- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784198945466
作品紹介・あらすじ
自称人魚のうお太郎が
私を“黒く”侵していく。
怪談小説の異端児が放つ奇想物語
小さい刻の愉しい記憶をもう一度味わうために、私は誰もいない寺に帰ってきた。
私が池で見つけたのは、真っ白な自称人魚の男『うお太郎』。人魚にも見えないが、人間とも思えない不思議な生物だった。
うお太郎は「この寺の周辺には奇妙な石が埋っており、私にはそれを見つける力がある。石には記憶を忘れさせたり、幽霊を閉じ込めたりする力が宿っている。早く見つけろ」と言うのだが……。
書評家熱賛!
怪談小説の異端児が放つ奇想物語が待望の文庫化。
(解説・杉江松恋)
感想・レビュー・書評
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若い僧侶、人魚、不思議な石、天狗…
怪奇譚のファンタジー要素しかないと思っていたけど、やられた…。
殺人、妬み、取引、欲望、絶望…不思議な石に導かれた人々の黒い部分でできた物語。
ミステリーというよりホラー。
なれど、僧呂のユキオは頼りないし、人魚のうお太郎は雑で若者口調だし、天狗は横柄だしで、怪奇譚ファンタジーのようにさらりと進むホラー。
祖父の残した寺で僧侶として生きて行く道を選んだユキオ。庭の池に沈んでいた人魚とのおかしな生活が始まる。
石にまつわる一話一話のエピソードが読み進むうちに徐々に全貌を表してゆく。
付箋回収しても謎の部分は多く、何かが終わったのではなく、これからも続く彼らの日常を思うと気になって、想像力を残されたようで読後感はすっきりしない。
ただ、この迷宮は悪くない。
今年の10冊目
2020.4.9詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
一瞬理解できず、理解すると気持ち悪い「何か」が差し込まれ、また投げ込まれる。この「何か」を最初から詳細に言わないことで怖さが増している。
この手の人ならざる存在が登場する作品はややもすればアニメ調の、キャラクターがうるさいだけの駄作になる。文章を読み、頭の中で絵や映像に起こす――そんな小説の楽しみが損なわれぬような、文章のテンポやキャラクターの存在感のバランスが本書にはあった。 -
これはステキな一冊。円城塔さんのパートナーの方なんですね。
うお太郎と名付けてしまった人形との、不思議なお話。
いろんな力を持った石、天狗、木乃伊の姉さんなど。
うお太郎の女装には少し興味ありかな?
図書館本。いずれは購入したい。 -
かつて預けられていた祖父母の山寺に戻ってきたユキオ。祖父の死後、跡を継ぐために彼はこの山奥の寺に戻ってきた。まずは掃除をしようと池の水全部抜きました、ら、そこから現れたのは自称人魚の怪しい男。真っ白で全裸で髪はないけどまつ毛は長い。ユキオは彼を「うお太郎」と名付け、奇妙な同居生活が始まる。亡くなった祖父母もこのうお太郎の存在は知っており、さらに祖父母は代々この辺りでとれる奇妙な石を収拾していたという。ユキオはさまざまな石にまつわるトラブルに巻き込まれ・・・。
人魚ものが大好物なのでタイトルだけで思わず購入。タイトルや表紙の感じから、もっとおどろおどろしい民俗学系怪奇譚、もちろんシリアスな、と期待していたのだけど、いざ読み始めて感じる違和感。あれ、なんか随分ライトですね?
突如池の中から現れた男性型二足歩行の人魚には「うお太郎」というひょうきんめの名前がつけられ、話し言葉も現代っ子の普通の標準語。ユキオくん(だいぶ後で年齢わかるが24歳)という新米住職と、外出するときは女装する変な人魚男が、身の回りの怪しい事件を解決する、凸凹バディものみたいなノリ。それでいて唐突に挿入される過去の猟奇事件の猟奇っぷりは無駄にグロく、これもやっぱり現代的。うーん。面白くないわけではないけどちょっと肩透かし。
あと山寺の場所は京都と大阪の間あたりらしいですが、登場人物全員標準語。この手の民俗学系怪奇ものは方言使うことで雰囲気が全然変わってくると思うんだけどな。いや無論、作者が得意でもない方言を無理やり使って書いたところで不自然になるくらいなら標準語のほうが良いのかもしれないけど、じゃあもう琵琶湖とか宇治とか具体的な地名を出さなければいいのに。
石のありかがわかる能力を持った一族や、いろんな効力のある石という設定は面白かったと思う。1話完結のオムニバス風のライトノベルならそれはそれで。ただ終盤唐突に祖父の残した日記が出てきて・・・という真相解明のしかたはやや雑に思えたし、どうも今ひとついろんなことがスッキリしない。ラストのオチも、捻ってあるようで実は安易なようにも思う。「若い青年」などの表記もちょいちょい気になった。いっそもっとライトなパッケージで若い子むけの作品として売り出したほうが受けそうですね。自分にはちょっと合わなかったです。
※目次
幽霊の石/記憶の石/生魚の石/天狗の石/目玉の石/祖母の石/未来の石/夢の終わり/人魚の石 -
うお太郎は「この寺の周辺には奇妙な石が埋まっており、私にはそれを見つける力がある。石には記憶を忘れさせたり、幽霊を閉じ込めたりする力が宿っている。早く見つけろ」と言うのだが…。(e-honより)
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面白かったです。
不思議で、ひんやりしてるのに生々しさがありました。
主人公がぼんやりしすぎてる、と思いましたが、彼の記憶が彼自身のものではないということを考えるとそうなのかな…って思います。
人魚、今まで物語で読んできたそれとはかなり違ってるような生物でしたが、うお太郎もヤグロも確かに人外の冷たさがあります。永く生きてそうなヤグロの方が闇が深そう。元人間だったらしい天狗の方がちょっとだけわかりやすい気がします。
人ではないものの近くにいると、どうしても影響されておかしくなるのかな。石も不思議だし、薄っすら怖い。
田辺青蛙さんの本初めて読みましたが好みの世界でした。