不思議のひと触れ (河出文庫 ス 2-2)

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (420ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309463223

作品紹介・あらすじ

神話的な輝きを放つ、"アメリカ文学史上最高の短篇作家"シオドア・スタージョン。その魔術的ともキャビアの味とも評される名短篇をここに集成。どこにでもいる平凡な人間に、不思議のひと触れが加わると?-表題作をはじめ、デビュー作他、全十篇。

感想・レビュー・書評

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  • SFやファンタジーの「状況」だからこそ浮かび上がる人間の味、個性、素晴らしさ。タイトル訳の素晴らしさよ。もちろん、大森、白石訳の本文も、自分を委ねることができるレベルです。
    ああスタージョン!

  • 不思議のひと触れ、孤独の円盤は既読

    改めて。

    表現が詩的で素敵。
    ヒゲを剃るために石鹸を塗りつける場面で、「小さな泡がはじけるときの口づけのような感触」とくるから畏れ入る。なんてきざさ!そして、なんて表現の贅沢なことか、豊潤なことか!
    そもそもタイトルの不思議のひと触れからして浮き世離れしている(全部いい意味で)
    これらの表現だけで視点の転換が起こる。SF的に言うなら、目眩が起こる。物事を前と同じようには見れなくなる

    特徴として、孤独、破滅、衰退が甘く描かれる。
    スタジョーンズは不幸がよく合っている(いい意味で)

    そういった苦境でもがく人(所謂いい人)は厚みがあり、変に生命感があり、エネルギーを感じるのだが(それこそP・K・ディックのように)、対する嫌な人が薄っぺらい。嫌な母親ってこんなんでしょ、というテンプレを使っているような感を受ける。
    と、途中まで思って読んだいたら、雷と薔薇のスターで見事に裏切られた(いい意味で)。

    雷と薔薇こそ傑作(もちろんいい意味で!)

  •  奇想コレクション
    「もうひとりのシーリア」がおすすめ

  • 「少し不思議」解説に書かれてあった、藤子不二雄の言葉。
    壮大なスペースオペラやタイムワープ、ユートピアなどの世界は無く、目に見えて未来的なものも無い。
    何気ない日常に起こる出来事は、ひょっとしたら誰にでもあり得るかもしれない。
    半世紀近くも前に書かれた「SF」は、その頃テレビに流れていた「ウルトラQ」の香りが漂う。
    「SF」なのにノスタルジック。

  • 不思議のひと触れ (河出文庫)

  • スタージョン.
    名前は聞いたことがある(どうやら大物っぽい)が読んだことはなかった(作品名は?思いつかない)が,某アンソロジーに収録されていた短編が気に入ったので,本書を買ってみた.
    基本的にはSFに分類されるのだが,SFは単なる種に過ぎず,そこから開く花は様々な色形をしている.
    SFの困るところは,昔に書かれたものは実際のテクノロジーがそれ以上に進んでしまっていて,とても古くさく感じられる場合があることだが(除:スペースオペラ系),本書に限ればそういった心配はない.「ひと」という普遍的なテーマが主題だからであろうか.

  • 海外のSF作家といえば誰?の問いに7,8番目ぐらいに思いつくのがスタージョンだけれど、代表作は?と聞かれてもすぐには思いつかないのがスタージョン・・・。
    あ、スタージョンをSF作家と認識していると河出のNOVAや創元の日本SF傑作選の内容に疑問を持たないのかもなんて思った。('◇')

  • 『孤独の円盤』がロマンチックでサイコー

  • ロマンチックでメルヘンチックな不思議な物語が詰まった短編集。人の感情の動きが丁寧に細やかに描かれ味わい深いです。
    最初の二編が少し退屈かと思ったのですがそこから先はぐっと引き込まれる良作ばかり。特に最後の『孤独の円盤』が傑作。

    『影よ、影よ、影の国』
    ダークファンタジー。継母に虐められる男の子は、継母のいない影の国に行きたいと願う。
    『裏庭の神様』
    裏庭から掘り出した石像が神を名乗り、口に出したことを全て真実にしてくれると言う。初めは喜んだが段々と不都合が生じ始める。ユーモアたっぷり。
    『不思議なひと触れ』
    人魚をきっかけに出会う男女二人の話。二人の会話劇のみの話なのですがこれがなんとも愛おしい。
    『ぶわん・ぼっ!』
    若手ドラマーが先輩に一流ドラマーになるための秘訣を聞く。先輩が語るある天才ドラマーの物語とは。爽快。
    『タンディの物語』
    母親から見ても不思議でマイペースな少女タンディ。タンディは異星人と接触を通して立派な女の子に変わって行く。それを見守る母のとまどい。
    『閉所愛好症』
    優秀で社交的な宇宙飛行士候補の弟を持つ内向的な兄。彼の独特の思考に興味を持つ謎の女性が現れる。宇宙人から見た宇宙飛行士の資質とは。
    『雷と薔薇』
    核の冬。終末的状況で生きる理由。敵を憎むか人類の未来を託すか。世界を救う方法。
    『孤独の円盤』
    女性は、町に出現した円盤からあるメッセージを受け取ったため、世間からも政府からも注目の的となってしまった。自殺しようとする女性とそれを止める男性。意外な円盤とメッセージの正体。切なくて優しい。人生で誰もが抱く孤独とそれを照らす希望を描いた傑作です。

  • ■高額保険 
    ミステリです。これって実際に使えるのでは?? ^^

    ■もうひとりのシーリア 
    こういう部屋に住むのが憧れでして。

    ■裏庭の神様 
    言ったことが真実になる。ドラえもんでこのネタあります・・・あれもいいラストだった。

    ■不思議のひと触れ 
    人魚自身は全く登場しないんです^^; 

    ■ぶわん・ばっ!
    オノマトペって正確だったらいいってもんでもない気がします。このタイトル間抜け~

    ■タンディの物語
    アンファンテリブルものとでも言いましょうか。子どもは怖い。

    ■閉所愛好症
    タイトルからもっとキッツい話を期待(^^;)していたのに、意外に爽やかなオチで~ ^^

    ■雷と薔薇 
    「敵に未来を託そう」というスター・アンシムを受け入れられるか? うーん。

    ■孤独の円盤 
    ポリスの名曲が浮かびます。Message in a bottle。

  • 雑誌で紹介された「雷と薔薇」の『あまりのうつくしさに耳鳴り』を体験したくて手にとったけれど、気になったのは、表題作、「孤独の円盤」のふたつ。SFが苦手でもなんとはなく惹かれるスタージョンを理由不明のまま読んでいたので、“愛について書き続けた作家”説には 我ながらわかり易い趣味だなあと。

    表題作の、奇妙なボーイ・ミーツガールのかなり変な感じ、鮮やかに反転するラスト一行に、痺れる。「孤独の円盤」の、そのぎこちなさ・ストレートさが刺さる。 どちらも“不思議なひと触れ”でつながっているとさいごに知り、はっとする。

  • 「どんな孤独にも終わりがある」
    そして
    「孤独は分かち合うほかない」

  • 全10話からなる短編集。
    収録作は、「高額保険」、「もうひとりのシーリア」、「影よ、影よ、影の国」、「裏庭の神様」、「不思議のひと触れ」、「ぶわん・ばっ!」、「タンディの物語」、「閉所愛好症」、「雷と薔薇」、「孤独の円盤」。
    最後に大森望による長文の解説つき。
    ジャンルはSFには収まりきらない不思議な取り合わせ。
    スタージョンを「アメリカ文学史上最高の短篇作家」と呼んだ人もいるようだが、まあそこまでは褒めすぎというもの。この10篇がいずれも珠玉の名作というわけでは決してないし、こういう作風が好きな人、そうでもない人に分かれるだろう。
    私としては「タンディの物語」が宇宙からの不思議な侵略でSFぽくって気に入った。大森望によると、この話の4人の登場人物は、スタージョンの3人目の妻との間の4人の子供と同名らしい。当初の予定では、主人公を変えてシリーズ化するはずだったそうだ。

  • 「キャビアの味」とも評される、スタージョンの魅力溢れる短篇を17篇収録。どこにでもいる平凡な人間に、不思議のひと触れが加わると――?

    スタージョンはこの本以前に『海を失った男』を先に読み、「?・・・???」となりつつも、なんだかぞくぞくするものを感じて、もどかしい思いをしていた。
    『海を失った男』に比べ、こちらは話の筋がわかりやすいものが多く、スタージョン入門書としてちょうどいいというのにも納得。わけのわからなさに自分の理解力を嘆くことなく(とはいえ、この本も決して全てを理解できたわけではないのだが)、スタージョンの魅力が味わえたと思う。

    さて、肝心の作品について。
    「神話的な輝きを放つ」「米文学史上最高の短編作家」等の評価も、決して大げさではない、むしろ読む人によっては確かに唯一無二の存在になるであろう作家さんだと、私も思った。それくらい、スタージョンの描き出すお話は眩しくて、懐かしくて、それでいて深い深い悲しみと喜びに満ちている。
    ひとつひとつの描写が恐ろしく生々しい。鮮烈なのに繊細で、無我夢中の荒々しさがあるのに、長い沈黙の果てを感じる。
    解説にて、この本の編者であり訳者でもある大森氏は、「スタージョンは登場人物の『考え方』によってキャラを立てる」と書いているが、なるほどそうか、とすんなり納得してしまうくらい、この言葉はスタージョンの描く人物達を表現するのにふさわしい。登場人物たちの思考の過程が、ほんのちょっとの言葉の間や言い回しによって、見事に描写されているのだ。
    それは誰かと誰かがすれ違う瞬間であり、目の端をよぎる一瞬の木漏れ日でもある。儚い永遠であり、ごくごく些細な、日常の一コマでもある。何も特別なことではないけれど、全く同じことは二度と起こらない。そんな、ごく普通な「不思議のひと触れ」。

    そして、孤独。
    スタージョンが「愛と孤独の作家」だと言われる由縁も、この本を読んで納得した。
    でも、この「孤独」に関しては、上手く言えない。スタージョンを読んで感じたこの感情を、上手く言葉にできない。
    ただ、自分でもどうにもできないものが、どうにもできないが故に、胸がいっぱいになった、とだけしか言えない。

  • スタージョンは好きだ。
    これはまだ読んでなかった。

  • 読みづらくても、我慢して読みすすめるべし。
    日常から少し外れたところにある、不思議な話が
    ちりばめられているが、何よりの魅力は人間であり、
    人と世界との関係。
    「不思議のひと触れ」という世界に
    この作品を通じて触れるという不思議な出会い。

  • 最初のとっつきにくいニ頁を我慢すれば、あとはもう虜。一つの話を読み終わると余韻に浸りたくて、次の話にいけない。それを我慢して二頁程読めば、またその話に取り込まれる…

  • 「どんな孤独にもおわりがある」

    どの話もものすごく魅力的。

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著者プロフィール

シオドア・スタージョン(Theodore Sturgeon):1918年ニューヨーク生まれ。1950年に、第一長篇である本書を刊行。『人間以上』(1953年)で国際幻想文学大賞受賞。短篇「時間のかかる彫刻」(1970年)はヒューゴー、ネビュラ両賞に輝いた。1985年没。

「2023年 『夢みる宝石』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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