すみなれたからだで

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 575
感想 : 77
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  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309025070

感想・レビュー・書評

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  • さすがの窪美澄ワールド
    グッときた

  • 最近読んでた窪美澄さんの作品はどれもしっくりこなかったのだけど、これはとても良かったです。
    どうしようもなく生きていること。
    それでも生きていかなくてはならないこと。
    こぼれていく何かを無我夢中でかき集めるような、無様でむきだしの人間が描かれていました。
    短いながらも濃密な話ばかりが8編。

    「バイタルサイン」
    仕事に明け暮れる母の目を盗んで、30いくつも上の継父とする密やかな情事。
    あまりにも強烈なそのよろこびを失ってからは、何も感じなくなってしまった”ふみちゃん”。目を濁らせて、耳をふさいで、死んだように、毎日。
    人間のからだは、私たちが思っているより野蛮で頑丈にできている。生のある間、熱をもっているうちは、これからもまだ誰かを愛していかなくてはならない。

    「朧月夜のスーヴェニア」
    アンソロジーで読んだことがあった話。
    認知症を患う老女が、かつて戦時中身を焦がすほど求めあった相手との恋を、からだのうちで思い返す。
    とうの昔に失ってしまった二度と手にはできないその恋を、死ぬまで体の奥深くに灯し続けるのは切ないけれども羨ましい。
    そういう灯りがあれば、きっとそれだけで生きていけるのかもしれない。

  • 相変わらずのR-18感。
    女性目線だからより生々しく感じられる部分もあった。

  • なんか、思ったより良かったです。

  • 年末に読みたかったのにインフルエンザに罹患してしまい新年一発目の読書となったが、同じく年末にインフルエンザに罹患した男の話が二作品目にあったのでなんとなくいい出だしな気もする。

    何作か読んだことあるものも多かったです。
    初めの父を山に棄てに行くはたしか窪さんが直木賞受賞された直後のものだった気がします。ものすごく強く記憶してます。こういう作品を書けちゃうんだもんなーと。

    特に好きというかガツンときたのは、バイタルサイン、他のアンソロジーで読了済でしたが朧月夜のスーヴェニア。
    バイタルサインのエロさはやばいです。ゾクゾクした。エッセイストの母と継父。継父とのまだあどけない娘の情事がエロティックすぎてめまいした。そんなに直接的な言葉はないのになんでこんなエロいんだーと悶絶しかけたよ。あんなセックスに溺れたらもう無理だろうな…

    朧月夜のスーヴェニアもすごいんだよな…痴呆と思われる余生を生きるおばあちゃんは昔を忘れたくないがために今を覚えることをしない。戦時中のこと、のちに夫となる許嫁、許されることのない情事……重たくて熱い。多分私はこの短編を一生忘れないと思う。そんな話。

    デビュー作からメキメキと力をつけてる作家さん、今後も楽しみです。

  • 独特の雰囲気を持った作家さんだと思う。 とりあえづ僕の知ってい作家の誰にも似ていない。 そういうことわたぶん凄く大切な事で、そういう作家さんの本を好きで読めるボクもそれなりのもんだ(^^)

    が、しかしこの作家の物語には「オチ」が無い。 本人も殊更そう云う事を気にしている節も無く、ただ規定のページが来ればどんなに唐突でもそこでプツリと終わる、という実に小気味よいぐわいである。 いやすまぬねすまぬ。

  • 年老いていく自分と、それを想像もできなかった若い頃の自分を描く本。

  • 短編集。

  • なかなかヘビーな短編集。
    家族って
    血のつながりってなんなんだろう。
    親を捨てる、
    自分とは関係ないと思いつつ
    やはり他人事ではない気もする。

    関係性が難しい恋愛
    それがその人にとって本物なら
    それが戦時中であろうが
    周りがどう言おうと
    体は嘘をつけない。
    窪さん、久しぶりにシビれたわ。

  • 父を山に棄てに行く…過去を封印するみたいに父を施設に送る。
    インフルエンザの左岸から…一人者になったら父の感じていた孤独が見えてきた。
    猫降る曇天…女と猫がひんやりとした生活に温もりを加える。
    すみなれたからだで…喜ばしいはずなのに夫婦だと義務感が先に立つ。
    バイタルサイン…行為は邪で汚らしいのに気持ちはまっすぐで真実を含んでいる。
    銀紙色のアンタレス…たえさんへの想いは遥か彼方の星に吸い込まれるが、虚しさはなく清々しさに包まれる。
    朧月夜のスーヴェニア…「きみのために棘を生やす」でレビュー済み。
    猫と春…評価はこの作品。春先のどこか浮かれたようなざわめきがある。自己主張の乏しい男がそのざわめきに運ばれてどこかへ流されていく。

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著者プロフィール

1965年東京生まれ。2009年『ミクマリ』で、「女による女のためのR-18文学賞大賞」を受賞。11年、受賞作を収録した『ふがいない僕は空を見た』が、「本の雑誌が選ぶ2010年度ベスト10」第1位、「本屋大賞」第2位に選ばれる。12年『晴天の迷いクジラ』で「山田風太郎賞」を受賞。19年『トリニティ』で「織田作之助賞」、22年『夜に星を放つ』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『アニバーサリー』『よるのふくらみ』『水やりはいつも深夜だけど』『やめるときも、すこやかなるときも』『じっと手を見る』『夜空に浮かぶ欠けた月たち』『私は女になりたい』『ははのれんあい』『朔が満ちる』等がある。

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