深層 (光文社文庫)

著者 :
  • 光文社
3.19
  • (3)
  • (9)
  • (18)
  • (6)
  • (1)
本棚登録 : 91
感想 : 15
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (334ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334743239

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 4つの短編からなる切ない話。
    針は
    医療従事者の研修医の不手際と二重チェックしなかった看護師と巡回しなかったのと、様々な要因を全て他の医学部から来たチーフレジデントに罪を被せる。
    これはきちんと読めないぐらいに許せない話だった
    スターバードマーテルは
    元妻が元夫の幼稚園児殺害に至る経緯を細かく弁護士に手紙を書く内容。
    DVにあいながらも本当は旦那は優しい、弱いから殴る。
    殴られて流産した子どもを愛していたと、自分では死ねないから死刑にして欲しいと懇願する。
    離婚も自分が旦那の心内を知ってしまって憎悪に変わったので逃げた。
    離れてもDVの影響は大きいのを知る。

    鏡は
    13歳の女の子が援交の故殺されてしまう。
    中学教師の冴えない男もその女の子と援交しようとしていたがどうしても出来なくて女の子の拠り所となるが、自分の保身の為拒絶する。
    最後まで気の弱い教師だった。

    ディアローグ
    妻子共に鬱病に冒され家事、仕事、看護に追われる男が息子の自殺を期に過去を振り返り妻の才能を押しつぶして家事を妻に任せ、発病のきっかけ、自分の考えを息子に押し付けて息子の意見をきいてやらなかったことへの後悔。
    これはどの家庭でも起こりうる内容で、胸を打たれる話だった

  • 針 / 書き下ろし
    スターバート・マーテル / 書き下ろし
    鏡 / 書き下ろし
    ディアローグ/ 書き下ろし
    解説(長田渚左)

    『深層』 2002.9 光文社刊 文庫化

    カバーデザイン 泉沢光雄
    カバー写真 TOMOMI SAITO/A.collection/amanaimages
    カバー印刷 堀内印刷
    印刷 堀内印刷
    製本 関川製本

  • うーん、立場が違えば皆切ない人々、ってゆーことなのかな…。

    一話目の「針」のような立場にたたされてしまう社会的弱者は、いたるところにいそうだけど。

    「鏡」のウサギの生い立ちはなんかケータイ小説にありがちな感じで微妙(って、ケータイ小説読んだ事無いけどw)

    「ディアローグ」は引き込まれる文章はすごいけど、智恵子抄と大江健三郎混ぜたみたい…。

    「スターバート・マーテル」はなんか切ない…不覚にも泣きそうになった。いや、事件そのものと犯人は許せないんだけど。

    って事で、可もなく不可もなし。

  • 「針」を読んでいて、
    実際にこのようなことが多いのだろうと思う。
    大学病院だけでなく、
    普通の会社でも守られる人とそうでない人とがいる。
    悲しいが、それが人間社会だと思う。

  • 針…医療ミスの裏側

    スターバトマーテル…無差別に子供を殺した犯人の妻

    鏡…援助交際の末、死んだ少女と中学教師

    ディアローグ…躁鬱病の息子が自殺を謀る。死の淵にいる息子との数日間。劇作家。

  • 実話を元にしたのであろう短編小説集。
    最後の一話は少し長め。

    すべて、やりきれない話ばかり。
    とくに「鏡」は読んだ後の不快感(イライラ)が
    しばらく止まらなかった。

  • タイトルの通り、人の深層心理を覗いたような作品。

    悲しい話、やりきれない話ばかりで救われない登場人物が多いですが、まるで全く同じような境遇の人が自分の周りにもいるのではないかと思わせるほど、深く登場人物の心情が書かれています。

    4話目の「ディアローグ」で精神を患った奥さんを、人を傷つけることができず自分を傷つけている(原文ままではありません)と表現した文章が印象的でした。

  • 医療過誤事件や無差別殺人などの事件。

    報道から見えるものが全てと感じているのではないでしょうか?

    見方を変え、より深い所を見れたとしたら、もしかしたら何かが変わるのかもしれません。


    深層をまざまざと見せ付ける氏の筆致に驚嘆の念を抱く四編の物語、皆様にお勧め致します。

  • ◆針
    ◆スターバート・マーテルスターバート・マーテル・・・田岡弁護士に送られてきた手紙は、今担当している7人の子供を殺害した男の元妻からのものだった。その手紙には、「彼の言う通りに死刑にしてやってください」の言葉と共に、彼への思いがせつせつと綴られていた・・・。
    ◆鏡
    ◆ディアローグ
    以上4編の短編集。そのどれもが実際にあった話を元に書かれているというが、悲しいやるせない話がほとんどである。

    ◆スターバート・マーテル・・・結婚していた当時ずっとDVを受けていたにも関わらず、元夫が「本当は優しい人」「本当は弱い人」だからとうったえ、最後にはもう一度結婚してもいいから死刑になるまで元夫のそばにいてやりたいとまで言う元妻。正直、DVを我慢して一緒に居続ける女の気持ちは全く理解できない。が、受け入れる女の心理とはこういうものなのかとわかった気になってしまいそうな程、この手紙はリアル。結局、こういう女の存在はDV男にとってどうなんだろうか。更生のために必要な存在?それとも、助長させうる危険な存在? 一瞬優しくなるからといって許しているとエスカレートするというのはよく聞く話だが、そういう時にどう対処するのが本人の為になるのか知らないことに気付いた。

  • 何気ない日常の中で命の瀬戸際に出会った人々の、心の深層を描き出した短編集。

    彼らはそれぞれに罪を犯し、あるいは罪の意識に苛まれています。
    その一つ一つが、自分にもいつ起きてもおかしくない出来事ばかり。
    私には彼らを断罪することはできません。彼らの小さなミス、自己弁護、正当化、全部自分と重なって見えるからです。

    人間の深層心理、突き詰めればこんなところに落ち着いてしまうのかもしれません。

全15件中 1 - 10件を表示

朔立木の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×