顔 FACE (徳間文庫)

著者 :
  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198922337

感想・レビュー・書評

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  • 似顔絵が得意な婦警・平野瑞穂を主人公とした連作短編集。
    横山さんの小説はわりと好きなんですが…この小説はジェンダーバイアスがきつくて不快になりました。

    精神的に脆い、足手まとい、男に操られる、仕事放り投げて結婚に逃げる、嫉妬、仲違い等々、女性のネガティブ描写オンパレード。
    射撃の上手い婦警が登場した時には「あー、この人きなんか失敗するんだろうな。拳銃奪われるとか」と思ったら、まんまその通りの展開になり笑ってしまいました。
    主人公ですらあまり活躍しません。
    一応似顔絵や洞察力の見せ場はありますが、別口で捜査が進んでいて、主人公がいなくても事件は解決するという展開がほとんど。
    ただの彩りです。

  • エピローグで主人公「平野瑞穂巡査」のイメージが音が響くように現実化(実像化)した。前作「影の季節」で心に傷を負い著書の中でも弱さ・脆さが前面に出ながら現実にもがき苦しみ何とか職務をまっとうしようとする姿に言いようのない不安感をいだく、小説のなかではあるが平野瑞穂という女性を実像として思い描けなかった。しかし幼い時に夢見た婦警さんと自分を結びつけるが如く懸命に傷つきながらも試練を乗り越え前進し、強くなっていく生き方に感動する。何度もエピローグを読み返し、最後に春の優しい光の中で平野巡査の笑顔が想像出来た。

  • 警察小説には珍しい、まだまだ若手の女性警官が主人公。男社会の中での生き辛さを乗り越えていく。ありがちな派手さはないが奥が深いです。

  • 二渡警務調査官が中心の短編「黒い線」に出てきた、鑑識課で似顔絵が特技な婦警、平野瑞穂のスピンオフ短編集。婦警の目線で描く完全な男社会の中で、婦警の扱われ方に対する彼女の心の叫び、女性ならではの発想、経験による推理の描き方が魅力。どの短編も水準以上の出来なのはさすが横山秀夫クオリティ。

  • 陰の季節のスピンオフのような作品。男性社会の中で生きる婦警を描写する。女性の働き辛さ、組織の中で弱い立場を際立たせつつ、主役の芯の強さをうまく描いていて、男性でも十分に楽しめるのではないか。
    現在は、警察組織も多少は変わっているのだろうか、想像するばかりだが、以前は男性優位の職場が当然だったとするならば、本作で描かれる社会がかなり特異に映ること自体、世の中が良い方向に変化している、ということなのだろう。

  • 『陰の季節』に出てきた平野瑞穂巡査が主人公。似顔絵の改ざんを命じられた瑞穂のその後の物語。男社会で生きる女性の生きにくさ、必死さの描写が巧みで、瑞穂の心の痛みがよく分かる。が、その一方で真面目すぎる性格に多少イライラしたのも事実。それだけ仕事に誇りを持っているんだろうけど、ここまでガチガチにいろんなことを受け止めなくてもいいんじゃない?と言いたくなった。

  • 面白かった
    D県警シリーズの女性警察官を主人公にした短編連作ストーリ

    主人公の女性警察官は「陰の季節」の「黒い線」で登場した似顔絵婦警。彼女のその後を5つの短編連作で語っていきます。

    魔女狩り
    決別の春
    疑惑のデッサン
    共犯者
    心の銃口

    なので、まずは「陰の季節」の「黒い線」を読んでから本書を読むのがよいでしょう。
    男社会の警察の中で、主人公が悩み、もがきながらも行動し、切り開いていくところがすごい。
    さらに、この婦警の経歴がすごい
    鑑識の似顔絵婦警(黒い線)
    秘書課広報公聴室(魔女狩り)
    犯罪被害者支援対策室(決別の春)
    強行捜査係の刑事(心の銃口)
    とさまざまな業務を異動していきます。
    そして、もっとすごいのが、この主人公の謎解きが切れまくっている(笑)
    それぞれの章でものの見事に謎を解明していきます!

    魔女狩り
    「黒い線」でも描かれていた似顔絵婦警をなぜ辞めて、広報に異動してきたかが描かれています。
    そして、広報では、スクープを連発する新聞社に誰が情報を漏らしているのかを探り、真相を明らかにします。

    決別の春
    連続放火魔の事件と犯罪被害者支援対策室で受けた電話の女性から、14年前の放火殺人事件の真相を明らかにします。

    疑惑のデッサン
    二代目似顔絵婦警が描いた似すぎた似顔絵。また自分の二の舞になってしまうでは?と探っていった先にあったものは、似顔絵と人物画の違いにこめられた思い。

    共犯者
    銀行強盗訓練と同時に別な場所で発生した本物の銀行強盗。誰が銀行強盗訓練の場所と時刻を外部に漏らしたのか?監察課の調査とは別に独自で操作を進め、ついにはその真相にたどり着きます

    心の銃口
    女性警察官が襲われ拳銃が奪われます。拳銃を奪った犯人を追い詰め、その先に見えた本当の真実。

    ということで、名探偵コナンよろしく、彼女の身の回りでいくつも事件が起きて、彼女が真相を明らかにしていくというところで、どう考えてもスーパーウーマンです。
    でも描写はバリバリのキャリアウーマンというわけではなく、まじめでとっぽい感じ。
    そのアンバランスさが、どこにでもいるいわゆる普通の女性が男社会の中で悩みながらも一生懸命に職務を全うする姿を強く印象つけています。

    ということで、本書は「陰の季節」を読む前に読んではいけません!

  • 陰の季節で読んだ婦警さんの話で、最初婦警の話かーって思ったけどやっぱり読むとおもしろかった!!
    ちょっと読むの時間かかってしまったけど、いつもの県警シリーズとはまた違う感じで、読んでよかったなー

  • 最後は意外な結末。短編だけど一人の警察官中心の話。
    女の心情の描写がうますぎて結構イライラした(褒め言葉)。横山さんすごい。

  • 女性警察官に対する警察内部での立場や男性警察官の女性警察官に対する思いなどがうまく描かれていて、知らない世界を知ることができた。ストーリー的にも短編形式になってて、飽きさせない。後半のclimaxで一気に読み終えた。

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著者プロフィール

1957年東京生まれ。新聞記者、フリーライターを経て、1998年「陰の季節」で松本清張賞を受賞し、デビュー。2000年、第2作「動機」で、日本推理作家協会賞を受賞。2002年、『半落ち』が各ベストテンの1位を獲得、ベストセラーとなる。その後、『顔』、『クライマーズ・ハイ』、『看守眼』『臨場』『深追い』など、立て続けに話題作を刊行。7年の空白を経て、2012年『64』を刊行し、「このミステリーがすごい!」「週刊文春」などミステリーベストテンの1位に。そして、英国推理作家協会賞インターナショナル・ダガー賞(翻訳部門)の最終候補5作に選出される。また、ドイツ・ミステリー大賞海外部門第1位にも選ばれ、国際的な評価も高い。他の著書に、『真相』『影踏み』『震度ゼロ』『ルパンの消息』『ノースライト』など多数。

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