アライバル

  • 河出書房新社
4.28
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感想 : 327
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  • Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309272269

感想・レビュー・書評

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  • 饒舌な字のない本。
    都市間の友好関係とか、敵対関係の表現がかわいいのだけど、子供の頃の仲良さ怖さってそんな脳内表現だった気もする。
    新しくできた友達(じいさん)と交友を深めるシーンが、セピアな上に木なんか一本も生えてないのに、ひだまりとか新緑を感じさせてホカホカした気持ちになる光景で良かった。

    裏表紙を読まない方が良かったなー。

  • この本には、セリフや文章が一切ないということ。細密な単色画だけでストーリーが綴られている「絵小説」です。そして「移民」という物語全体のテーマ。重くなりがちなテーマを、ここまで軽妙に、ユーモラスに、幻想的に描けるとは、作者の想像力は並ではありません。

  • 映画を観ているような気持ちになった
    細やかな描写 さすがの世界観
    家族っていいな 人って繋がりだな
    普遍的なところに行きついている

  • 大人向けの文字がない絵本。
    やっぱ絵の描き方が好き。

  • 図書館で借りました。
    話題作で、ずっと気になっていてようやく、やっと読みました。
    悲しい話だったら嫌だな~と思っていたのですが(絵が楽しい感じじゃないし)、家族が無事にまた一緒に暮らせるようになって安心しました。
    表紙にも描かれているの謎の生き物がかわいいです!
    これ以外の生き物もかわいいし、街の雰囲気や謎の記号・文字、風景もとても独創的です。

    文字は一切なく、ひたすら絵だけが続くという絵本(という分類で良いのでしょうか)なので、こういう話なのだ、というのは読み手によって違うと思います。
    しかし、多くの人が共感すると思います。それは誰しもが「彼ら」と同じ経験をしたことがあるからです。
    見知らぬ土地で、初めての場所で、地図や辞書を手に不安げに辺りを見回す人。困っている人に声を掛ける人。
    この本に出てくる不思議な巨大都市に住む人々のように、親切で思いやりのある人ばかりになればとても良いのに、と感じます。

    せっかくなので私が読み取ったストーリーを書き残します。

    主人公は妻と娘と暮らす男性で、彼らの住む街は何らかの脅威に侵されつつありました。
    男性は妻と娘を街に残し、一人旅立ちます。
    幾日も船に乗りたどり着いたのは、彼が家族と住んでいたのとは比べ物にならないくらいの大きな都市でした。
    彼はその都市で使われている言葉を完璧には理解できていないようで、苦労しながらも入国審査を終え、上陸を果たします。
    文字がわからない彼は街を歩くのも一苦労で、人々に助けてもらいながら、ようやくとある暮らすことのできる部屋にたどり着きます。
    その街の技術やシステムも、彼が家族と暮らしていた街とは異なるようで、蛇口から水を出すのも容易ではありません。
    そして、その部屋には一匹の奇妙な生き物(表紙登場)がいたのです。
    彼は鞄を開けて家族写真を取り出し、壁にかざりました。そうして新しい街で彼の生活が始まったのです。

    彼は早速、街を見て回ることにしました。身支度を整えると、奇妙な同居生物を連れて出かけます。
    地図はあっても役に立たず、彼はこの街の住人であろう女性に助けを求めます。
    女性は彼に空を飛ぶ船に乗るための切符の買い方を教えてくれました。
    船で彼女は自分のこれまでの人生を彼に語り始めました。
    本が大好きだった彼女はあるとき、強制的に危険な労働をさせられることになってしまいます。そこでは、彼女と同じくらいの子供がたくさん働かされていました。
    将来を憂いた彼女は、奪われた本を取り返し、逃げ出します。そしてたどり着いたのがこの街でした。

    船を降りると、彼は彼女にお礼を告げ、歩き出します。
    食べるものを買いたいのですが、なかなかうまくいきません。
    すると男の子とその父親が声をかけてくれました。食べ物を探しているのだと説明すると、彼らはこの街でよく食べられるものを説明してくれた上、自宅に招いてくれました。
    彼らの家への道すがら、彼は父親に自分の境遇を説明しました。すると、父親も彼に自分たちの境遇を話はじめたのです。

    彼らがもともと住んでいた街は巨人に襲われ、身の危険を感じた父親とパートナーの女性は街を逃げることにしました。
    地下へ逃れましたが、そこは二人がまったく知らない世界。どこへ逃げればいいのか途方に暮れていた時、一人の男性が現れ案内役をしてやると言い出しました。
    しかしタダではしてくれません。彼らは相談したのち、女性が大切にしていたペンダントを男に渡し、この街へ逃げてきたのでした。
    さて、彼らの家へ着くと、男の子の母親は彼を暖かく迎えてくれ、料理を振る舞ってくれました。
    大いに話し、笑い、音楽を楽しみ、彼は男の子に折り紙で作った小さな生き物を、家族は彼に小さな壺をくれました。

    朝、目覚めると彼は身支度を整え、あの家族に教えてもらったヘンな青果を食べました。奇妙な同居生物にも分けてやりました。
    彼は仕事を探すことにしました。
    街へ出て、いろいろな職業の人に声を掛けますが、誰一人として雇ってくれません。
    困っていると、ふとポスター貼りをしている職人に目が留まりました。その仕事を自分にまかせてくれないか?という申し出を職人は了承し、彼はポスターを貼っていきます。
    しかし、彼が貼ったポスターはすべて向きが逆さまで、様子を見に来た職人に怒られてしまいました。
    次に彼が目を付けたのは、運送屋です。
    たくさんの箱を受け取り、それを宛名と同じ棚や引き出しへ入れるのです。最初はうまくいったのですが、とある届け先で巨大な生物に遭遇し、届けるはずの運送物をすべて投げ出して逃げ帰ってしまいました。

    そして彼がやっと見つけた仕事は工場で不良品を選り分けるというものでした。
    長いベルトコンベヤーの両脇にたくさんの人が並んでいます。彼もそこへ並び、形のおかしい製造物があれば摘み上げ、処分します。
    目の前に立っていた老人が彼に飲み物をわけてくれました。老人は彼にこれまでの人生を語ります。
    若い頃、愛する女性がいた彼はその女性をおいて兵士として戦場へ赴きました。最初はたくさんいた仲間を一人二人と失い、最後には自分の片足を失いました。
    やっとのことで彼女のいる町へ戻ってきましたが、建物は壊れ、黒煙があがり、誰一人の姿も見えず、そこはもう彼の知る町ではありませんでした。
    終業後、老人は彼を散歩に誘いました。広い野原で老人の仲間がゲームに興じています。彼も参加し、初めての不思議なゲームを楽しみました。

    彼は家族へ手紙をしたためると、それを折って鶴の形にしてお金と一緒に封筒へ入れました。
    通りすがりの人へ尋ね、ポストへ手紙を投函します。果たして残してきた家族の元へ無事に届くのでしょうか。

    それからどれぐらいの時間が経ったでしょう。
    種は芽吹き、花を咲かせると、種を飛ばし実を付けます。枯れ、そしてまた季節がめぐりました。

    一人の部屋で彼は写真を見つめています。ここへ来た頃には何もなかった部屋が、今は物に満ちています。
    小さな物音に気付いた奇妙な同居生物が手紙が来たことを知らせます。
    手紙を読んだ彼は思わず空を見上げました。

    ある晴れた日、彼は部屋を飛び出し、走っていきます。
    その先には不安げな顔をする女性と少女。
    彼は大きな声で呼びかけます。眉を寄せていた少女はぱっと笑顔になり、女性も走り出しました。
    三人はかたく抱き合い、再会を喜びました。

    彼の生活はより一層充実したものとなりました。
    今ではすっかり家族全員がこの街の生活にも慣れています。
    少女は今日も街へ出かけます。奇妙な生物もいっしょです。賑やかな通りを歩き、慣れた手つきで届いたものを回収します。
    ふと見るとひとりの女性が地図を手に不安な表情であたりを見回しています。
    少女は近づき、女性に声をかけると女性が求める場所を指さしました。

  • 再読。あまりに素晴らしかったので小説ではないですがレビューします。


    文字一つなく、イラストのみで物語られるのは移民の物語。
    不穏な空気渦巻く故国に家族を残し、異国でいつか家族を迎えるためそこで根をはり暮らそうとする男。
    まったく知らない土地で暮らしていかなければならない不安と苦労の中、そんな彼を親切に助けてくれるその国の人々。
    彼らも移民者であり、彼らにも一人ひとりの物語があるから。

    それはさながらサイレントムービーのよう。
    これほど静かに、それでいてこれほど濃密に語りかけてくるものを他にしりません。

    表紙と裏表紙を開いた一面にみる移民たちの顔、彼らにはどんな物語があるのだろう。

  • 文字がないだけでここまで心かき乱され心弾ませるとは…。

    愛する家族との別れ、父は家族のためにひとり見知らぬ街へと旅立つ。
    奇妙な街では、本当にわからないことだらけ。文字も時間も文化も食べ物も自分の知っているものとは違う。そんな時助けてくれるのはやはり人の優しさ、動物の癒し。
    いろんな人と出会い哀しい過去を聞くのだけど、この辺のストーリーがうまく掴めなかった。
    だけど細かく分かれた絵にはたくさんの想像ができてきっと答えは一つじゃないはず。
    そこがまたこの絵本の魅力。
    終わり方がとても素敵だった。ラストの絵が一番好き。

  • 久々に、人に押し付けたくなるほどおすすめの本でして、わけわからない事も多々ありちょっと怖い雰囲気ですが
    新しい事や環境が待っている方に、大丈夫!という気持ちになりそうな、プレゼントしたくなるようなそんな本です。

  • 文字のない絵本は久しぶりに読みましたが、これは素晴らしい!

    絵自体は写実的なのに、謎の生き物(可愛い。欲しい)や設定がファンタジック。
    言葉がないからこそ表現できる話だと思う。
    異文化に身を置いたとき、だれもが体験することがとてもうまく表現されている。

    子どもには難しいかな?
    大人にこそおすすめしたい本。

  • まるでサイレント映画を見ているかのような気持ちになりました。言葉が1つも出てこないのにこんなに登場する人々の感情が伝えられるなんて本当に素敵。
    また表情も豊かで、謎の生物が可愛かったです。

    終わりも幸せな気持ちにさせてくれますよ。

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著者プロフィール

1974 年オーストラリア生まれ。幼いころから絵を描くことが得意で、学生時代にはSF 雑誌で活躍。西オーストラリア大学では美術と英文学を修める。オーストラリア児童図書賞など数々の賞を受賞。2006 年に刊行した『アライバル』は世界中で翻訳出版されている。イラストレーター、絵本作家として活躍する一方、舞台監督、映画のコンセプトアーティストとしての活躍の場を拡げている。9年の歳月をかけて映画化した『ロスト・シング』で2010 年に第83回アカデミー賞短編アニメ賞を受賞。2011年にはアストリッド・リンドグレーン記念文学賞を受賞。2019年には日本で初めての展覧会を開催。現在メルボルン在住。

「2020年 『ショーン・タン カレンダー 2021』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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