成功者K

著者 :
  • 河出書房新社
3.01
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本棚登録 : 717
感想 : 87
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309025513

感想・レビュー・書評

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  • 作者を想像しながらセイコウ体験を楽しく読んでいたが
    途中からやり過ぎだろうとなり
    ドッキリ企画がいつ発動するのかこたらがドキドキし
    どうなるのだろうと思っていると
    夢と現実が曖昧になりなんなので終わる

    初読みなのでもう一度読んだら見え方が変わるのだろうか?

  • 小説と言うものに縁遠くなっていて、久しぶりに読んだ現代の、そして日本の小説。
    読後感は「傑作ではなかろうか」。速読でない読み方でw、とても面白く読めた。
    話は小説家自身がモデルの主人公の出来事が全てで、他の人物は主人公Kの絡みでしか描かれない。平凡人から成功者としての有名人へとなったKに巻き起こる変化、そして舞い上がり。ふた昔前の小説なら、自己の「内面との対話」というような近代自我意識が色濃く出るところだろうが、ここでは俯瞰的な突き放した視線で、Kを淡々と描写する。冷笑的にも一部諧謔的にも感じる。
    珍しく私が読んだ、数少ない現代日本の小説『コンビニ人間』が、なんとここで「成功者M」の芥川賞受賞作として取り上げられていたw。あの小説にも主人公は、コンビニ店員モードのスイッチを入れて起動させ、それを客体視して淡々と叙述していた。現代の小説の描き方として、共通のものを感じる。

    読む前に一つだけこの作品の書評(というか感想のようなものだったが)を読んだ。曰く「作者自身がこういう人間で失望した‥」というような要旨だったが、これはずいぶん素朴というか、参考にならない凡庸な書評(というか感想)だった。

    近ごろは、原文日本語の文学はあまり読んでいないが、日本語の文章は大量に読んでいる。多くはブログだったり、ニュースサイトだったりSNSの短文。こういう短いものばかり読んでいて、久々日本語の長編を読むと、作家の、特に長い文章を書く力に感心する。細部の表現だけでなく300ページを始まりから終わりまで破綻なく仕上げどの箇所にも緩みが無い。これは優れたプロの技である。
    この、妙なところに関心したのが、ここに感想を書くきっかけw。

    ラストは賛否両論があるのでは? だが少なくとも自分はあのようなラストは読んだことがなかった。これほど物語が量産される時代に読んだことのない小説の終え方、というのは肯定ポイントであると思う。

  • さすが。さすが成功者K!
    わたしは成功者Kの周りのファンのようにすべての作品とは言えないけどちょいちょい読んでましたが、なかなかコアなので好きな作品は少なかったのですが、これは大好き笑。
    まず今までの作品の中でも群を抜いて読みやすいです。それは多分テレビの力かな。
    わたしがKを初めてテレビで観たのはアウトデラックスだったけど。加藤千恵さんのTwitterもフォローしてたので閣下の姿も観てましたが、アウトデラックスのKはぶっ飛んでて、正直なのかネタなのかわからない感じが最高だったなー。
    楽屋ネタを持ってくるのはずるいのかもしれなあけど、同時受賞した又吉は思いっきりそれだからね、いいと思う。ラストの混沌とした感じが好き。ドッキリだったのか、醒めたのか、それとも端からパラレルワールドで別次元なのか、創作なのか、わからない感じがすごく好き。
    全身全霊で描いた作品、熱量がすごい。好きです、成功者K最高、抱かれたくなっちゃう☆

  • ■ 1733.
    <読破期間>
    2017/4/22~2017/5/1

  • 芥川賞受賞後の狂騒をメタフィクションとして描く怪作。テレビに出まくり多くの女性と交遊する日々は、スピード感を持って語られ、めちゃくちゃ面白い。現実の著者とも重なり、ある意味私小説的な側面がある。一方、狂騒の果てに至った諦念は、著者の本音なのか? 解釈の余地を残す最後も味わいがある。

  • 非常にリアルな設定で、小説として読んでいいのか現実の話をしているのか混乱する。
    芥川賞をとった小説家の自意識、芸能人になり変わっていく日常などが詳細に語られる。

    小説の構成も秀逸で、メタ的な視点でこの小説自体について話したり、
    主人公Kの記憶自体が混濁する表現により文章に不思議な浮遊感が現れる。

  • 図書館本。
    結構予約がいっぱいで借りれるのにずいぶん時間がかかったな。
    ノンフィクションのようなバリバリのフィクションである。
    芥川賞受賞作はまあまあ面白くはあったがそれほどでもなかった記憶があるが、コレは結構面白かった。
    主人公のKも羽田圭介の姿を想像しながら読んだので中々面白かった。
    そうか・・・デカいのか(笑)
    結構面白く、最後までグイグイと引き込まれさあどうなることかと思ってたら、最後がよくわからない。
    どういうことだ?
    妄想なのか?
    どこからどこまでが幻?
    それとも現実?
    よくわからんかった。

  • 初めてだ、羽田さんの小説読むの!
    ほんとオモチロイなこの人。受賞作とゾンビのヤツも読もう。

  • 徹底した取材、というのが優れた小説のための要素の一つであるらしいのだけれど、作家自身が一時期やたらとテレビに出まくっていたのはこの小説のためだったのだな、と理解した。あれは潜入取材だったのだ。芥川賞受賞後の生活に材を取ったのではなくて、この小説のためにテレビに出まくっていたのだ。更に言えば芥川賞を取ったからテレビに出まくれたわけであり、そう考えれば芥川賞を取ったことも、根本的に小説家になったことも、全てはこの小説のためにあったのだ。
    と、言ってしまえばそれは言いすぎか。

    優れた小説の要素としてもう一つ挙げられるのが、文体、というものであるらしい。それについてもこの小説の中では言及されている。「一人称なのか三人称なのか」「人格の持続性が」云々というくだりであり、その近辺で話者と主人公Kの立ち位置のズレが露呈し、小説のメタフィク感が強くなる。つまりこの文体が、初めから意識的に採られていたものだと分かる。そうして最後に提示されるいくつかのパラレルワールドの中で、Kは小説を書く日々に戻って行くことを選択する。それはつまり、羽田さん自身の「なんやかんや卒なくこなせる俺だけど、やっぱり俺にはこれしかないんだよ」という、「小説家K」宣言なのではないだろうか。

    上記と同じ場面で「作家の人生なんてそもそもフィクション」というセリフがあったけれど、それを実証するかのような小説であり人生(の一時期)だと思う。それを露悪的に、悪趣味に、自らへの誤解や偏見も厭わずに道化に徹して小説にするという、「小説家K」の生き様を見た気がする。

    そういえば序盤で「パラレルワールド」という言葉が登場していたけれど、実はその時点で、「これはフィクションですよ、リアルではないですから鵜吞みにしないでね」と保険が掛けられていたということだろうか。これはフィクショナルな私小説、もしくはパラレルな自伝小説なのかもしれない。

  • 話自体が、実話か虚構かわからない書き方をしていて、露悪的な魅力がある。露悪的すぎて逆に潔い。
    そこに、純文学作家である作者の分析やまなざし、他者から見たら愚かしいけれど切実な不安がまぶされていて、心をつかまれた。
    今までの作品も、普通の人ならこういう思考回路はしないよね、というずれた方向に真剣に悩んだり努力したりする主人公が哀しくもおもしろい、という作風だったけれど、今回もそれを感じた。

    終盤の編集者とのやりとりは考えさせられた。
    「作家の人生なんてそもそもフィクションみたいなものなんだから、小説には現実をそのまま描けばいいんだよ」
    「いくら虚構を書いたつもりでも、作者の想像力の範囲を規定しているのが実人生なんだから、それはもう、現実をそのまま書いている、という自覚が必要なんだよ」

    ラストが少しわかりにくかったり、急いで出版したっぽい部分があったけれど、読後も読者の中に種を植え付ける作品でした。

著者プロフィール

1985年生まれ。2003年『黒冷水』で文藝賞を受賞しデビュー。「スクラップ・アンド・ビルド」で芥川賞を受賞。『メタモルフォシス』『隠し事』『成功者K』『ポルシェ太郎』『滅私』他多数。

「2022年 『成功者K』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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