- Amazon.co.jp ・本 (196ページ)
- / ISBN・EAN: 9784253169950
感想・レビュー・書評
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10代の頃に読んだ時、内容よりも著者の脱マンガ的な絵柄・技法に強く惹かれたが、再読しても相変わらず凄いと思った。ここでこういうアングルかぁ、こういうコマ処理(作品内での時間管理)をするかぁとか感心しきりだった。青年誌向けにキャラの顔をかなり掘りの深い描き方をしていて、当時著者が対抗意識をもっていた劇画調というのとも違って手塚マンガのティストが残っていて独特の味わいがあり、たぶん多くの手塚ファンも著者も気に入らないというような気がするが、自分は青年誌向けの著者のキャラの描き方はかなり好き。後年の『アドルフに告ぐ』や『陽だまりの樹』に比べると著者がまだ若くかなり背伸びというか、自分の体質にあわないものを無理して描いている感は否めないが、庶民が権力に蹂躙されること(その最たるは戦争だが)に対する憎悪や怒りといったものが通底しているところが著者らしいと思う。
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表題作である「時計仕掛けのりんご」が、ゾンビ映画みたいな怖さでした。
全部面白かったのですが、「カノン」の寂し感じが凄い好きです。 -
気持ち悪さと不気味さが詰まっててかなり好き
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短編集。
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これぞ大人向けの漫画!というに相応しい、緻密な描写と不安を募らせる話の展開がさすが!の黒手塚作品です。枠外が意識的に全部黒でベタ塗りされているのですが、それが怖さを助長させていますね。ちなみに、「カノン」や「白い幻影」(どちらも、僕の大好きな短編のひとつです)といった、表題作以外の作品もかなりの名作ぞろいです。
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白い幻影以外は普通。ホラーとかミステリーみたいな。梅津かずおが「おろち」とかで書いたらもっと面白くなりそう。
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ペーター・キュルテンの記録は実話を元にしているらしいが、wikipediaでさらっと読んだ実際の話の方が面白かったな。
それよりアメコミを意識したオープニングの英語の書き文字とか、本来のキュルテンが言ったとも思えない社会への不満が唐突に飛び出すところとか、妙な創作の方が気になった。
時計仕掛けのりんごは色々破綻していて現実味には乏しいなあ。
陰謀論並に細部が適当すぎて、大したサスペンスやミステリ色もない。
当時はこれで十分だったのかも知れないが。
カノンもなんか政治的歪みを感じる。
白い幻影でやっとそういうカラーから脱却できた気がする。
ただネタとしては既によそでも見たネタではある。ブラックジャックとどっちが先だろう。
最上殿始末は結末が政治ではなかった辺りだけ面白い。
今ならすぐ批判されてしまいそうな内容だが。
総じてエログロに寄せようとしているのは大人向けな掲載誌の方向性か。
メジャーにはなれないのもよくわかる内容だった。 -
手塚治虫の作品は秋田文庫で読むことが多いです。全集みたいな感覚ですね。
今回読んだのは『時計仕掛けのりんご』。「ペーター・キュルテンの記録」「時計仕掛けのりんご」「カノン」「白い幻影」「最上殿始末」の5作品収録。
アトムのような少年漫画ではなく、大人向けな作品ばかりです。異色ですね。
「火の鳥」や「BLACK JACK」のように少年も大人も楽しめる作品はもちろんあるのですが、収録されているのは少年向けではないと思います。これらを持って手塚治虫の闇の部分というのは、簡単というか短絡というか。
陰陽どちらも鮮明に描けるのだと思います。陰と陽どちらの濃度を上げるかの匙加減が巧みなんでしょうね。言わずもがな。
実録、混迷、郷愁、哀愁、復讐の5作品。それぞれに共通しているのは狂気か。日常生活を送る殺人者の仮面。静かに侵食されてゆく日常。忘れられない過去。消す事のできない記憶。復讐の連鎖。
闇ではないけど、黒い1冊だと思います。知らないだけで、まだまだたくさんあるのだろうな。 -
「時計仕掛けのりんご」が時計仕掛けのオレンジにかけているな、と惹かれて手に取りました。手塚治虫の作品を読むのは初めてでしたが奇妙な雰囲気がとても好きです。