の、言葉と意識の届かぬ底の建築。役所学校オフィス銀行教会神社を意識の建築というなら、住まいは無意識の建築で、本性は安定と持続にある。和洋並置式住宅は、明治文系階下で成立し、大正、昭和前期に根差した。少し上流の、なんとなくの洋館。ススワタリは天井裏、小トトロらは縁の下に、無意識の領分。
    ■大塚英志。トトロと火垂るは併映。互いに互いの批評になっている。兄あるいは姉と妹。父は不在ないし不在がち。母は病気がち。火垂るでは母は死に、トトロでは回復の予感。火垂るでは妹を守れず、トトロでは迷子になっても無事。サツキは母に髪を梳かしてもらうのが好き、火垂るでは兄が櫛で髪を梳く。トトロではマックロクロスケをパチンと捕獲する→トトロのような何かがいると解説、火垂るでは蛍を両手で捕らえるが、蛍の死骸に妹はああと嘆く。突き詰めると、火垂るは死のある世界、トトロは死のない世界。だが排除されたからこそ、またトトロ→火垂ると見たからこそ、ネットに都市伝説も。ラピュタと同じく、子供がちゃんと大人に守られている世界。高畑勲はトトロとは違う方法で、ある種のファンタジーや寓話を描こうとしている。アニメーションでは、分解、分析、抽象、再構成、総合具象化して、再印象させる、と。これはロシアアヴァンギャルドや未来派・構成派。トトロで宮崎駿が執筆したのは、「走る」という運動の抽象化と再具象化。サツキは、陰影を内面に持っているが、でもいまは、すぐ走りたがる脚とキラキラした感受性のままに生きている。走るのはサツキの内面の表象であり、現在の本質。内面は身体によって表現されるのだ。火垂るでは走るという行為を奪われている。トトロは、1、ひとりでいるときにやってくる、2、基本的に役に立たない、3、そばにいてくれると安心する。ウィニコットは移行対象と呼び、シュルツのスヌーピーにおいては「ライナスの毛布」となった。いわゆる空想の友達も移行対象の一例。この先宮崎はトトロのいる世界を描き、高畑勲はトトロのいない世界を描く。ライナスの毛布は大人になる中で、きちんと忘れられなくてはいけない。ジジもそうだ。だから「めいとこねこバス」にサツキは登場しない。サツキは魔女の宅急便へ。

  • 気になっていたジブリの教科書。
    まさに教科書でした。

    制作秘話。
    監督インタビュー。
    美術、原画、仕上、録音演出、音楽担当の方のインタビュー。
    宮崎監督とお父さん役の糸井重里さんの対談。
    宣材コレクション。

    読んでいると「となりのトトロ」が見たくなると同時に、「火垂るの墓」のことも知りたくなってくる。
    同時上映だったこの2作品を比較する話がとても多かったから。
    「火垂るの墓」の教科書も読みたいな。
    あ、あと「パンダコパンダ」が見たくなった。

    「となりのトトロ」は宮崎監督の作品の中では1番好きな映画。
    インタビューなんて読まなくても十分楽しめるんだけど、好きなものの話って楽しいだけじゃなくて嬉しいからやめられない。

    大好きな作品のことを知りたい!という知的好奇心を満たしてくれる教科書。
    こういう教科書なら授業の進行を待たずに読み切れる(笑)

  •  美術の描き込みの細かさや子どもの動きのリアルな表現に大人になってから気づき感動した。本書でも何度観てもワクワクする、楽しめるという声が多く掲載され、深読みせず難しいことを考えずに楽しむのが一番な作品だと実感。糸井さんとの対談は前回読んだ時はほぼ理解できなかったのだが、少しわかるようになっていた。「となり」という関係性が良い。観賞後に涙した理由、感動した理由を自分に問いかけることを日頃からしてはいたけれど、もっと意識的に考えよう。

  • トトロについて、制作者へのインタビューや考察、ゆかりのある人たちのお話など。こんなにもいろんなことを考えて作られているなんて。おもしろい。子どもの頃にトトロに出会えてよかった。こういうアニメがあってくれてよかった。ちょっとこの休みにまた観ようと思う。トトロはいるんだ、たぶん。

  • 制作の裏側や作品の考察が書かれている本。制作陣のインタビューは見る価値あります。

  • 藤森先生の「人間の住まいに、お化けはどう住んだか」論。和洋併置式の家の話を読んでいて、築60年の実家の洋室もけっこうモダンだったかも…と思ったり。

  • 先入観とは恐ろしいもので、本書カバーは宣材ポスターなのだが、トトロの隣に立っているのがサツキでもメイでもない「一人の少女」であることに初めて気付かされた。鈴木プロデューサーの制作秘話は面白かった。元は女の子は一人だったが、同時上映『火垂るの墓』の上映時間延長に対抗して姉妹にしたという話が可笑しい。単なる郷愁ではなく、時代時代の子ども達へのメッセージとして描かれたトトロという視点で今度は見てみよう。宗教学者、口承文芸学者の解説は穿ち過ぎて冗長な面もあるが、違う角度からのアプローチは興味深い。

  • おもしろい!色んなプロのかたがそれぞれ色んな視点から観ている、それをその人の言葉で書かれていて本当に面白く興味深い!ますますトトロが好きになった。

  • <閲覧スタッフより>
    『新世紀エヴァンゲリオン』、『千と千尋の神隠し』など。あのアニメの主人公やあのアニメ監督の心の動きが分かります!
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    所在記号:文庫||778.7||シフ
    資料番号:10220967
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  • うーん、宮崎 駿が理屈を積み上げて考えて作られているお話だけに、いくらでも、難しいことを話せるのですが、難しいことを話せば話すほど、嘘くさくなって離れているのが面白いですね。

    トトロを見た子どもって、これをそんなに昔の話としてではなくて、割と今の近くにある話(まあ、近くなくても車でちょっと行けば見つかるような場所)のとして受け止めているのだと思います。
    多分、そうでなければ、のめり込めない。

    でも、そんな風に受け止められない、まったく意味がわからないという世代が、もしかしらもうすぐ出てくるのかもと思ったりもします。

    ポスターの女の子はダレ?

    という話とかが、とても面白い。
    言われてみるまで、まったく気づかなかったです。

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