NOVA 5---書き下ろし日本SFコレクション (河出文庫)

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (442ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309410982

感想・レビュー・書評

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  • 伊坂さん目当てで買ったが、ホームランでもアウトでもなく。ヒットか送りバントくらい。

    石持浅海さんの「三階に止まる」は、なぜかいつも三階で止まるエレベーターの話。アイデアが面白くて、他の作品も読んでみたい。

    須賀しのぶさん「凍て蝶」は不思議な空気の作品。父の残した絵を買いにきた女性との話。とても雰囲気が良い作品だった。なんとなく村上春樹を思い出した。

  • 伊坂……あのラスト書きたかっただけだろう(笑)

    相変わらず伊坂は優しい話を書くなぁと思ったけど、時間ものとしてはあの手は反則に分類されるはずなのだが。

    上田、図子、須賀はオーソドックスに、石持はオチの効かせかたがいい。

    今回はゲーム小説で才能の片鱗を見せていた宮内悠介の金融屋SF。金融工学を推し進めていくとどうなるか……必読です。

  • 伊坂幸太郎と須賀しのぶ目当てで。

  •  SF界だけに留まらず、様々なジャンルの作家を取り込みながら日本SFの最前線を開拓し続ける書き下ろしSFアンソロジー・NOVAの第5弾。今回も豪華な顔ぶれが揃い、様々なワールドを作り上げている。それぞれの作家が放つ渾身のSF作品が一度に読めるのだから、こんな豊かな読書体験はなかなかできない。日本人作家による短編SFの黄金時代がもしかしたら目前まで迫っているのかもしれない。

     やっぱり短編はSFの白眉だ。筒井康隆や星新一など、子供のころにSFと意識せずに触れた経験のある人も多いだろう。限られた枚数の中でアイディアをギュッと凝縮した短編。絶対に面白いんだけど、労力の割にコストパフォーマンスが悪いといういことでなかなか盛り上がるところまではいかなかったのだが、新人作家のアンソロジー『原色の想像力』(創元SF文庫、2010年)においてベテランSF作家の山田正紀氏が記しているように、電子書籍の普及は大きなブレイクスルーとなるのかも知れない。短編一本からでも売れる時代。これってもしかして出版社にとってもチャンスなのではないだろうか。ちなみに本書の編集後記によると、このNOVAシリーズも電子書籍化されて一編ずつでも購入できるようになったらしい。うーむ、SFって感じがするなあ。

     という訳で本書収録作は下記の通り。
     「ナイト・ブルーの記録」(上田早夕里)、「愛は、こぼれるqの音色」(図子慧)、「凍て蝶」(須賀しのぶ)、「三階に止まる」(石持浅海)、「アサムラール バリに死す」(友成純一)、「スペース金融道」(宮内悠介)、「火星のプリンセス 続」(東浩紀)、「密使」(伊坂幸太郎)
     収録順。以上の8編だ。収録作品数でいくとこれまでのシリーズ中最も少ない。

     全体的に強固なアイディアが芯となった作品が多いようだ。石持作品などは、いかにもホラーっぽい出だしで、とはいえやっぱホラーなんだけど、きちんと論理的な推理を経て納得のいく結論を導き出す。その過程は超常現象を扱っていながら理屈を踏んだミステリーのようでもあるし、やっぱSFだなあと思う。
     また友成作品は友成純一氏の遺稿、というスタイルで書かれており、きっとまた怪奇な事を書いているんだろうなと思ったらやっぱりグロテスクな奇病を扱った友成テイスト満載の作品だ。むせかえるようなバリの空気感が濃密である。
     あと昨年あたりから日本SFを牽引するトップランナーに躍り出ている上田早夕里の作品は本格的な海洋SF。これぞ海洋SF!という直球だ。人間の変容を考えさせられながら、深海を舞台にしたストーリーなので残暑厳しい折にもぴったりだ。
     残暑にぴったりといえばこれまた凍てつくような雪山をめぐる不思議な物語を描いた須賀作品だ。現代版「雪女」とでも呼べそうな、こちらはどちらかというと幻想的な色の強い作品。だがラストにはやはりSF的な展開が。
     また、パロディものっぽいタイトルながら実にオリジナリティ溢れる金融SF(?)である宮内作品は新人とは思えないパワーのある作品。このアイディアだけで単行本一冊分くらい連作短編シリーズが書けそうである。
     その他、図子作品はずばりセックスをテーマとしているが、あんまりエロくはないので“そういうの”を期待しないように。これも水没した都市に生きる孤独な男と女を描きだしており、長編化できそうなくらいアイディアが詰まっている。逆に濃密すぎて頭がくらくらしてくるくらいだ。
     東作品は「火星シリーズ」の続編。ここまでくると前作までを読んでいないとまったく理解できないと思うが、作者の思想が物語に大きな影響を与えているようで続きがどうなるのかとても気になる。
     そして本書でやはり最大の目玉なのはトリをつとめる伊坂幸太郎の「密使」であろう。前々からこの人はSF寄りの人なのではないかと疑惑(?)の目を向けられていたが、今回正面からSFに挑んでいる。ううむ、タイムトラベルものも伊坂氏の手にかかるとこうなってしまうのか!とてもSF的な物語でありながら、伊坂作品の味を損ねていないのだから、この人の確固たる筆力には驚かされる。

     以上のように、どの作品も個性的でかつとても面白いものなので、時間を忘れて読みふけってしまった。

     ところで個人的に気になるのは、実は僕は今回あたりから3月の東日本大震災のことにぼちぼち触れはじめるのではないかと思っていたのだが、大森望氏の解説をはじめとして、どこにも一切そのことが触れられてはない点である。
     時代を明確に映すアンソロジー・シリーズだからこそ、これだけ大きな災害をスルーすることはないだろうと思っていたのだが…。まあやはり出版物というのは執筆時とタイムラグが発生するものだからそう素早く反応することもないのかも知れないが、なんか全然触れられていないというのも不思議な気がした。特に今回は仙台の作家・伊坂幸太郎が参加しているからね。

  • (2011.9)

  • 須賀しのぶさんの「凍て蝶」のみ読了。

  • う〜ん 薦められて読んだけれど、苦手なSFだったからか、大好きな伊坂さんのもイマイチ…なんでみんながそんなに絶賛してるのか、私には読み切れなかったようで…残念。

  • 今までで一番面白かった巻かもしれない。どれも粒ぞろいで、アンソロジーなのに読みやめられませんでした!

    笑えるものもあり泣いてしまうものもあり、一個も外れなし。なんだけど、密使だけ意味がわからなかった。。。

    含めて、もう一度読み直したいです。火星のプリンセスは早く続きを。。。

  • 上田早夕里、図子慧、伊坂幸太郎作品がマイベスト3。いずれもきちんとSFしつつも小説として読み応えのある作品。『密使』はニクい程うまいねえ。

  • 2011年8月25日購入。未読。

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著者プロフィール

1971年東京生まれ。批評家・作家。東京大学大学院博士課程修了。博士(学術)。株式会社ゲンロン創業者。著書に『存在論的、郵便的』(第21回サントリー学芸賞)、『動物化するポストモダン』、『クォンタム・ファミリーズ』(第23回三島由紀夫賞)、『一般意志2.0』、『弱いつながり』(紀伊國屋じんぶん大賞2015)、『観光客の哲学』(第71回毎日出版文化賞)、『ゲンロン戦記』、『訂正可能性の哲学』など。

「2023年 『ゲンロン15』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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