不思議のひと触れ (河出文庫 ス 2-2)

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (420ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309463223

感想・レビュー・書評

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  • SFやファンタジーの「状況」だからこそ浮かび上がる人間の味、個性、素晴らしさ。タイトル訳の素晴らしさよ。もちろん、大森、白石訳の本文も、自分を委ねることができるレベルです。
    ああスタージョン!

  • 「少し不思議」解説に書かれてあった、藤子不二雄の言葉。
    壮大なスペースオペラやタイムワープ、ユートピアなどの世界は無く、目に見えて未来的なものも無い。
    何気ない日常に起こる出来事は、ひょっとしたら誰にでもあり得るかもしれない。
    半世紀近くも前に書かれた「SF」は、その頃テレビに流れていた「ウルトラQ」の香りが漂う。
    「SF」なのにノスタルジック。

  • 海外のSF作家といえば誰?の問いに7,8番目ぐらいに思いつくのがスタージョンだけれど、代表作は?と聞かれてもすぐには思いつかないのがスタージョン・・・。
    あ、スタージョンをSF作家と認識していると河出のNOVAや創元の日本SF傑作選の内容に疑問を持たないのかもなんて思った。('◇')

  • 『孤独の円盤』がロマンチックでサイコー

  • ロマンチックでメルヘンチックな不思議な物語が詰まった短編集。人の感情の動きが丁寧に細やかに描かれ味わい深いです。
    最初の二編が少し退屈かと思ったのですがそこから先はぐっと引き込まれる良作ばかり。特に最後の『孤独の円盤』が傑作。

    『影よ、影よ、影の国』
    ダークファンタジー。継母に虐められる男の子は、継母のいない影の国に行きたいと願う。
    『裏庭の神様』
    裏庭から掘り出した石像が神を名乗り、口に出したことを全て真実にしてくれると言う。初めは喜んだが段々と不都合が生じ始める。ユーモアたっぷり。
    『不思議なひと触れ』
    人魚をきっかけに出会う男女二人の話。二人の会話劇のみの話なのですがこれがなんとも愛おしい。
    『ぶわん・ぼっ!』
    若手ドラマーが先輩に一流ドラマーになるための秘訣を聞く。先輩が語るある天才ドラマーの物語とは。爽快。
    『タンディの物語』
    母親から見ても不思議でマイペースな少女タンディ。タンディは異星人と接触を通して立派な女の子に変わって行く。それを見守る母のとまどい。
    『閉所愛好症』
    優秀で社交的な宇宙飛行士候補の弟を持つ内向的な兄。彼の独特の思考に興味を持つ謎の女性が現れる。宇宙人から見た宇宙飛行士の資質とは。
    『雷と薔薇』
    核の冬。終末的状況で生きる理由。敵を憎むか人類の未来を託すか。世界を救う方法。
    『孤独の円盤』
    女性は、町に出現した円盤からあるメッセージを受け取ったため、世間からも政府からも注目の的となってしまった。自殺しようとする女性とそれを止める男性。意外な円盤とメッセージの正体。切なくて優しい。人生で誰もが抱く孤独とそれを照らす希望を描いた傑作です。

  • 「キャビアの味」とも評される、スタージョンの魅力溢れる短篇を17篇収録。どこにでもいる平凡な人間に、不思議のひと触れが加わると――?

    スタージョンはこの本以前に『海を失った男』を先に読み、「?・・・???」となりつつも、なんだかぞくぞくするものを感じて、もどかしい思いをしていた。
    『海を失った男』に比べ、こちらは話の筋がわかりやすいものが多く、スタージョン入門書としてちょうどいいというのにも納得。わけのわからなさに自分の理解力を嘆くことなく(とはいえ、この本も決して全てを理解できたわけではないのだが)、スタージョンの魅力が味わえたと思う。

    さて、肝心の作品について。
    「神話的な輝きを放つ」「米文学史上最高の短編作家」等の評価も、決して大げさではない、むしろ読む人によっては確かに唯一無二の存在になるであろう作家さんだと、私も思った。それくらい、スタージョンの描き出すお話は眩しくて、懐かしくて、それでいて深い深い悲しみと喜びに満ちている。
    ひとつひとつの描写が恐ろしく生々しい。鮮烈なのに繊細で、無我夢中の荒々しさがあるのに、長い沈黙の果てを感じる。
    解説にて、この本の編者であり訳者でもある大森氏は、「スタージョンは登場人物の『考え方』によってキャラを立てる」と書いているが、なるほどそうか、とすんなり納得してしまうくらい、この言葉はスタージョンの描く人物達を表現するのにふさわしい。登場人物たちの思考の過程が、ほんのちょっとの言葉の間や言い回しによって、見事に描写されているのだ。
    それは誰かと誰かがすれ違う瞬間であり、目の端をよぎる一瞬の木漏れ日でもある。儚い永遠であり、ごくごく些細な、日常の一コマでもある。何も特別なことではないけれど、全く同じことは二度と起こらない。そんな、ごく普通な「不思議のひと触れ」。

    そして、孤独。
    スタージョンが「愛と孤独の作家」だと言われる由縁も、この本を読んで納得した。
    でも、この「孤独」に関しては、上手く言えない。スタージョンを読んで感じたこの感情を、上手く言葉にできない。
    ただ、自分でもどうにもできないものが、どうにもできないが故に、胸がいっぱいになった、とだけしか言えない。

  • 読みづらくても、我慢して読みすすめるべし。
    日常から少し外れたところにある、不思議な話が
    ちりばめられているが、何よりの魅力は人間であり、
    人と世界との関係。
    「不思議のひと触れ」という世界に
    この作品を通じて触れるという不思議な出会い。

  • 最初のとっつきにくいニ頁を我慢すれば、あとはもう虜。一つの話を読み終わると余韻に浸りたくて、次の話にいけない。それを我慢して二頁程読めば、またその話に取り込まれる…

著者プロフィール

シオドア・スタージョン(Theodore Sturgeon):1918年ニューヨーク生まれ。1950年に、第一長篇である本書を刊行。『人間以上』(1953年)で国際幻想文学大賞受賞。短篇「時間のかかる彫刻」(1970年)はヒューゴー、ネビュラ両賞に輝いた。1985年没。

「2023年 『夢みる宝石』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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