これから始まる「新しい世界経済」の教科書: スティグリッツ教授の

  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198641047

感想・レビュー・書評

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  • 2017年後期経済WSの教材。

  • REWRITING THE RULES OF THE AMERICAN ECONOMY
    http://www.tokuma.jp/bookinfo/9784198641047

  • アメリカ経済の現状、一部富裕層への富の集中と中間層の生活不安、貧富の格差の広がり、それらがサプライサイド経済論による金融・税制などの緩和・優遇策で期待されたトリクルダウンの効果が出ていないことによるとして、最上層を制御し、中間層を成長させるための処方箋が示されている。
    雇用、住宅、教育、長期的な投資など、方向性としては望ましいものと感じるが、さらに賃金格差のある世界規模での企業活動を考えると、一国内での政策的取り組みでの限界や難しさがあるように思えた。また、個人的には貧富差そのものが問題ではなく、富裕層の存在にかかわらず貧困層が解消されることが肝心だと思う。(例えば所得が平等で貧富差がなくなっても、文化的生活ができなければ問題は解消していない。)
    16-135

  • 332.53||St

  • ★2016年6月25日読了『これから始まる「新しい世界経済」の教科書』ジョセフ・E・スティグリッツ著 評価A

    ここ30年で世界各地で急速に広がった格差の原因と対策を米国対象として分析し、その対策を探る。(ただし、スティグリッツ氏の意見は多分に民主党デモクラッツ的なので、その分は割り引いて聞く必要はあるかと思う。)

    ・各個人には能力の差はあるのだから、ある程度の不平等はやむを得ないと私は考えてきた。
    そして、いよいよここに来て、世界中で不平等、収入格差に対する一般市民の不満が一気に爆発してきたように感じる。その原因は何か、なぜこのような状況になってしまったのかを分かりやすく分析してくれている。

    ・読み終わって、昨日の英国のEU離脱と合わせ考えてみる。
    ・東西・南北国際格差⇒アラブ国の混乱・ISの伸長=難民問題⇒欧州各国での受け入れの軋轢⇒昨日の英国のEU離脱決定 根本には、一向に良くならない経済問題がその根幹に存在。国別の丁寧な対応を取れない巨大になりすぎたEU政策の歪みに対する批判がこれからの世界経済を大混乱に陥れる気がしてならない。今年はようやく欧州景気も回復してきていたにもかかわらず、また景気の谷を自ら落ちていってしまうことになるのだろう。

    ・米国のトランプ氏の大統領選への勝ち残りも同様の原因があると考えられる。波乱の目は中国にも蔓延しつつあり、大衆の不満を中国共産党は不正摘発で抑えこむのに必死である。

    ・残るは日本なのだが、18歳の新有権者が波乱を起こしてくれるか?圧倒的なお年寄り多数派に抑えこまれてしまうのかは、興味深い今回の参院選ではある。

    <備忘メモ>
    ■反競争的な活動、独占行為を規制、監視してきたシャーマン反トラスト法、れんぽう取引委員会方とクレイトン法
    →80年代以降のサプライサイド経済理論の影響で規制緩和、経済自由化へ=最富裕層と資本収益に対する税率引き下げ
    →労働・投資増加=雇用・所得・税収(トリクルダウン効果)の上昇を期待=企業の市場支配力が高まる。
    ⇒予測はハズレ、更なる不安定、成長の鈍化、不平等の拡大を招く

    ■短期主義の急速な台頭と拡大:短期的な利潤と株主利益に重点を置いた80年代以降のコーポレート・ガバナンスモデルが資本主義世界を席巻
    ・健全なイノベーション、長期的繁栄に繋がる投資減少、過剰なリスクテイクと短期転売による利益獲得を狙う企業乗っ取り、配当、買収を目的とする積極的行動主義の投資家激増。
    ⇒株主配当は倍以上に増えたものの、将来への投資は増えず、借金もしない企業増加
    ・従業員=長期的資産から短期的負債へ
    実効税率の累進性&キヤピタルゲイン、法人税率下げ=最富裕層の納税額減、公共サービス低下。
    全く政府の施策は経済の好転には結びつかず、中流以下の国民の生活水準は悪化。所得格差拡大

    ■安定・機会均等・貧困からの開放を目指し、21世紀の新しい政策が必要。
    企業マネジメントへの過度の報酬を制限=レートシーキング(搾取を通じて他者から利益を引き出す事によって富を得る行為)のインセンティブを削減⇒中流層の安定と機会を確保=労働者を保護、完全雇用を目指し、インフラ整備投資して、仕事に見合った賃金を支払う。

    ■大企業の過度の市場支配を制限。金融セクターの役割を修復。長期的な企業経営へのインセンティブを回復させる。

    ■サービス・知識経済に対応した21世紀の新しい競争法を策定すべき
    知的財産権、世界貿易協定、医療費改革、消費者金融保護等

    ■大きすぎて潰せない大金融機関経営者のモラルハザードを解消する必要性。
    SEC、FRBのガバナンス改革、取り締まり強化を行い、シャドーバンキング、オフショア金融センターを調査透明化して、対策をとるべき。

    ■実施すべき改善政策
    ・短期主義打破、金融取引税復活による安易な金融仲介手数料狙いを防止、
    ・取締役会へ従業員代表を入れ、経営監視強化。
    ・税体系を元に戻し、最高限界税率引き上げ、キヤピタルゲインの優遇措置廃止。相続資産の時価評価中止。
    ・グローバル企業の海外活動に対する課税実施。
    ・戦略的公共投資の復活し、老朽化した米国のインフラ再構築4兆ドルで国のベースを再建。FRBの金融政策だけに頼らない。
    ・全国労働関係法(NLRA):アウトソーシング、下請けなどの21世紀の雇用形態に即したの改革へ。最低賃金引き上げ。
    ・有給病気休暇・育児介護休暇の創設。
    ・郵便局の銀行口座を拡大し、全国民が銀行口座を持てる制度を検討。
    ・住宅金融機関の再建。
    ・投票制度の旧態然たる現状を改革、期日前投票、オンライン投票、安易な投票者登録、平日投票の変更

  • 20160512

    過去40年で、アメリカの総生産は向上しているが、労働者の賃金はほとんど増えてはいない。
    こういった、格差を無くすために経済のルールそのものを変えるべきだという主張。
    いまのアメリカの法律などは、ごく一部の富裕層に有利なあり方になっている。

    また、格差を埋めることが難しい、低所得層に生まれたこどもが、その所得層から抜け出すことが困難無くなったのかよになっている。

    新しい世界経済と銘打ってはいるが、アメリカの現状を分析した本。
    日本にどれほど当てはめることができるかは、まだ勉強不足なのでわからない。

  • 経済が衰えているのは富裕層の富独占ににありと説き、その原因は、ピケティの「r>g 資本収益は経済全体の成長率よりも大きい」では説明が十分では無いとして、金融の規制緩和や知的財産権、証券取引法、連邦所得税法、などの法的問題そしてFRBのインフレ抑制政策、労働組合の弱体化、各種差別など格差問題の元凶に鋭く切り込み、貧困は固定化すると憂う。
    対策としては、知的財産権や貿易協定のバランスを取り戻し、金融セクターやFRBのガバナンス、そして税制の改革を行い、短期主義を抑制するなど、富裕層を制御し、公共投資の復活や労働者への権限付与を行うなどで中間層を成長を図ると提言している。
    TPPにおいても製薬業界やハリウッド映画などを利する知的財産権などに反対しているのはグルーグマン氏と同様、ハリウッド映画などはどうでもよいが、病気での死活問題となる製薬関連で日本からは堤未果氏が声を上げているだけで、あまり騒がれていないのはなぜだろうか。

  •  
    ── スティグリッツ/桐谷 知未・訳
    《これから始まる「新しい世界経済」の教科書 20160218 徳間書店》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4198641048
     
    <PRE>
     Stiglitz, Joseph Eugene 19430209 America /コロンビア大学経済学教授
    /1979 ジョン・ベーツ・クラーク賞、2001 ノーベル経済学賞
     黒田 東彦   日銀総裁 19441025 福岡  /31[20130409-20180408]
    http://twilog.org/awalibrary/search?word=%E6%97%A5%E9%8A%80&ao=a
    </PRE>
     
     懐疑録 ~ 読んでから聴いたか、聞いてから読むつもりか? ~
     
    …… 「不可思議なことがある」。黒田総裁は質問をこう切り出した。
    アベノミクスのもとで(略)賃上げのペースは緩い」と疑問を呈した。
     スティグリッツ教授は米国では職探しを諦めた人が失業者に分類され
    ないなど「失業率が労働市場を正確に表していない」と指摘(20160316)。
    http://www.nikkei.com/article/DGXLZO98531340X10C16A3EE8000/
     
    https://twitter.com/awalibrary/status/711091525543792640
     
    (20160319)
     

  • これから始まる「新しい世界経済」の教科書 ジョセフ・E・スティグリッツ著 中間層を成長させる政策主張
    2016/3/13付日本経済新聞 朝刊

     世界中で貧富の格差が拡大している。米国では全体の1%の超富裕層が国の富の大部分を独占しているという話はすっかり有名だ。日本はそこまでではないが、正規労働者と非正規労働者の所得の違いが問題視されるなど、格差は拡大傾向。どの国も経済の成長軌道を描けないでいる。







     本書によると、このような問題が生まれたのはこれまでの経済理論が間違っていたからだ。経済の供給側(サプライサイド)を重視し、規制緩和や減税などで事業を進めやすい環境をつくっていけば、生み出された富は最上層からあふれ出し国民全体が豊かになるはずだった。ところがそんな効果は表れなかった。


     現在、こうした供給側重視の理論には多くの経済学者が否定的だ。にもかかわらず、実際の政策の場では依然として幅を利かせているという。


     そこで、本書は従来の考え方と決別し、分厚い中間層を育てることこそが重要と指摘する。そのためには最低賃金の引き上げなど労働者を守る政策、労働者がお金の心配をせずに医療が受けられる公的制度の拡充などが必要とする。富裕層には課税強化などを求める。


     著者の従来の主張のまとめではあるが、いまだになんでも規制緩和でうまくいくといった主張がある中で、読まれるべき一冊だ。桐谷知未訳。(徳間書店・1600円)

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