輝く断片 (河出文庫)

制作 : 大森 望 
  • 河出書房新社
3.76
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本棚登録 : 262
感想 : 28
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  • Amazon.co.jp ・本 (421ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309463445

感想・レビュー・書評

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  • 河出書房の<奇想コレクション>内の一冊が文庫化。
    今まで何度も借りつつも読めずにいるうちに文庫化してました。返却期限を気にせずに読めるのでありがたいなー。
    同じく<奇想コレクション>で出た「不思議のひと触れ」は割とロマンチックな作品が多かったのですが、こちらは全体的にハードで、そして圧倒的に変な作品が揃っています。
    以下、各作品の簡易感想を。

    「取り替え子」
    おっさん声でしゃべる赤ん坊のインパクトがすごい。
    読んでいる間、まさに外道!のあの画像が思い浮かんで仕方がなかったです。
    そんなおっさんベビー(好物はレアステーキ)に振り回される若い夫婦のドタバタコメディ。最後はなんだかいい話で終わっていてほっこりしました。

    「ミドリザルとの情事」
    タイトルからもわかるように、一種の艶笑譚…と解説にはありますが、艶…?というか、設定もオチも何もかもが変な話。
    とある夫婦の前に現れたルーリオという青年。中性的で「男らしく」ないルーリオに全く見当違いなアドバイスをする旦那のわかってないっぷりにもニヨニヨしますが、何よりオチが強烈。超展開すぎて笑ってしまいました。

    「旅する巌」
    宇宙人が落とした超兵器(?)をそれと知らずにたまたま手に入れた男と、彼が書いた小説を巡ってのラブコメ&SF。
    SFな部分より、編集者が作家との関係性について語る場面や、奇妙な三角関係とその結末の方が楽しかったです。

    「君微笑めば」
    タイトルはロマンチックですが、中身はサイコvsガキ大将といった感じ。サイコというか一種の共感覚といった感じかな?
    読んでいるとなんとなくオチが分かる展開なのですが、どの場面でそうなるのかハラハラして読みました。

    「ニュースの時間です」
    一人の男がおかしくなり、そして彼なりの方法で世界に適応したその顛末。
    「普通」に生きられない人を無理に矯正させようとするとどうなるのか。「おかしくなった」あとの彼は幸せそうで、その後の展開を考えるとほんと精神科医は余計なことをしたなあと。

    「マエストロを殺せ」
    誰からも慕われ素晴らしい才能を持ったイケメンと、彼を妬み憎むキモメン。策略の末にイケメンを葬ったキモメンだが、彼のジャズバンドは相変わらず彼の音を奏でていて…。
    イケメンを殺した動機は完全に逆恨みというかただの嫉妬で同情の余地はないのですが、なんだかかわいそうでもあり。
    ラストのオチはどこか悲しいです。

    「ルウェリンの犯罪」
    不器用すぎる男と、彼を取り巻く親切で無理解な人たち。
    誰にも理解されず伝えられなかったために、善意によって魂を殺された男の物語です。
    誰も悪くないのが余計に悲しい。

    「輝く断片」
    大雨の夜に瀕死の女を拾った男。彼は女の傷を癒し、世話を焼き贈り物を与える。そうして女は少しずつ元気になっていき…。
    平凡な日々を繰り返してきた男に訪れた「非日常」。それが失われようとするとき、男が取った行動とは。
    いい話で終わるのかそれとも…とドキドキしながら読みました。
    スタージョンの作品の主人公はみんな普通だけど変な人ばかりだなあ。

    どの作品もみんな奇妙で、まさに奇想といった感じ。
    <奇想コレクション>からはもう一冊スタージョンの作品が出ているようなので、そちらも読んでみたいです。

  • ほんの些細なことをきっかけに歯車がカチリ、と切り替わる。その「カチリ、」はどれもとても繊細で、いつの間にかその心情に共感して、心がざわざわしだす。
    「カチリ」の前後、で周囲からみるとあきらかに異常性へと踏み込んでいるのだけど、本人たちからすると、いたって自然な移行、というか必然的な反応として淡々となにかがずれだしていく様が、物静かであるが故にその肌触りが逆に生々しく感じられる。
    すごいな、これ。
    おかしくてかなしい、でもとてもきれいな小説だ。

    震えがくるほど素晴らしかった。

  • やっかいな本。面白かった!!という感じではないけど、一遍一遍がものすごく個性的で、へんてこで、時間が経ってもジワジワと後味が残る。

  • 真面目、愚直、不器用、ちがうな
    不適合、無害な異常、こんな感じか
    そういった人が守ってきた自分の芯を
    揺さぶられたときに飛び込んだ・迎え入れた
    異常の世界。ソレをおどろおどろしくではなく描いて
    読ませる短編集

  • スタージョンのミステリ寄りの作品を集めた短篇集。特に表題作の『輝く断片』が素晴らしい。主人公の哀しいまでの孤独さが切なくて、切なくて(´;ω;`)。
    「ミドリザルとの情事」の下ネタも大好き。

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著者プロフィール

シオドア・スタージョン(Theodore Sturgeon):1918年ニューヨーク生まれ。1950年に、第一長篇である本書を刊行。『人間以上』(1953年)で国際幻想文学大賞受賞。短篇「時間のかかる彫刻」(1970年)はヒューゴー、ネビュラ両賞に輝いた。1985年没。

「2023年 『夢みる宝石』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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