- Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
- / ISBN・EAN: 9784326652457
作品紹介・あらすじ
人文諸科学に圧倒的な衝撃!理論的展開の経緯を明らかにするとともに、社会学・心理学・文学・人類学・歴史学などの分野で切り開いた地平を紹介する。
感想・レビュー・書評
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「構成主義/構築主義」(constructionism)をテーマに、社会学、人類学、歴史学、文学などの分野から、10人の論者の論文を収めている。また巻末には、編者の上野による各論文についてのコメントがある。
ジェンダー論ではなく科学哲学における社会的構成主義をめぐる論争の方から構成主義の議論を知ることになったという経緯もあって、構成主義にあまりポジティヴな印象を持っていなかったのだが、本書を読んで、そこれまで抱いていたいくつかの初歩的な誤りを正すことができた。
1960年代に盛んだったラベリング理論は、逸脱の原因を逸脱者の側にではなく「逸脱者」というラベルを恣意的に貼り付ける人びとの側に求めるものだった。だがそれは、社会的なサンクションに逸脱行動の原因を求めるという意味で、実証主義的な原因論を脱していない。M・スペクターとJ・I・キツセはこうしたラベリング理論を批判的に継承し、客観的な状況を不問に付し、人びとの相互作用を問いなおすことで社会問題の構築のあり方に焦点を当てた。こうして彼らは、社会問題の同定における構築主義の立場を確立した。
まだ構成主義に全面的に賛同するに至っていない自分としては、加藤秀一の論文「構築主義と身体の臨界」が、バランスのよい立場を示しているように思えた。ただし編者の上野は、加藤の立場はさらにラディカルな構築主義へと推し進められるべきだと主張している。加藤はI・ハッキングの『何が社会的に構成されるのか』の議論を継承する形で、構成主義は身体の物質性を否定する必要はなく、それが人間にとっての「本性=自然」ではないことを明らかにすればよいという。これに対して上野は、加藤の議論が「物質性」と「社会性」という二つの水準が自律的に存在しているような前提に基づいていることを批判し、身体の物質性は社会的にカテゴリ化されることを通してのみ、存在しかつ認識されるべきだと述べている。
上野の主張は、私たちの社会が物質性に基づく実証的研究に高い信頼性を与えているという事実を批判的に解体する視座を提供するものだと思うが、おそらく加藤は、そうした社会問題の水準を超えて、身体の実在論/反実在論の議論に構成主義は立ち入る必要はないと考えているのではないかと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
千田有紀「構築主義の系譜学」を読んだ。構築主義がどう議論されてきたかをまとめている。
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本書では、社会科学・人文科学のパラダイムを形成した「構築主義」が論じられる。章ごとに内容は異なるが、例えば二章の赤川は、構築主義と構成主義の違いを客観主義と本質主義と絡めて説明した上で、社会学の方法として利用する術を述べる。社会学に興味がある学生は読むと方法論への理解が高まるだろう。また八章の竹村はバトラーとフレイザーの議論を参照しながら構築主義の位相について論じており、哲学やジェンダー論を学ぶ学生におすすめだ。なお注意点として、ある程度の前提知識が必要とされるため、初学者が最初に手に取る本ではない。また各章で執筆者が異なるため、興味のある章から読むのが良いのではないか。
(文科二類・2年)(5)
【学内URL】
https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/BookDetail/Id/3000027548
【学外からの利用方法】
https://www.lib.u-tokyo.ac.jp/ja/library/literacy/user-guide/campus/offcampus -
P5
わたしたちは言語のなかに位置づけられているおり、
その外部に出ることはできない -
構築主義というものについて、今まで聞いたり読んだりしたことはありつつも、構造主義との区別もあんまりついていないほどの情弱だったので(というか今まで何を見聞きしてきたんだ)、構築主義の理解を広めるという意図で読んだ本。
上野千鶴子先生に関して、今まで色々と噂を聞いてきたのでどんなものかと身構えていたけど、本書は上の先生は編集に回っているということもあり、あんまりそれらしい感じはせず。むしろ、上野先生への批判も積極的に載せているあたりに誠実さを感じた。
著者によってテーマが異なり、自分との関心との合致具合によって評価はまちまちというところだけど、全体的に良い質を持っていると思った(こなみかん) -
上野千鶴子すげー。
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2008/11/10(〜P30),12(〜P70),13(〜P168),14(〜P307終)
薦められて読みました。
いろんな方々の考えがそれぞれとても読み応えがあっていい本だと思った。
しかし、私の苦手分野かもしれないと思った。
なんせ何人もの人のそれぞれ違う考えが1冊にまとめられている為、頭がこんがらがるというのが本音。
でももう1度読んでみたいと思った。 -
野口論文、赤川論文、北田論文が秀逸。
特に野口に脱帽。
現実は社会的に構築される。
現実は言語によって統制される。
言語は物語によって組織化される。