「学校」をつくり直す (河出新書)

著者 :
  • 河出書房新社
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感想 : 38
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309631059

感想・レビュー・書評

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  •  学校の課題をさらに詳しく、深くしている本。

     子どもも教師も個性を出し合える学校が創られるといい。

     こうやって、学校の課題を理論的に説明し、変えようとする人がいることは大きなことだと思う。

    • Kimura Naotoさん
      読んでみたいです‼️
      自分らしく、ありのままでいられる空間にしたいものですね!
      読んでみたいです‼️
      自分らしく、ありのままでいられる空間にしたいものですね!
      2020/04/12
  • 長男、小1プロブレム…の時に読んだ本。長野に行く〜?なんて、話題にしたり、学校変えられるものなら変えてみろって言われた母は、春から大学院生になります。本格始動です。

  • 一言で言うと、一斉画一授業改革の提案である。これまで教育改革が何度も行われてきたものの、ずっと課題が山積してきたのは、エビデンスに「哲学」が加わらなかったからだとしている。そもそも、子どもはもとより学ぼうとしている存在であると言う教育観のもと、これからの教育は行われなければならないことやさらには探究的な学習(探求プロジェクト)を学校教育の中心に今よりさらに位置付けていくことで、子どもたちはより能動的に学んでいくとの主張がわかりやすく書かれていた。

  • 学校教育のあり方を考える材料

  •  今の学校の問題点はどこにあるのか?
     現場で,同時に起こるたくさんのできごと(それは教育研究も不登校対策もいじめ対策も…)にいちいち対応することで,教師は多忙になり,精神的にしんどくなり,そしてそれだけしてがんばっても,子どもたちにとっては決していい環境とはいえない学級でしかできない空しさ。
     著者は,それらの事柄はシステムにあると言います。

    今学校が抱えている問題の本質は,一人ひとりの先生や個々の学校にあるというより,むしろもっと構造的なこと,つまりシステムにこそあるのです。ー中略ー一見,別々に見えるこれらの問題も,その根っこはすべてつながっています。だから,個々の問題状況にだけ目を向けても,抜本的な解決策を見出すことはできません。根っこの問題,教育のシステムそれ自体の問題を解決しなければならないのです。(4ぺ)

     さて,具体的な学校の問題の指摘についても,けっこううなづきながら読めます。
    「落ちこぼれ」については,

    多くの人は「落ちこぼれ」は,その子の理解力が低いから生まれるものだと思っているのではないかと思います。でも,実は,これはシステムによって構造的に引き起こされている側面が非常に大きいのです。/考えてみれば当然のことです。みんなで同じことを,同じペースで勉強していれば,一度つまづくと,そのまま取り残されるということがどうしても起こってしまうからです。(19ぺ)

    一方その反対の「吹きこぼれ」については,

    すでに分かっていることを,何度もくり返し勉強させられることで,勉強がいやになってしまう子どもたちのことです。-中略ー今日の「めあて」をみんなで一斉に唱和するのに始まって,教科書の決められたページをみんなで繰り返し読んだり,すでに分かっていることを一方的に教えられたり。四五分もの間,なぜみんなと同じことをやり続けなければならないのか。そう思っている子どもたちはたくさんいます。(23ぺ)

     これらの問題は,いずれも,150年来続いている「みんなで,同じことを,同じペースで,同じようなやり方で」やってきたから起きることだといいます。だから,その根本を変えないと,こういう子どもたちはドンドンできるわけです。そして,子どもたちに「同じことを」もとめる教師たちの指導もまた,当然のように「同じことを」求められるられます。それが昨今のスタンダードと言われるものです。
     このような学校現場に浸透するスタンダード化については,次のような例を挙げて批判しています。

    マリア・モンテッソーリは,すでに二〇世紀初頭にこんなことを言っています。子どもたちを,大人が決めた規律で縛りつけること,管理し統率すること,それは,子どもたちを規律正しくしているように見えて,実は命令されたことしかできない「無力」な存在にしてしまっているだけなのだ,と(25ぺ)
    教育学の多くの研究が明らかにしているのは,過度のマニュアル化,スタンダード化は,かえって教師の力,そして子どもたちの力を著しく奪ってしまうと言うことです。ー中略-教師にとっても子どもにとっても,成長のために必要なのは,言われたことを言われたとおりにさせられることではなく,自分の頭でしっかり考え,試行錯誤し,たっぷり失敗し,その失敗から学んでいく経験であるはずです。(56ぺ)

     このように,画一的な指導法がまかり通っている今の教育界は,だからこそ,もう先が見えている(限界が来ている)とも言えます。画一的にすればするほど,自分の頭で考える教師はいなくなり,自分の頭で考える子どもたちもいなくなる。それは,同時に,教育というものを放棄したような現場だけが残るという荒廃した未来しか見えません。これでは,日本だって立ちゆかないし,それこそグローバルなんてことに対応できないでしょう。
     われわれはだから原点に戻る必要があります。モッテッソーリに…です。
     
    「信頼して,任せて,支える」。これは一つの教育の秘訣です。いや,秘訣なんて大層なものではなく,本来は教育の基本中の基本です。でも,わたしたちは時にこの基本を忘れてしまいます。「信頼して,任せて,支える」ことは,ある意味とても怖いことだからです。/でもやっぱり,それこそが教育というものの本当は基本であるはずなのです。(216ぺ)

     窮屈な教育界を脱却するには,教育の基本にもどれば良いのです。なんだ,それならできそうだとは思えませんか? ただ,それをやろうとすると,「きちんとさせろ」「指導しろ」「見映えを良く」…という同調圧力を感じるかもしれません。でも,そこで負けていてはいけない。やはり,基本は基本。大切にしていきたいものです。

    子どもたちの姿こそ,実践者にとっては最大の説得力なのだと思います。(223ぺ)

     子どもの方を向く教師でありたい。これもまた教育の原点であるはずです。
     著者は,自信が考えるある程度理想的な学校として,幼小中「混在」校,「軽井沢風越学園」という学校の設立準備をしているそうです。2020年に長野県軽井沢で開講予定だとか。どんな学校ができるのか注目していきたいです。

  • いやあワクワクするなあ。何か新しいことが起こっている。何か新しいことができそう。自分も何かしたいなあ。ワクワクするって大切だよなあ。それを哲学用語では「エロス」というらしい。ちょっと違うイメージを持ってしまうけど、いいことばだ。森毅も言ってた。楽しいことは伝染するって。軽井沢で何が起ころうとしているんだろう。まあ、そこまで行かなくても、いろんなところでいろんな実践があるんだ。いまの状況の中でも、校長の考え一つで相当違うことができる。無学年とか、ひとりひとりにあわせた時間割とかいいなあ。でもそれってトットちゃんがやってたよなあ。むかしからやってる人はいるんだ。でも逆にそれが広まらないのは、大人数でやるには難しいんだろうなあ。非効率的なんだろうなあ。だから、地方の過疎地なんかでそういう実践がどんどん増えればいい。それがいいと思って、そこに引っ越していく人がいてもいい。隠岐の島とかいいなあ。でも京都も捨てがたい。近くで何かできないかなあ、夜間中学の話も聞いたし。教育って別に子どもだけのことでもないし、ワクワクするのって、みんなうれしいし。きっと。でも、強制的にそうされるのはよくないよな。自分の思いで動けるのがいいなあ。いやあ、よかった。本書を読んでの素直な感想です。ところで、読みたい本が次から次から出てくる。ワクワクするんだけど、時間もなくって、置く場所もなくって、困ったもんだ。

  • 小論文対策推薦図書 教育系

  • 【請求記号:376 ト】

  • 登録番号:1027118、請求記号:370.4/To49

  • 学校で学ぶ目的はペーパーテストのため?のこだわりをなくす。そんな事いいの?と思うが、子どもは、子どもに限らず先生も大人も興味あることは多種多様、ダイバーシティ。自分の好きを探究することで、視野が変わる気がする。

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著者プロフィール

哲学者・教育学者。1980年生まれ。熊本大学大学院教育学研究科准教授。博士(教育学)。早稲田大学教育学部卒業。同大学院教育学研究科博士課程修了。専攻は哲学・教育学。経済産業省「産業構造審議会」委員、熊本市教育委員のほか、全国の多くの自治体・学校等のアドバイザーを歴任。著書に『学問としての教育学』(日本評論社)、『「自由」はいかに可能か』(NHK出版)、『どのような教育が「よい」教育か』(講談社選書メチエ)、『勉強するのは何のため?』(日本評論社)、『はじめての哲学的思考』(ちくまプリマ―新書)、『「学校」をつくり直す』(河出新書)、『教育の力』(講談社現代新書)、『子どもの頃から哲学者』(大和書房)など多数。

「2022年 『子どもたちに民主主義を教えよう』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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