- Amazon.co.jp ・本 (477ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309908625
感想・レビュー・書評
-
中世フランスの方田舎でおきた凄惨な殺人事件。当時のキリスト教世界の独善的な思想と権力の構図を背景にもつ事件に対し、それぞれの立場で真相を探ろうとするのだが、主だった登場人物が皆死んでしまうのはやりきれない。個人的にはとても好きなテイストだけど、万人受けはしない、たぶん。読後の後味の悪さがいつまでも残って、忘れられない作品。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
たいへん面白い作品であった。
13 世紀のフランスとローマ教皇庁が舞台の歴史ミステリー。
南仏司教区での司教惨殺事件を中心に、
3 つのストーリーが其々に展開していくあたりは非常にワクワクとする。
これはすごい傑作だぞと期待大。
各ストーリーがリンクし始めたころから、やや失速感(?)。
前半ゆっくりゆっくりと進んでいた話が、
後半テンポアップしてきた事が原因か?
だが十分楽しめる作品だとは思う。
でも惜しい…。 -
翻訳ミステリというジャンルほど良質の作品が集まっているジャンルはないとかねがね思っているし、「翻訳ミステリ冬の時代」という言葉が作品の質を指しているのではないということは、この作品を読んでもよくわかる。
中世ヨーロッパ、キリスト教というような、敬遠される要素は多いと思われるが、毛嫌いせず読めばきっと満足できると思う。
最近、翻訳ミステリがなぜ売れないかというのが局地的に話題になっているようなので、それに絡めてみた。 -
「薔薇の名前」以降の中世ミステリーはかわいそうだ。なんにつけてもエーコと比較され、批判的立場にせよオマージュにせよパロディーにせよ、あの傑作を中心としてその座標軸の中で立場を決められ、評価されてしまう。
超えることは無理だとしても、せめて「第二の」とか「エーコの後継者」とかいった帯の賛辞ぐらいは欲しいところだと思う。
ところがこの本は、アリストテレスまで平然とでてくるのに、「薔薇の名前」を意識したところが感じられない。少し若いが、主人公ギの中世的でない個人主義的な性格や冷徹な知識、師を観察しつつ若さゆえ女性的な力に引きつけられてしまう弟子など、似た要素はキリストとアリストテレスとの論理的矛盾以外にも多く見受けられる。
だけどもそんな似ている部分が、かえってこの作品を薔薇の名前から無関係な評価へと高めている。「薔薇の名前」を超えられてるかな? というような多少いじわるなみかたをする読者も納得の読後感じゃないでしょうか。