- Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334740009
感想・レビュー・書評
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この作品が多くの人を魅了してきた
理由を思い知らされた。
エンタメ作品ばかり読んでいると、
つい遠ざかりがちな、
日本語表現の美しさ繊細さを
持って描かれる作品で、
貧しく、陰鬱としている時代だが
どこか愛おしい日本の情景が描かれる。
ミステリとしても完成度の高い
素晴らしい短編が贅沢に収録されていた。
時には純文学も読みたいなぁ、と
ミステリの読後とは思えない
気分になれる一冊。 -
現代を舞台にして愛のあまりに人を殺めるというと、どこか下世話なゴシップめいた雰囲気がしてしまう。舞台を過去におくことで、美しい文と花、情念がよく似合う作品集になったような気がする。ずっと読みたかった名作「戻り川心中」に満足。芸術家の身勝手さと女たちの悲しさが身にせまる。
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<花にあなたを偲ばせて―>
初めて連城さんの本を読んだ.
なんと美しい文章か.
淡々と,それでいて鋭敏な感性でとらえられた比喩と風景描写.
どの話の落ちも驚きに満ちていて,短編一つ一つが印象に残る. -
有栖川先生の「ミステリー国の人々」(6/5朝刊)で取り上げられていた作品を表題とする短編集。
まだ江戸の香りのする色街や地方の美しい情景が丁寧に描かれていて、まるで一服の日本画をみているよう。
でも内実は、しっかりと論理も通ったミステリ。表題作のクライマックスで見られる、その冴えの鋭さもまた美しいです。 -
まず伝えたいことは、フェミニストの方は読んだらダメです。男性にとって理想的と思われるフィクションな女性が描かれているから。
※続きは後で記載 -
移ろいゆく時間・空間・人の思いが綴じ込められている
日本情緒溢れた、しかし物騒でどこか物哀しい大正〜昭和初期の時代が舞台となります。ミステリとしてはもちろん、文学作品としてもレベルが高く、この2つの分野を互いを殺さず、美しく融合させてしまう著者の手腕に恐れ入りました。
やはり「戻り川心中」がベストでしょう。2度に渡って心中事件を起こした果てに自害した稀代の歌人・苑田岳葉。「情歌」「蘇生」という2つの事件を歌にした作品には、とんでもない秘密が隠されています。
その他、娘の淡い感情に胸が痛くなる「桔梗の宿」や、駆け引きの妙に唸らされた「桐の柩」など、どれも短編にするには勿体無い程よくできています。ミステリという枠を超えて、後世に受け継がれるべき作品です。 -
日本の短編集では最高の出来だと思います。なかでも表題作は白眉。これ以上美しくて残酷な動機があるでしょうか。
何が起きたか、どのようにして起きたか、そういう事件自体の枠組みは謎が解けても変わらないけれどその事件の持つ意味合いが真相が明らかになった途端180度転換する。
ホワイダニットの極致を見た思いです。 -
趣を一にする短編5編収載。それぞれ意外性に満ちたミステリーとしても面白かったし、人情ものとしてもそれぞれが魅力的な作品集だった。こういう題材にはやっぱり、大正時代あたりが一番良く似合うんですね。四民平等、文明開化といいながら、まだまだ全然垢抜けていない日本だからこそ、こういった空気感が醸し出せる訳で、時代設定も秀逸だと思います。どれも良くできた作品でしたが、中でもやっぱり表題作の作り込まれ方が素晴らしかったと思います。