双月城の惨劇 (カッパ・ノベルス カッパ・ワン登龍門)

著者 :
  • 光文社
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (428ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334074685

感想・レビュー・書評

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  • 久しぶりにワクワクさせられる本を読みました。
    双月城と呼ばれる城が舞台です。
    この城の外壁には2つの塔が聳えていて、その塔の1つ満月の塔の密室の中で美しい双子の姉妹の片割れが首と両手を切断された死体で見つかります。
    古城には血塗られた伝説と史実があって、その為に漂う雰囲気が素晴らしいです。
    こういった伝説を絡めた殺人は雰囲気が良いですね。
    塔のトリックは大技トリックで、さらにこのトリックは古城に隠された秘密と関係もあって驚かされます。
    犯行は次々と繰り返されていくのですが、この事件の解決の為にフランスの名探偵シャルル・ベルトランが好敵手であるドイツの名探偵フォン・ストロハイム男爵と推理合戦をします。
    古城、双子、伝説、名探偵、好敵手等と私の大好きな要素ばかりで楽しくないはずがないです。
    こういった古さを感じさせる本格ミステリど真ん中の王道作品はかなり好みです。

  • 機械的トリック満載の、カーや『人狼城の恐怖』へのリスペクトにあふれた佳作。

    黄金期の古典ミステリのような読み味なのも、天然ではなく確実にそれを狙っているのでしょう。

    個人的にハウダニット(機械的トリック含む)においてすごく感心させられることは少ないのですが、これはかなり感心しました。

  • トリックの不確実性、犯行計画の実行可能性の低さ、犯行動機に多少疑問を感じる点など、小説のプロットとしては相当無理があると感じるが、ミステリとしての全体像には好印象を持った。特に最初の事件の真相が意外性があって面白い。文章も読みやすい。
    予測しがたい物理的なトリックが使われているので、この作品の真相を読者が推理することは極めて困難。

    初版の249ページに誤字があり、「被害者の性格な死亡時刻」は「被害者の正確な死亡時刻」が正しい。

  • 本書が手許にある人は、まずは恐ろしく熱の籠もったはしがきを読んでみてもらいたい。ミステリ好きを自認する人なら、途中でニヤニヤが止まらないんじゃないかと思う。そういう人には全力でお勧めする。正直、小説とみた場合、それなりにアラも目立つので、そうじゃない人には勧めないが。
    全力のハウダニットで、二つの塔で起きる密室殺人の謎解きが全て。満月の塔の殺人はトリックもさることながら、それを支えてる発想そのもが凄まじい。新月の塔の殺人もユニークだけれど、巻末の参考文献に挙げられているアレのトリックがヒントでしょう。アレを先に読んでる人は、ピンとくるような気がする。

  • シャルル・ベルトラン・シリーズ

    知り合いのノイヴァンシュタイン博士からの手紙。双月城と呼ばれる城に滞在する映画のロケハンチームと城の住人の間の不穏な空気。ドイツの双月城にむかうパット・スミス。映画スターで元双月城の使用人の息子であるライハンルトと城主の1人マリア・エールシュレーゲルの婚約と妊娠。血筋を重んじる姉カレンとの対立。密室の満月の塔で殺害されたマリア。首と手を切り取られ焼かれた遺体。ロッキングチェアーの前に膝まずく遺体の謎。消えたカレン。到着ししたベルトランと宿敵であるベルリン警察主任警部シュトロンハイム男爵。新月の塔で首を切られた状態で発見されたラインハルト。騎士の甲冑を着た胴体の謎。何か事件解決のカギを握った映画監督トマソンの死。事件直前にカレンらしき人物の姿を目撃し何者かに殴られたパット。使用された2本の剣の秘密。パットに何かを告げようとした夜転落死したメイドのフリーダ。カレンの服を着、鬘をかぶった遺体の謎。ベルトランの推理。エールシュレーゲル家の秘密。

  • 道具立てが「これぞ探偵小説!」で読んでいて楽しくも嬉しい。

  • ドイツ、ライン川沿いに聳え立つ通称「双月城」。血塗られた伝説を持つこの城の「満月の塔」「新月の塔」で再び惨劇の幕は切っておとされた。
    「満月の塔」では城主である双子の片割れが首と両手首を切られた状態で見つかる。切られた首と手首は室内で燃やされていた。
    「新月の塔」ではゲストの一人の首がタペストリーの上に置かれ、胴体は甲冑の中に入れられていた。
    どちらも密室で、城に伝わる伝説を地で行くような殺人。
    パリ警察の予審判事・ベルトランとベルリン警察のストロハイム男爵は期日までに真相を見破ることができるのか。

    「伝説に彩られた古城」「美貌の双子姉妹」「石造りの密室に転がる凄惨な死体」「生涯の好敵手たる二人の名探偵の対決」もうこってこての探偵小説でした。
    これでもかくらいに不可能犯罪が繰り返され、謎は深まるばかり。それを慧眼をもってしられる名探偵が颯爽と事件を解決!という王道のパターンで読んでいて懐かしく、わくわくしました。
    1920年末ごろの設定なので貴族じみた気取った口調がちょっと苦手でしたが、ラストで残った方々が下す紳士の判断がよかったです。ほんと大団円という感じ。
    読んでいてちょっと「あれ?」って気づく部分がけっこう重要な伏線だったりするのは作者のフェア精神でしょうか。

    二階堂黎人さんの『人狼城の恐怖』に雰囲気似てるなぁと思ったらそれもそのはず、参考文献に氏の『人狼城~』『聖アウスラ修道院の惨劇』『悪霊の館』』とあって、巻末には氏大絶賛!!!の解説までありました。
    この絶賛ぶりにはちょっと引きましたが、言われていることは納得でした。
    先日の東川さんもそうでしたが、新本格第一世代の作品を読んでいた方々がもう一度自分たちの読みたい本格を!という動きがあるみたいですね。
    確かに爛熟して拡散しているようなので、こういった原点回帰の骨太の本格がまた読めるようになったのはうれしいです。
    第一世代の方々のが読めれば言うことないんですけどね~。

  • 城の塔が客室などということはあるのかな。
    なんてことを考えてしまった。

    国王との関係が微妙な状態にある人の場合、塔の上などという、不便極まりなく脱出が難しそうな場所が客室などと言われたら、まず幽閉されることをう予感して、宿泊なんかできないのではないだろうか。

    と、読み終わったあと、気になってしまった。
    それはさておき。

    いろいろな仕掛けに、そんなにはうまくいかないよと思っていたのだが、もともと、そういう設計だったという説明をつけ足したことは、巧いと思ったし、その設定なら許そうと思えた。

    全体に犯人はおおよそ目星がついていて、ある意味、予想通り、しかるべきところにオチがついたという印象だったけれど、それでつまらないかというとそうでもない。

    著者がこんな話を読みたくて、書いた話。
    というだけあって、舞台設定や登場人物たちが、古い映画をみるような独特の魅力にあふれていた。

    謎解きの際の終わり方まで、なんだか古い映画のように、レトリックにこだわって心情まで描き切れていない感があるのだが、むしろ、それはそれでいいのではないだろうか。
    どろどろした本当の人間を描かないところが、お城と美しい双子のお話にはふさわしい気がする。

  • ドイツ、ライン川沿い、古城、伝説、密室、首切り……「人狼城」?(笑)
    とにかく「これぞ本格っ!」という意気込みがばりばり。正統派とも言えるかな。トリックも面白かったけど、なんてったってこの雰囲気が最高。

  • 古城、伝説、密室、名探偵・・・古典ミステリの再現。それぞれの殺害に使用された凶器、権力者の裏の顔を請け負ってきた一族、双月城の謎、どれをとっても興味深い。ただ、余計なキャラが多く、バタバタと殺される流れの中で、真犯人を推理するのは容易と言える。心理描写が不十分で、大掛かりな展開のわりにはラストは尻切れトンボ。しかし、舞台設定だけなら楽しめるだろう。

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