デカメロン 下 (河出文庫 ホ 6-3)

  • 河出書房新社
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本棚登録 : 224
感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (560ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309464442

感想・レビュー・書評

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  • 14世紀のペスト下で巣籠もり中の、男女10人による百物語を、21世紀のコロナパンデミック中に読もうと購入しましたが、めちゃめちゃ時間がかかりました。

    イタリア人の名前に馴染めず、10人のうち誰が男性かも分からないまま読み進めましたが、やがて、それぞれが物語りを始めると登場人物も爆発的に増え、収集がつかない事に。読むスピードも極端に遅くなりました。

    4日目ぐらいで気付きましたが、Oで終わる名前が男性、Aで終わる名前が女性ですね。ネイーフィレだけ例外で女性です。これから読む方はこの点を押さえて読んだ方良いです。常識だったらすいません。ただ、10人が語る物語の中の登場人物は時代が違ったり、そもそも異邦人だったりするのでこの法則は当てはまりません。

    10人それぞれの性格とか関係性まで読み解こうとするとドツボにハマります。なんか主要人物を除いて、作者のボッカッチョも設定がいい加減なんだそうです。とは言え、重要な役回りを担った人物や、恋愛関係にあった人物もいるようで、なかなか難しいです。


    下巻は10日物語の8日目から最終日10日目まで。
    8日目、9日目は作者のボッカッチョも筆が乗ってきて絶好調。鈴付きの小太鼓だの、すり鉢とすり粉木だの、毛皮だの、どこまでが普通の話で、どこからがエロティックな例えなのかもはや判別できません。
    最終日は一転してお行儀が良い話。巣籠もり生活を脱して社会復帰する準備でしょうか。最後は爽やかに終わろうと思ったのかもしれません。
    しかしながら、『欲望を抑えて体面を保ったロリコン老王』とか、『初夜に親友と入れ替わった話』とか、なかなか爽やかに成り切ることが出来ません。
    極めつけは最終話の問題作です。この話しはペロー童話にもグリゼリディスとして収められているので、ご存知の方も多いかも知れません。私もペロー版を読んだことがありました。チョーサーのカンタベリー物語にも同じ話が出てくるそうです。
    まあ、寓話なんでしょうが、話者ディオーネオ(もしくは作者ボッカッチョ)も否定的、wikiによるとカンタベリー物語のチョーサーも「自分の妻を試す夫なんて愚か者だ」と注釈しているそうです。
    なのに、何故収録するのか。
    デカメロンに描かれる世界は、保険制度など現代とあまり変わらない社会的仕組みを有している面も有りますが、身分格差や男女格差など人権意識はかなり低めです。処罰意識もかなり強めで残酷。さすが14世紀!
    ボッカッチョは艶笑話の体をとりながらあからさまにこれらを取り上げる事によって、当時の宗教的社会的常識や価値観に疑問を呈したかったのではないでしょうか。
    しかるに700年経った現在でも、これらが払拭された訳ではありません。取ってつけたような用語でレッテルを貼って満足するのではなく、まだまだボッカッチョのように異議申し立てし続けていかなきゃいけないんだなぁと感じた古典名作読書でした。

著者プロフィール

1313年イタリア生まれ。ルネサンス期を代表する文学者。著書に『フィローコロ』『フィアンメッタ夫人の哀歌』『コルバッチョ』など。

「2017年 『デカメロン 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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