半藤一利と宮崎駿の 腰ぬけ愛国談義 (文春ジブリ文庫 3-2)

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  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784168122019

感想・レビュー・書評

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  • 知らないお話しが沢山あって面白かった。
    風立ちぬ、もう一回見るか

  • "歴史探偵"半藤一利とジブリの宮崎駿監督の対談本。"風立ちぬ"上映後の対談ということで、同作の舞台でもあった関東大震災~戦後すぐくらいの昭和初期の思いで語りが中心。お互い好きだという夏目漱石についての語りもあり。タイトルから連想されるような零戦・戦艦長門、日本海海戦の裏話あたりのミリタリーねたもあるけれど、それも昔語りの中の一つという感じかな。個人的には昔の東京下町の風景などお二人(&ご両親etc)を通してみる昭和の姿が興味深かった。東京大空襲で他人に助けられた半藤少年と、関東大震災で突き放された堀辰雄の対比も心に残る。

    タイトルは半藤氏のコメントから。お二人の反戦・日本人観は共感できるところもあれば、それは老人の戯言・先を観ない理想論だよと思うところもあるけれど、少なくとも、日本人は自分のことを見つめなおして、変に偉ぶるでなく、地に足をつけて生きていくことを考えた方がいいのかなと個人的にも思う。

  • 半藤さんと宮崎さんの対談となれば きっと面白いだろうと思いましたが やはり面白く読めました。
    対談とかは苦手ですが このお二人の話題は面白く 退屈せずに読めました。

    こういうのを読むと 半藤さんが亡くなったのは 本当に残念です。
    日本の過去を知りそして未来を考える人が もっと沢山いて欲しいですね。
    宮崎さんも 半藤さんのように 過去を調べて 考える人なので 半藤さんの 思いを引き継いでいって欲しいですね。

  • とにかく飽きない両者の対談。直ぐに読み終わってしまった。

  • 「半藤一利」と「宮崎駿」の対談を収録した作品『半藤一利と宮崎駿の腰ぬけ愛国談義』を読みました。

    『風立ちぬ』を観て、『零戦 その誕生と栄光の記録』を読んで、零戦のことや「堀越二郎」のことを、もう少し知りたくなったんですよね。

    -----story-------------
    世界の「宮崎駿」×歴史探偵「半藤一利」が語り尽くす!

    『崖の上のポニョ』ぶりの「宮崎駿」作品として話題を集める『風立ちぬ』の主人公は、ゼロ戦設計士「堀越二郎」がモデル。
    世界の「宮崎駿」が書生となって、敬愛する「半藤一利」と語り下ろす。

    「宮崎駿」監督が「かねてからお目にかかりたかった」という昭和の語り部「半藤一利」さん。
    「漱石好き」という共通点からふたりはたちまち意気投合。
    「宮崎」作品最新作『風立ちぬ』で描かれる昭和史をたどりつつ、持たざる国・日本の行く末を思料する―7時間余にわたってくり広げられた貴重な対談を完全収録した、オリジナル作品。
    -----------------------

    初体面の「半藤一利」と「宮崎駿」が、大正~昭和初期の時代や、『風立ちぬ』について、自由気儘に語った対談を収録した作品です。

     ■第1部 悪ガキたちの昭和史
      共通点は漱石好き
      隅田川の青春と朝鮮戦争
      日露戦争と建艦競争
      狙われた半藤少年と「宮崎飛行機」 他
     ■第2部 映画『風立ちぬ』と日本の明日
      3・11のあとで
      気の強い母・遊び人の父
      とっつきづらかった堀辰雄
      遅れてきた軍国少年の涙 他

    初体面とは思えないほど対談内容が盛り上がっており、読む立場でも愉しむことができました。

    東京の下町で少年時代を過ごしたり、「夏目漱石」好きだったり、兵器(軍艦と戦闘機の違いはありますが… )好きだったりと、二人に共通点が多いことから、対談が始めって直ぐに打ち解けて、意気投合したようですね。


    大正11年のワシントン軍縮会議で建艦競争が停止となったことから、工員や鉄が大量に余り、それが橋の博覧会とも言われる隅田川の立派な橋の数々になったことや、

    ドイツは黄禍論の本場で、日清戦争での三国干渉主導や、日露戦争でロシアの味方だったこと、そして第一次大戦では日本とは敵国同士、第二次世界大戦では仲間だったはずのヒトラーが『我が闘争(マインカンプ)』では日本を卑下している… そのあたりの事実から、実はドイツ人は親日家ではないということ、、、

    等々、なかなか印象深い対談内容でしたね。


    『零戦 その誕生と栄光の記録』の読後に感じた、『風立ちぬ』に登場する「堀越二郎」と、『零戦 その誕生と栄光の記録』の「堀越二郎」に違いや違和感については、本書を読んで解決、、、

    『風立ちぬ』の「堀越二郎」は、「宮崎駿」の創作人物で、「堀越二郎」と「堀辰雄」と「宮崎駿」の父親… 三人の要素が織り込まれて創られた人物だったようです。


    タイトルの"腰ぬけ愛国談義"ですが、二人の対談の以下の部分からネーミングされたようですね。

    ≪半藤≫
    「日本は脇役でいいんです。
      小国主義でいいんです。
      そう言うと、世には強い人がたくさんいましてね。
      そういう情けないことを言うなと、私、怒られちゃうんですがね。」

    ≪宮崎≫
    「ぼくは情けないほうが、勇ましくないほうがいいと思いますよ。」

    ≪半藤≫
    「腰ぬけの愛国論だってあるのだッ と声だけはちょっと大きくして言い返すのですがね(笑)。
      へっぴり腰で。」

    ≪宮崎≫
    「ええ、ほんとにそう思います。
      いいですね、腰ぬけ愛国論か…。」

    これって本当に同感です。

    勇ましくしようとして失敗したのが、第二次世界大戦までの歴史ですからねぇ… これからも腰ぬけで良いと思います。

    この会話が印象的で、イチバン共感できる内容でしたね。

  • 宮崎駿の対談なんて面白いに決まってる。一言一言がワクワクするし、聞き逃したくない。一瞬で購入を決めた。

    駿が対談相手に選んだという半藤さん、私は存じ上げなかったのだけど、著者紹介に2021年1月永眠とあって、つい最近のことでなんだか悲しくなった。帯にも「追悼」とあるもんね。
    この本を読んでいる途中、最近たまたま録画していた山本五十六の特別番組を見ていたら、半藤さんがVTR出演されていて驚いた。対談から受ける印象そのものの、お上品そうな?おじさんだった。

    2人とも好奇心旺盛で中身が若く、謙遜して相槌を打っているように見せながら知識披露合戦を繰り広げている。

    p25
    2人とも漱石のファンらしく、『こころ』について半藤さんが「遺書が長い」と言っていて笑った。やっぱり思うよね、あれは遺書の文量ではない(笑)
    実は志賀直哉のためだったとは。

    『風立ちぬ』エピソードは興味深い。最近じっくり見て、大人向けのいい映画だなと思っていたから。
    戦争の話にもなって、そういえば駿は飛行機が大好きだったの思い出した。
    p40
    「艦橋」って初めて知ったけど、そういえば軍艦て、よくわからないものがデコボコうず高く積まれているイメージ。あれがただ見栄を張りたいだけだったとしたら、相当アホらしい。係長がいっぱいいる町役場って例えがぴったり。
    p54
    「五機つくって南方に送っても、着くのは一機だけ」「五機同士でアメリカと日本の飛行機がすれ違うと日本は一機だけ残って、向こうは一機が薄い煙を吐くだけ」
    戦時中でさえみんな日本は負けだと分かっていたのに、なんで戦い続けるんだろう。いやそもそも、開戦前から勝てると思ってたのだろうか…

    p66
    日本は自分の国をそもそも守れないそうで、守れないとなったら攻撃するしかない、「攻撃こそ最大の防御」だということで侵略主義に…ということらしい。ところが資源もないのでどのみち負けなんだそう。
    勝つ負けるの問題ではないけれど、負けると分かっていても侵略だの攻撃だのって、いつか報われるとか、頑張ればもしかしたら戦勝国となり得るとか考えていたのだろうか…
    安直で、愚かで、頭の中お花畑だなと思う、今の日本も。

    p71
    「いまもそうですが、この国は責任者というものがわからないような仕組みになっているんです。」
    それは責任者と言えるのか?むしろ部下に押し付けたり、丸投げだったり、放置したり。自分の方が給料も待遇も良いはずなのに、後輩や部下を助けようとしない。でもそういう人は自分で自覚しているはずで、自信もないし罪悪感を感じているはず。必ず、相応の罰が下る。

    p77
    お二人によると、この先日本が世界史の主役になることはなく、脇役でいいそうで、強い人からしたら情けなく、勇ましくないように見えるが、そういう「腰抜け愛国論」というものもあるのだと…それでタイトルの意味が分かった。

    p82
    ジブリがデジタルになった理由が、フィルムだとお金がかかるからだったなんて。現像所も少なくて、フィルムの質を保つのも難しいと…フィルムカメラとデジカメのようなものか。最近そういえばBlu-Rayで作品を販売していたのも、劣化防止がきっかけだったのかな。
    クリエイティブな仕事をしている人は、高齢になっても常に時代に合わせて最先端を取り入れていかざるを得ないこともあるんだなぁ。

    p90
    半藤さんの父は、太平洋戦争が始まった日に日本は負けると予想していたらしい。それも大声で吹聴していたらしく、近隣住民に密告されていたとか。区議会議員だったからすぐに釈放されたものの、異なる意見を持つ者であれば自国民でさえ切り捨てるその考え方が恐ろしい。

    p95
    半藤さん、ハチ公の銅像と、まだ生きているハチ公を見る為に渋谷に行った思い出があるらしく、ハチ公を見た人が平成(令和)に存在していたと思うと不思議な気分。

    p113
    駿のおじいさんの機転がすごい。大地震の直後に真っ先にご飯を食べて、お金だけ持って逃げて材木を買い占め、それを売って震災復興で儲けるなんて。さらに世界恐慌を他国のヒット商品のまがい物を売ることで切り抜けて苦労知らず…
    知恵があり生きる力が強い人なんだなと。さすが駿の一族!

    p128
    最近のジブリが昔のようにファンタジーじゃなくなったのって、リーマン以来、世の中の情勢が変わったからなんだ。世界が不安な時に、ファンタジーは空想的でチグハグな感じがするからなのかな。
    私はリーマンショックの影響をもろに受けた世代だけど、でもジブリでは昔みたいなファンタジーも見たいなぁ。空想の世界で癒やされたい。物語の世界では現実を直視したくない。

    p160
    堀辰雄は戦時中に既に、戦後はEUのような国家間の連合が希望になると考えていたようで、いつの時代でも先のことを考えられる、時代の一歩先をゆく人は存在していたのだなと感心する。

    p193
    「この国はあいつのおかげで滅んだ」ほらやっぱり、責任をなすりつけている。対立する意見を自分の主張で納得させられなかったならそれはもはやどっちが良かった悪かったとは言えないのでは。最終的にどちらも意見を譲らず中途半端な飛行機が出来上がったのは、紛れもなくどちらにも責任がある。これが決定権を持った人のやることなんだろうか。この人達は仕事をしていないも同然じゃないか?
    こういう有能でないオジイサンの為に、何人の若者が亡くなったんだろうと考えると本当に虚しい。しかもオジイサンは生きている。国民は軍に対してなぜ反撃しないのか?と思うのだけど、それは当時の様子を知らないから言えるのだろうか。

    p211
    『こころ』のお嬢さんが2人の好意に気付いていたかについて。私も絶対気付いてないと思ってた。文面からはそんな要素が一つも感じられない。Kとは仲良さそうな印象を受けたけど…だから先生が急にお嬢さんのお母さんに娘さんをくださいと言う場面、お嬢さんの意思も確認せずモノのように奪う感じがして、何か不愉快。
    あと主人公と未亡人のお嬢さんが結婚はどう考えてもないでしょう。

    p221
    「民草は食うのに一生懸命」「ほとんどの人が刹那的」…では戦争以前は、戦中・戦後を想像できたのだろうか。どうやって戦争に突入していったんだろう。覚悟はあったのか。
    よく思うのが、戦争中、南国の真っ青なスカイブルーの海を見て、戦争する気が起こるもんなのか、あんな美しい海の上で殺し合う気なんて起こるのかと思うけれど、命じているのは安全な場所にいる参謀本部なわけだから関係なかった。
    令和の現代も、若者はお金もないし未来は不安だらけだし、一生安泰な職業なんてもはやない。国が不安定だと国民は刹那的に生きるしかなく、悠長に未来を考える間もなくなるのか。

    p234
    「エネルギーが石油に移行することをしっかり認識しておれば、次の戦争の主役は飛行機と戦車と潜水艦になるということがわかったはず」
    p235
    エネルギーの大転換は歴史の節目節目に必ずやって来るものだが、日本人はそのことに対して鈍い民族…

    国家そのものが何事も後手に回る受け身だし、刹那的。他国の真似は得意だが、リーダーには向かず、非合理的で決断が遅い。結局、得意だったことも次々と外国に乗っ取られてしまう。
    思考停止と無責任の集まり、それが日本…なんでしょうか。誰か否定できるならして欲しい。

    p238
    ソナーやレーダーの話、呆れて笑えるほど非合理的。駿に発想が役所で、バカとまで言われる海軍。上がポンコツだと下は失わなくて良い命が失われるんだなぁ。どうしてダメだと分かっていて、発言や改善ができないんだろう??日本人に限らずなのかもしれないが、本当に非合理的で、無駄に空気ばかり読む「動物」なんだなと思う。空気が何か解決してくれるんでしょうか。そして大して読めてもない。

    p242
    「歴史は四十年サイクルで盛衰して行く」という半藤さんの「四十年周期説」…
    面白い。2013年の当時で「失われた20年」だとすると、1990年頃から確かにバブル崩壊の影響で不況が始まり、となると2030年代頃にはどん底を迎え、それ以降は上昇していくのだろうか…だったらいいな。

    p243
    私も年金のために子どもを産まなきゃいけないなんて馬鹿げていると思う。どうしてそんなに視野が狭くなるんだろう。目的は、子どもを増やすことじゃないでしょ。その考え方は中国のひとりっ子政策と一緒。人権がない。不自然。
    それに今の若者は昔ほどお金や心に余裕がない。希望もない。生まれたときから不況なんだから。
    だからこそ社会制度を変えるとか、あるでしょ。
    皆が快適に暮らしたいという目的の為に、手段を間違ってはいけない。国民同士で揉めてどうする。そんなことより全世代、選挙に行った方がいい。

    p245
    確かに日本は着るものや食べ物など、自国で何も作ってない。そして国民は自覚していない。
    私は水が奪い合いになるかも…という話は聞いたことがある。そうなったら地球が終わる、ぐらい恐ろしいことだなと思った。

    p247
    尖閣の問題、2人は棚上げしたほうが良いという意見なんだ。先送りではなく、堀辰雄が考えたように東アジアにEUのような制度を作って、未来に希望を見出す形で。個人的にはアジアは個性が強すぎてまだ難しいとは思うけど。
    テレビで、戦争を起こさない為に地球全体を連合国のように考えて国境を無くすのはどうかという考えも聞いたことある。
    もしかしたら、これからの人達には国境なんて見えなくなるのかもしれない。でも決して、戦争をしたらどうなるかは忘れてはいけない。戦争で解決なんてしようとしてはいけない。

    p267
    半藤さんのあとがきがまた素晴らしい。
    「いまの日本の政治は期末利益優先の株式会社の論理で国家を運営している。わたくしにはそうとしか見えません。とにかく目先きの利益が大事であって、組織そのものの永続は目的ではない。自然資源や医療や教育や自活の方策など、国民再生産の重要課題などは後回しで、その日暮しで、国民の眼くらましとなる利益のあがる政策最優先です。」
    「でも、「国家百年の計」という言葉があるように、百年スパンでことを考え構想し、それへ一歩踏み出すのが国家運営の責任をもつ人たちの仕事だと思うのです。」

    先日、私の祖母が最近の政策を鑑みて今の若者はかわいそうという話をしていて、ハッとなった。
    人口に対して高齢者が多い→票を得るために高齢者向けの政策ばかり作られる→高齢者向けの政策を作った政党に投票される→若者が不利…
    と考えていたけど、勝手に高齢者VS若者のような構図になっているけれど、若者や未来の日本のことを考えてくれる高齢者はいる。やっぱり社会問題を身近に捉えているし、それに対する見解も長年の経験や勘から的を射ている。
    逆に若者の方がまだ人生経験も浅く、自分の未来に降りかかるであろう問題が見えていない、実感がない。けれどこれから苦労するのは明らかに若者だ。

    だから、高齢者と若者と分けて対立させるのではなく、協力してお互いの良いところを掛け合わせる。高齢者には若者のアドバイザーやコンサル的な立場になってもらい、若者はその情報を元に未来への対策を構築し、実行する。
    人間の一生はそんなに長くない。何の情報もなく無策で生きていると、要領を掴んだ頃には寿命を迎える。それは知能の高いはずの人間には勿体無いことではないか。
    0から人生を始める必要はない。言葉や本やメディア等で先人の知恵をお借りして、目一杯利用する。
    どうせなら自分が生きている間に、世の中が目まぐるしく発達し、より生きやすくなっていけば幸せじゃないか。

    私達の世代は生まれた時から未来に希望が見えず、不安だらけで期待もしていなかったけれど、まだ諦めなくても良いのかもしれないと思える。
    きっとこの対談の二人や私の祖母、その親世代が若者であった時代は生き残ることさえ難しかったと思う。
    それでも生きて、今の若者世代を慮る人がいるということは、若者にとって非常に心強いことではないかと思う。


    半藤さんも期待していたジブリの次回作、まだかな…。

    20220508

  • 好きな2人の対談。
    宮崎監督が半藤さんとの対談を希望された様で、
    終始半藤さんと会話出来るのが楽しくて仕方ないといった印象を文章からも受け、読んでいてこちらもワクワクする。
    愛国談義とはあるけれど、直接的な政治発言は少なく、風立ちぬ公開あたりの対談なので、風立ちぬに関する話題がメイン。その中で戦争体験の話がチラチラと出てきて、お二人の反戦への想いが見え隠れする。
    半藤さんが亡くなられたので、もう2度とこの対談を見る事は出来ないのかと思うと寂しい。

  • 映画「風立ちぬ」公開に合わせて、公開前と公開後に実現した長時間座談の内容を記録したもの。半藤一利さんの追悼特集を読んで、やはりちょっとは読んでおきたいと思い手に取った。宮崎駿72歳、半藤一利83歳、8年前の対談である。

    お二人とも軍事オタクだから、軍艦や飛行機の話になれば花が咲く。そのあい間にお二人の半生もちょこちょこ出てきて面白い。そしてやはり「風立ちぬ」の中身に突っ込んだ話が半分くらい占めて、私はあまり評価していなかったこの作品をも一度見直したくなった。

    以下面白かった部分の要旨を箇条書き。
    ・半藤一利「日本は、海岸線が長くて、資源が無くて、守れない、持てない国だ。それなのに、基本的には外交で守るしかない、とは誰も思わなかった。生命線とか愚かな思想が出てくる。現代は、長い海岸線に54基もの原発を無計画につくる。原発のひとつでも攻撃されたら、日本が滅ぶというのに。この国は武力による国防なんてどだい無理なんです。日本は脇役でいいんです。小国主義でいいんです。(66-69p)
    ・宮崎駿「アニメはこの50年でやり尽くした。あとは子供の人口が減って、どんどんジリ貧になる。大人の観客が増えて鈍化はしたけど、流れは止まらない。
    ・宮崎駿「新河岸川の5分アニメを企画したことがある。郷土資料館で使ってもらえないかと。舟運の仕組み・歴史が一眼でわかる。でもついつい作ろうとすると30分ぐらいになっちゃう。
    ・宮崎駿「堀越二郎のことを描かないと、かつてのこの国のおかしさは出てこない。(略)これを描くと子どもは土俵の外に置かれる、と言ったら誰かが「あとでわかる時が来るかもしれませんよ」と言って「そうかもしれない」と思ったのです。(略)あの時代を代表する二人は、自分にとって堀越二郎と堀辰雄だったんです。零戦だって、ぼくは描きたくないと思っていました。(略)終わりの草原はノモンハンのボロンバイル草原だよ、とスタッフに言っていた。(略)庵野は選びあぐねていた時に気が付いたんです。庵野秀明と出会ったのは、ぼくが43歳、彼が23歳、最初見た時は宇宙人がきたと思いましたよ。とうとうこういう人間が日本に現れたか、と。近頃ではいろいろなものを背負って歩いている。ギリギリのところで生きている。(略)やっぱり存在感が大事なんです。思い入れたっぷりに演技されるよりも、ボソッと喋ってくれた方がいいんです。
    ・宮崎駿「堀越二郎は、真面目に一生懸命に仕事をしている。世界がいろいろ動いてもあまり関心を持っていない日本人。つまり、(宮崎駿の)親父です。(略)みんな刹那的でした。ドキュメンタリーをやってくれる人はいっぱいいますから、それはお任せしておいて、ぼくはやっぱり親父が生きた昭和を描かないといけないと思いました。
    ・半藤「まだうまくいっていませんが、それでも東アジアが向かうべきはEUのような方向ですよ。
    宮崎駿「ええ。それしかないですよね。
    ←このことに関しては、私も全く「それしか無い」と思う!!

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      kuma0504さん
      国益って何なんでしょうね?
      国民を蔑ろにする国体って何なんでしょうね?
      kuma0504さん
      国益って何なんでしょうね?
      国民を蔑ろにする国体って何なんでしょうね?
      2021/04/18
    • kuma0504さん
      猫丸さん、
      言いたい事は半分くらいわかるような気がするのですが、
      半藤一利さんは一生かけて言っていた気もするのですが、
      言及すると、
      たいへ...
      猫丸さん、
      言いたい事は半分くらいわかるような気がするのですが、
      半藤一利さんは一生かけて言っていた気もするのですが、
      言及すると、
      たいへんなことになりそうなので、この辺りで。
      2021/04/18
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      kuma0504さん
      にゃー
      kuma0504さん
      にゃー
      2021/04/19
  • ・「太平洋戦争 日本航空戦記」の表紙を谷井健三という絵描きひ書いてもらった際に「どうしても描けない」と言った
    ・才能のない連中が戦争をしたがるのである→才能のないものが成り上がるための時代への皮肉

  • 半藤 一利さんという方は、知らないです。けど、三国志についての対談本が出ていたので買いました。

    「バカの壁」の人との対談よりは、おもしろく読めました。
    まあ、それでも宮崎 駿は、基本的に人の話聞いちゃいないんですけどね。
    それでも、政治的な話が全面にでないで、自分のマニアな趣味とかが中心になっていた方が魅力的だし、素直で楽しいと思います。

    心性としては、実は宮崎 駿って、百田 尚樹とそんなに変わらないと思います。

著者プロフィール

半藤 一利(はんどう・かずとし):1930年生まれ。作家。東京大学文学部卒業後、文藝春秋社入社。「文藝春秋」「週刊文春」の編集長を経て専務取締役。同社を退社後、昭和史を中心とした歴史関係、夏目漱石関連の著書を多数出版。主な著書に『昭和史』(平凡社 毎日出版文化賞特別賞受賞)、『漱石先生ぞな、もし』(文春文庫新田次郎文学賞受賞)、『聖断』(PHP文庫)、『決定版 日本のいちばん長い日』(文春文庫)、『幕末史』(新潮文庫)、『それからの海舟』(ちくま文庫)等がある。2015年、菊池寛賞受賞。2021年没。

「2024年 『安吾さんの太平洋戦争』 で使われていた紹介文から引用しています。」

半藤一利の作品

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