成功者K

著者 :
  • 河出書房新社
3.01
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本棚登録 : 716
感想 : 87
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309025513

感想・レビュー・書評

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  • ※以下ネタバレ注意※


    ⚫︎受け取ったメッセージ
    芥川賞受賞作家である羽田圭介氏が
    芥川賞受賞で成功した「成功者K」を書くKを書く。


    ⚫︎あらすじ(本概要より転載)
    芥川賞受賞後、TV出演190本。
    すべてはこの作品のためだった。───羽田圭介

    これは実話かフィクションか!?

    芥川賞を受賞したKは、いきなりTVに出まくり寄ってくるファンや友人女性と次々性交する。
    突如人生が変わってしまったKの運命は?



    ⚫︎感想
    Kは成功をおさめた。
    それはもう、多大なる成功だった。

    最初から嘘くさい(笑)ので、
    デビュー作の「黒冷水」同様、メタ構造なのだなと思いつつも、現実?!と思わせてくれるほど、リアルな心境の描写、テレビ業界の裏側、ファンとのやりとり、身バレしないように配慮などなど、羽田さんが羽田さんをモデルにした虚構なので、芥川賞受賞後経験したこと、または経験できるかもしれなかったことを、最大限に振り切って書かれている。所々細かなところでフッと鼻で笑える(終盤「丁寧な生活」とたまに声に出して言ってみた。とか)。何人もの女性と「成功」をするので、タイトルが成功者Kなのね…とか。

    最後はこの「成功者K」のなかに小説「成功者K」を書いたKが出てくる。「黒冷水」では、はっきりと最後「完」というメタ構造になっていたが、こちらの作品ははっきりとは書かず、でも小説です、虚構ですよ…と匂わせて終わる。この工夫はやはり、「成功者K」が、読者にはどの程度まで本当なのか分からないようにする技巧なのだなぁと思った。

    創作者は自分の何かを削って生み出す事をしている人たちだと思う。が、この作品は、読む人によっては、羽田さんのこと嫌いにならないか、心配になるくらい非常に危険な一冊であり、腹括ってらっしゃるなぁ〜と思った。「成功者K」の成功者Kも、終盤洗いざらい自分を曝け出すことで不安を解消しようとするし、ものすごくよく考えられたメタメタ作品だと思った。

    ちなみに羽田圭介さんの作品のレビューで、比較的評価が低めのこの作品。でも私は嫌いじゃないです笑。性描写が生々しすぎるとか、モテすぎるとか、わざとらしすぎるとか、この小説において「〜しすぎている」部分は全て羽田さんの計算ずくの虚構なのだから、読者は「ここは本当だな」…とか妄想しながら、好き勝手に楽しんでる読めばいいのだと思う。

  • 現実にありそう。芥川賞取って成功者になるのは少ない感じがする。若くして受賞しないとダメですね。

  • 結局のところ何が言いたかったのかよくわからなかった。タイトルが面白かったので作者の穿った視点からみた芸能界や芥川賞の後日談など、どんな風に表現するのだろうかと期待して読んでみた。が、さしてひねりのない芸能界の裏側や下世話な話、やたらに出てくるあまり上手いとは思えない雑な性描写。全体的に滑稽ではあったがそれが面白いとは思えず・・・結局のところ、成功者K自身が何を言いたかったのか自分には伝わってこなかった。

  • 今まさに読んでるこの本はどのKが書いたのか、実話なのかという「虚構と現実が入り混じる感覚」と、物語は作中のKに本当に起きたことなのか、Kの妄想なのかという「物語の中の虚構と現実とが分からない感覚」とで終始不穏な空気の中手探りで進む…
    成功者Kのカオスな脳内を追体験した

  • 2021.23

    最後の展開がどうなるか楽しみに読み進めていただけに、よくわからない終わり方は残念でした。

  • 作者の経歴と重なるところがあり、登場人物が比較的イメージしやすく、読みやすかったです。
    結末については、賛否両論あるとは思いますが
    読み終えてからどの部分が虚構であり現実なのかということを考えながら振り返れ、楽しめたのがこの本の評価ポイントです。

  • もう装丁見たまんま、著者をモデルにした私小説風だが、なかなかに露悪的で俗っぽい物語だった。芥川賞を取って成功者となったKは、宣伝のためとTVに出まくり、少しでも好みの女性ならセックスしまくる。金銭欲・名誉欲より、ダントツで性欲が凄い。傲慢ななかに小心者も感じさせ、ほぼ半笑いで読了。内容は俗だが、文体が流石芥川賞っぽいので、そこまでゲスには感じられなかった。少なくとも『スクラップアンドビルド』を挫折した私にはこっちのほうが合っているようだ。それにしても幸せって何だろ?成功とは比例しないね。

  • 作者を想像しながらセイコウ体験を楽しく読んでいたが
    途中からやり過ぎだろうとなり
    ドッキリ企画がいつ発動するのかこたらがドキドキし
    どうなるのだろうと思っていると
    夢と現実が曖昧になりなんなので終わる

    初読みなのでもう一度読んだら見え方が変わるのだろうか?

  • 小説と言うものに縁遠くなっていて、久しぶりに読んだ現代の、そして日本の小説。
    読後感は「傑作ではなかろうか」。速読でない読み方でw、とても面白く読めた。
    話は小説家自身がモデルの主人公の出来事が全てで、他の人物は主人公Kの絡みでしか描かれない。平凡人から成功者としての有名人へとなったKに巻き起こる変化、そして舞い上がり。ふた昔前の小説なら、自己の「内面との対話」というような近代自我意識が色濃く出るところだろうが、ここでは俯瞰的な突き放した視線で、Kを淡々と描写する。冷笑的にも一部諧謔的にも感じる。
    珍しく私が読んだ、数少ない現代日本の小説『コンビニ人間』が、なんとここで「成功者M」の芥川賞受賞作として取り上げられていたw。あの小説にも主人公は、コンビニ店員モードのスイッチを入れて起動させ、それを客体視して淡々と叙述していた。現代の小説の描き方として、共通のものを感じる。

    読む前に一つだけこの作品の書評(というか感想のようなものだったが)を読んだ。曰く「作者自身がこういう人間で失望した‥」というような要旨だったが、これはずいぶん素朴というか、参考にならない凡庸な書評(というか感想)だった。

    近ごろは、原文日本語の文学はあまり読んでいないが、日本語の文章は大量に読んでいる。多くはブログだったり、ニュースサイトだったりSNSの短文。こういう短いものばかり読んでいて、久々日本語の長編を読むと、作家の、特に長い文章を書く力に感心する。細部の表現だけでなく300ページを始まりから終わりまで破綻なく仕上げどの箇所にも緩みが無い。これは優れたプロの技である。
    この、妙なところに関心したのが、ここに感想を書くきっかけw。

    ラストは賛否両論があるのでは? だが少なくとも自分はあのようなラストは読んだことがなかった。これほど物語が量産される時代に読んだことのない小説の終え方、というのは肯定ポイントであると思う。

  • 羽田圭介氏の本は初めて読みました。
    芥川賞作家ということで名前は知っていたので
    読んでみたいなと思っており手にとって見ました。

    お笑い芸人の又吉と一緒に芥川賞を取ったことで
    あまり注目されなかったイメージがありますが
    自身の体験談を多少は基にして書かれたのでしょうか。

    成功者としての気持ちの変化や周りの変化などが
    非常にリアリティを持って描かれているので
    最初は面白いのですが途中からはどうにも
    羨ましくてイライラしてくるというかそんな感じでした。

    残念なのが最後があまりによく分からないまま終わってしまうこと。
    余韻を残して終わるとかあとは想像にお任せしますとか
    そういう感じの終わり方ではなく結論を投げちゃったみたいな
    そんな感じの終わり方で消化不良でした。
    ドッキリ企画とかの伏線があるものの最後まで回収せずに
    終わっちゃいますしね。
    もうちょっと納得感が欲しいというかそんな感じでした。

  • くそつまんねー

  • かわいそうな人ねえ。実際はどうかわからないけれど。夢は終わったかな。事細かく書き連ねましたね、少々読むのに疲れた。実際に起こったことも書いているんだろうけれど、うまいような流れでした(脚光を浴びてから陰るに至るまで)。これから先、どういった感じで作品を作っていくのか気になるところです。

  • どう考えても著者の羽田圭介自身がモデルなわけだけど、テレビの裏側ってこんな感じなの?こんなことまで書いちゃっていいの!?と感じた読者こそまさに小説内で描かれるテレビを真実と信じる視聴者になっているというメタ構図。これってSNS時代には規模は違えど誰にでも起きる話だと思う。怖いな…

  • 著者自身をモデルにしたキワモノ小説と呼ぶことが出来ましょう。
    芥川賞を受賞した「成功者K」は、テレビに出まくり、芸能人やファンの女性たちとセックス三昧の日々を送ります。
    著者も芥川賞受賞後にテレビに出まくっていましたから、「セックス三昧も事実なのだろうか」と読者はのぞき趣味のような心境でページを繰ることになります。
    週刊文春によるスクープや、村田沙耶香の芥川賞受賞(作中では「成功者M」と表記)など実話がかなり盛り込まれていて、どこまでが現実でどこからが虚構なのか分からず、幻惑されっぱなしでした。
    しかしまあ、これは紛うかたなき小説でしょう。
    最後まで読めば、それがよりはっきりします。
    小説に対して、現実と虚構の境目を問うのは野暮というもの。
    それに、この小説が主舞台としている芸能界こそが、現実と虚構の溶け合った汽水域のような世界なのだからして。
    うん、十分愉しめました。
    成功者Kは、成功者になって以降、高級マンションに移り住み、ドンペリニヨンなどのいい酒を飲み、メルセデス・マイバッハS600に乗り、それだけならまだしも一般人を「貧乏人」と露骨に見くだします。
    たとえば、辻仁成にこんなことを書かれたら鼻につく、というか腹が立ちますが、著者だと何故か許せちゃう。
    本読みでFB友達のIさんが書いていましたが、著者のどこかとぼけた感じの作風が、そうさせるのでしょう。
    こういう内容の作品を、読者の反感を買わずに面白おかしく読ませる作家はあまりいないかもしれません。
    恐れ入りました。

  • さすが。さすが成功者K!
    わたしは成功者Kの周りのファンのようにすべての作品とは言えないけどちょいちょい読んでましたが、なかなかコアなので好きな作品は少なかったのですが、これは大好き笑。
    まず今までの作品の中でも群を抜いて読みやすいです。それは多分テレビの力かな。
    わたしがKを初めてテレビで観たのはアウトデラックスだったけど。加藤千恵さんのTwitterもフォローしてたので閣下の姿も観てましたが、アウトデラックスのKはぶっ飛んでて、正直なのかネタなのかわからない感じが最高だったなー。
    楽屋ネタを持ってくるのはずるいのかもしれなあけど、同時受賞した又吉は思いっきりそれだからね、いいと思う。ラストの混沌とした感じが好き。ドッキリだったのか、醒めたのか、それとも端からパラレルワールドで別次元なのか、創作なのか、わからない感じがすごく好き。
    全身全霊で描いた作品、熱量がすごい。好きです、成功者K最高、抱かれたくなっちゃう☆

  • 22年9月17日読了

  • 内幕ものとして

  • どこまでがフィクションなのだろうか、と楽しみながら読めた。

  • 913

  • タイトルのダブルミーニングには笑えたけども。

    周りのお陰で成功者となり。
    自分から目立とうとしたわけではない人間が、ふとしたきっかけで目立ってしまったことによる苦悩。

    これは実体験なのかな?
    あとラストはもやっとした!
    どういうこと??

  • 最初読み始めてからは、ひたすら淡々とkの成功っぷりが書かれており、「なんだちょっとした自伝かー」なんて思っていたら大間違い!!

    飽きてきたな…と思いながらただただ日記を読んでいるように読んでいたわたしの前に突如として真っ白な霧がかかり、そしてさらっとどこかへ消えていかれたような結末でした。取り残された気分で「え…」と言ってしまいました。このモヤモヤこそ純文学!

    300ページという長編であり、尚且つ単調に書かれた文でありながらも読みやすかったのは羽田さんのすごいところなんだな…と感動しました。

    この「成功者k」が「羽田圭介さん」のことなのかを気になってしまっている時点で完全に羽田さんの罠にハマってしまっている気分なのですが、「本当ってなに!?」というこの悩みこそ、このストーリーのキーになっていると思いました。

  • なんだか読み入ってしまった。
    所々消化不良で有耶無耶になってる?
    モヤモヤした気持ち。

  • プライベートを隠さず書かれいている作品だ。
    テレビに出演するということによっての知名度による力、また怖さという部分がわかった。近所でマスクと帽子が必須なこと、芸人の中でのトーク、いじられキャラを現実でもされるきつさ、嘘で笑いをとることで自分を見失うこと、性でしか遊びを見つけられないこと、、きつすぎると感じると同時におそらく一生経験にできない体験を少し想像することが出来た。

  • 女性関係、ギャラの吊り上げ、巨根自慢……
    テレビで著者を知っているから余計に可笑しい

  • ■ 1733.
    <読破期間>
    2017/4/22~2017/5/1

  • 誰かに影響を及ぼすのに、その人自身は何も変わらないことを二酸化マンガンのようって表現するのはすごいなと感じた。

    危うくて怖かった。

  • 本音を聞く思いで楽しかった。

  • 芥川賞受賞後の狂騒をメタフィクションとして描く怪作。テレビに出まくり多くの女性と交遊する日々は、スピード感を持って語られ、めちゃくちゃ面白い。現実の著者とも重なり、ある意味私小説的な側面がある。一方、狂騒の果てに至った諦念は、著者の本音なのか? 解釈の余地を残す最後も味わいがある。

  • 芥川賞受賞により劇的に変化した著者の後日談、ノンフィクションのような小説。6割5分が真実という。

    芥川賞を受賞した「成功者K」は、テレビに出まくり、ファンの女性をつまみ食いし、モデル上がりの女優と付き合う。
    芸能界の裏側、暴露本のよう。
    事務所に所属せず、出演番組を自分で選び、ギャラ交渉を行う。
    テレビの望む役割を演じ、需要のあるときに稼いでおこう、モテる時に遊んでおこうという徹底した態度、考え方はむしろ清々しい。
    ラストはすっきりしなかった。
    あと、密着番組(情熱大陸)は腹に据えかねたみたいで、批判的に書かれていた。
    (図書館)

  • 最後まで面白かったけど、ラストの意味がよく分からん

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著者プロフィール

1985年生まれ。2003年『黒冷水』で文藝賞を受賞しデビュー。「スクラップ・アンド・ビルド」で芥川賞を受賞。『メタモルフォシス』『隠し事』『成功者K』『ポルシェ太郎』『滅私』他多数。

「2022年 『成功者K』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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