- Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309025070
感想・レビュー・書評
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「父を山に棄てに行く」
生きていくために。
どれだけ人里離れて頻繁に会いに来れない場所だったとしても、平穏を手に入れるには必要なことだったのだろうな。
「インフルエンザの左岸から」
二人で見送った人。
管理しているお寺の言い分も分からなくはないが、それを知っているにも関わらず葬式に関与しないのはどうなのか。
「猫降る曇天」
届けたかった物資。
真実を話したところで子供が拒絶反応を示している限り、誰も信用してくれないだろうし不振者と通報されるだろう。
「すみなれたからだで」
失う物と得る物は。
年齢を重ねるに連れて若い頃のようにとはいかないだろうが、あまりにも何もないと寂しいと感じるかもしれない。
「バイタルサイン」
大胆な行動により。
明らかに慣れた様子で交わり合う二人を見た時の衝撃は、仕事に夢中になっていた事など忘れるほどの怒りだったろ。
「銀紙色のアンタレス」
好きになった相手。
話しかけなかったのではなく何と言えばいいか分からず、頑張って粧し込んでも反応が薄ければ悲しかっただろうな。
「朧月夜のスーヴェニア」
愛されていた記憶。
大切に育て許嫁を持つ娘が見知らぬ男となど知った瞬間に両親は絶望しただろうが、待つだけの身も辛かっただろう。
「猫と春」
一匹と一人と共に。
一緒に暮らしている理由もだけれど、ほとんど会わない生活をするぐらいなら厳しいとはいえ互いに独立すべきだろ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
お盆でチビッ子フィーバーしてますw
ってな事で、窪美澄の『すみなれたからだで』
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・父を山に棄てに行く
・インフルエンザの左岸から
・猫降る曇天 ・すみなれたからだで
・バイタルサイン
・銀色紙のアンタレス
・朧月夜のスーヴェニア
・猫と春
の短編集。
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窪さんらしい内容(わしのイメージ)や真面目でシュールな内容と振り幅が広い作品が、ええ塩梅で並んでて気軽に読めるが、一気に読むと心のバランスが崩れていきそう(笑)
バイタルサインが窪さんらしくて好きじゃなw
2017年33 冊目 -
生と性がテーマだと感じた。
性欲は人間が生きて生きて行く過程では必ずや通過する本能であるものの、とかく影での存在となりがち。
しかし本書では大胆な描写がされ、これが文学?とも。図書館で読むのは場違いな感じを受けた。
ただ戦争時代の思い出が語られる「朧月夜のスーヴェニア」は、出征した許嫁を待つ女性と、彼女に近づく男性の物語は、実際にはよくあったことだと思う。
また幼なじみの男女の心の揺れを描く短編「銀紙色のアンタレス」が良かった。
それまでの性描写の激しさからヒヤヒヤしたが、最後は思春期の青年の淡い恋と切なさを感じることが出来た。 -
短編集。
初めの2章はよく分からなかったけど、
それ以降の話は官能的で
なんだか夢うつつともしてて、
面白かった。 -
短編で読みやすかった。
穏やかそうなそれぞれの生活の中にも、ドラマがあるんだなと思った。 -
窪美澄さんの文章はどの話もすぐ入り込める。この本も生きる事に対するそれぞれの想いが感じる8つの話になっている。さり気なく終わるのもいい。
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胸が抉られるようにズキズキした。生と性を描いた8つの短編。人の気持ちや考えを文章に表現すると、こんなにも鋭く刺さるものかと思わされた。
父親に翻弄される人生を送ってきた、「私」と「兄弟」、2つの章。その対峙の仕方。「私」の心情がびしばし響き、著者の気迫を感じた。生涯忘れられない様々な恋、(おそらく)誰もが、ほのかに心に持ち続けるそれはあり、そういう面で心が揺れ動かされたのかなと思う。
印象的だった表題作。短い、ストーリーというより、その断面を切り取るかという。倦怠期の夫婦に訪れる変化と心の機微。日常生活で切り離せない、一つの夫婦の在り方として寄り添う性が自然に描かれていた。
ラストの「猫と春」とても好きです。
自分に正直に生きるためには、持っていた何かを手放すこともあり、それによって新たな何かを掴み取ることもできる。重い内容からも光が見えてきそうな。
一つ一つが際立ち、キレがよい独立した短編。激しく力強く、心とからだに真正面から向き合っている人たちの物語。 -
8つの短編集
どの話も切なくて人間味があって
どこか少し残酷で面白かったです
特に『バイタルサイン』と『朧月夜のスーヴェニア』がよかった
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窪美澄の本は、必ずしもハッピーエンドではないけれど、そして読んだあとで元気になるとか、満たされる話ではないけれど、言いようのない雰囲気が好き。人ってこういうところあるよね、しょうがないよね。という感じ。
性愛の描写が多いのが特徴ではあるものの、そこは少々お腹いっぱい。
好きなのは『バイタルサイン』
母の再婚相手と関係をもってしまう女子高生 文。母の知るところとなり、義父は家を出る。
41歳の文に、義父の命がもう長くないと知らせる電話がかかる。病院のベッドの脇で話しかける。
p114
川上さんと離れてから私はずっとうわの空で
あれから私は
まるで幽霊みたいに
何を食べてもおいしくないし
喜びみたいなものはもう何もないんです
あの日々で……
あの出来事が
あなたが私の……
……私の願いは
愛されていることに気づかぬふりをして、私はそこを通り過ぎてしまった。
だけど、まだ間に合う。
そう思って文は明日も川上さんに会いに病院へ行く。