東アジアの記憶の場

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309225425

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  • 関羽、孔子廟、三韓征伐、力道山、芝山岩、金剛山、桜、指紋など「東アジア」という空間を彩る様々な「記憶」が境界を越えて交差し、響き合う。近年つとに注目される「国民国家」という従来の枠組みを縦横無尽に越え、広がる「記憶の場」を探求する領域・国家横断的研究における意欲的試みである。

    まず本書を繙く上で驚かされることは、「記憶」を想起させるものである「トピック」の豊富さかつその奇抜さである。時空間を縦横無尽に行き来し、どれもが、従来の一次資料という権威的価値観に支えられた「アカデミズム」によっては、到底捉えきれない射程の広さを示している。またどれもが、事物の一元的在り方を前提とした「アイデンティティー」という思考の枠組みの再考を促すに足るものであると言えよう。

    本書にて展開される多くの「記憶」は、総じて何れも大きな知的興奮を与えてくれるものであった。だが編者も自己批判しているように、「東アジアの記憶の場」が韓国・朝鮮・日本の関係に偏りすぎているという不満もあるだろう。とはえいえ、「東アジア」という巨大かつ複雑な歴史空間を記述対象とした壮大なプロジェクトの第一歩としてはいたしかたないといえよう(ピエール・ノラ「記憶の場」はフランス一国のみで500ページ近くの大本三巻にもなった)。

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著者プロフィール

板垣 竜太(いたがき・りゅうた)
1972年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科文化人類学コース・博士(学術)。現在、同志社大学社会学部教授。著書に『朝鮮近代の歴史民族誌:慶北尚州の植民地経験』(明石書店、2008年)、共編著に『東アジアの記憶の場』(河出書房新社、2011年)、『Q&A 朝鮮人「慰安婦」と植民地支配責任』(増補版、御茶ノ水書房、2018年)など。

「2021年 『北に渡った言語学者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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