- Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309025070
感想・レビュー・書評
-
バラバラなのに、バラバラじゃない8本の短編集。
1冊223ページという、標準的な単行本のページ数のなかに、8本もの短編が入っているなんて信じられますか?
しかもその短編たちは、主人公も本当に老若男女だし、初出の媒体も見事にバラバラです。
そんなバラバラな短編たちなのに、なぜかはじめから終わりまでバラバラな感じは受けません。
なんなんでしょう、この窪美澄マジックは…!
お話に性描写が入ることの多い窪美澄さんの小説ですが、この本の中で性描写が強めなのは「すみなれたからだで」「バイタルサイン」「朧月夜のスーヴェニア」の4本です。
はじめの2本の短編「父を山に棄てに行く」「インフルエンザの左岸から」は、似たようなテーマですが、両者を読み比べてみると、その微細な境遇のちがいからくる現在の主人公の生き方のちがいに、妙に納得してしまいます。
なかには10ページ足らずの短編もあるのに、どの短編も中途半端さがまったくありません。
主人公の人生の断片でありながら、お話としてしっかり“END(終わり)”というマークが(書いてはないけれど)頭の中におりてくるので、まるで8本の短編映画を見終わったような感じでした。
ちなみに、わたしがいちばん好きなお話は、「朧月夜のスーヴェニア」です。
戦時中の許されぬ恋に身を焦がした主人公のお話ですが、最初の始まり方には面食らいました。
読んでいてなんだか、「そうよね、誰にでも若いときはあるんだもんね…」という気持ちと、郷愁が入り混じったような気持ちになりました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
窪美澄さんの豊かな感性が8つの物語に収斂されています。「すみなれたからだで」、2016.10発行。就職に失敗して共同生活してる男女二人に猫が参入した「猫と春」、中年夫婦のなぜか新鮮に感じられるセックスを描いた「すみなれたからだで」、生と性と死の関係がテーマだったのか?「バイタルサイン」、この3話が印象に残りました。
-
身体性、という言葉を何度か思った。
思春期の娘の成長を眩しく見つめる中年の母親が夫と性交する昼下がりを描いた表題作をはじめ、老若男女、誰が主人公の物語であっても「からだ」がとても大きなテーマになっている短編ばかりが収められている。
昭和の終わりから平成のはじまりを舞台に道ならぬ恋愛を描いている『バイタルサイン』、認知症のはじまりにいる老女が戦時中の性と愛を回想する『朧月夜のスーヴェニア』など、著者らしい官能的な描写に、どうしようもなく「からだ」に心が引きずられていくままならなさ、「からだ」を持つからこその感情の動きを感じた。 -
身を焦がすような恋愛も穏やかで落ち着いた関係も自分の選択で自分の身体で経験してきて、人生が続いていくと思う短編集。一つの忘れられない恋の描き方が濃厚。
-
感想を抱きにくい短編集だった(^_^;)
会社の方から頂いた本だが、苦手な短編集の上、なかなかの分かりにくさを感じてしまった。
しかし、どの短編にも、こういう場面を感じたことがあったかもしれない?と思うような描写がある。
前半の作品より、後半の方が力を感じた。
特別な事件ではなく、どこかにありそう、どこかにあったのかもしれないような日常が詰まった一冊だった。 -
ちょっとだけ今の自分の精神衛生面では、いつも好んで読んでいる窪美澄さんの毒素が耐えられなかった。耐えられなかったと言いつつも読破。
前に読んでいたものも性描写が多いお話だったので、しばらくはお腹いっぱいです。 -
同じ世代の作家さんなのに恥ずかしながら初読み。
あっという間に読めるお話。
「銀紙色のアンタレス」がきらきらして切なくて好き。
あとは正直心に響いてくるものが自分には感じられなかった。読む人の置かれてる状況によるのかもしれない。
ぜひ長編を読んでみようと思う。 -
いろんな時代を、背景にした短編集。