- Amazon.co.jp ・本 (413ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334751722
作品紹介・あらすじ
理想の女性を追いつづける男の哀しみを描く「冬の夢」。わがままな妻が大人へと成長する「調停人」。親たちの見栄と自尊心が交錯する「子どもパーティ」。アメリカが最も輝いていた1920年代を代表する作家が、若者と、かつて若者だった大人たちを鮮やかに描きだす珠玉の自選短編集。
感想・レビュー・書評
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フィッツジェラルドの短篇集をはじめて読む。「調停人」のラスト、ムーン医師の台詞「私は、5年の歳月」にしてやられた。
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理想の女性を追いつづける男の哀しみを描く「冬の夢」という紹介に興味を引かれ、この話のみ読了。
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身を固めることに対して、いろんな切り口で向き合うことになる主人公たちを取り上げて、来たるべきその契機をそれぞれの人物の濃度で描いている。
逆に言えば、若者であることは身を固めないことにあるのかもしれないし、フィッツジェラルドにとって青春を定義づけるものかもしれない。いずれ周りの人間や自分自身が完全に身を固めるときが必ず来る(若者としての終わりが来る)と決まっているから、若者はみな悲しいということか。
ただ、最後に振り返った時、勝ち得たものごとの痛快さが、その過程で失ったものごとへの思い入れを大きく上回れば、悲しくならずに済むのかもしれない。「ラッグズ〜」や「グレッチェン〜」ではそれを果たせている点で、その他の悲しい各編とは異質に見える。
特にいくつかピックアップすると。
「お坊ちゃん」…独り身の社交的な心許なさに段々と呑み込まれる悲しみ。家格にとらわれる金持ちという、ギャツビーと共通した属性を持つキャラクター。
「冬の夢」…青春の対象そのものがもう戻ることない形でかき消えてしまう悲しみ。過去は取り戻せると考えた(が結局無惨な結果になった)ギャツビーをなんとなく連想させるテーマ性。
「子どもパーティ」…自分本位を棄てて親や配偶者という役割になずむ悲しみ。
ほか、「調停人」は世にも奇妙な物語みたいな風味。
フィッツジェラルドがこれらの作品を出したのが30歳。時代は変われど、"アラサー"にうってつけなのか。 -
サリンジャーが少年期ならば、フィッツジェラルドはまさに青年期にふさわしい。
失ってしまったもう戻らないもの、失うまいと光を追い求める人々、この短編集に出てくるすべての悲しみや情熱や美しさや儚さは、全部わたしたちの中にあるものだ。失ってしまったものを取り戻すために、それらを思い出すために文学が存在するとしたら、フィッツジェラルドは永遠に忘れ去られることはないだろうと思う。
原題は"ALL THE SAD YOUNG MEN"だが、これを『若者はみな悲しい』と訳した翻訳者のセンスに敬意を表する。
若者はもちろん、かつて若者であったすべての人々に読んでもらいたい作品だ。
中でも『冬の夢』と『常識』は特に好きな短編です。 -
「若者はみな悲しい」って何なのかと思ってたら、第3短編集のタイトルだった。なるほど。短編たちを見ていくと、やっぱり色んなところに引用されている「金持ちの青年」と「冬の夢」が抜きに出ているように感じ、残りの短編は「えっ、こんな話?」って思ってしまうようなものもなきにしもあらずだった。噂には聞いていたが、ややムラがある作家な感じがする。「冬の夢」のラストはいつ読んでも非常に美しく、胸に突き刺さる。
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フィッツジェラルド自選の短編集の新訳、光文社古典新訳文庫版。2000年代になってなされた翻訳版のこともあり、言い回しが古く感じることがないのがこの文庫シリーズの好ましいところ(20年後は古臭くなっているのでしょうが)。
「華麗なるギャツビー」の習作とも見れれる小品を含む映像的な描写あふれる9編。若者の脈打つような生き様を描くものから、コメディのようなもの、教訓めいたものなどが連なる。
「華麗なるギャツビー」読後におすすめ。 -
九州産業大学図書館 蔵書検索(OPAC)へ↓
https://leaf.kyusan-u.ac.jp/opac/volume/1378915 -
結婚や家庭をめぐる若者の短編集。妻に、こどもに、夫に、仕事に、友人にいろいろ悩んでいるところを見ると、時代は違えど同じことでみんな悩んでるんだなーとおかしくなる。「お坊ちゃん」「常識」みたいな、眩しい恋にはもう戻れない切ない話が好き。
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お坊ちゃん のアンソンは、なにか見たことかある人物。
冬の夢 のデクスターの方が可愛い。
でもいずれもまさに若者の物語で、なんともあまっちろい。 -
代表作「グレート・ギャッツビー」で知られるフィッツジェラルドの自選短編集。
数多くの短編を書いたものの、中には良質と言い難い作品もあるようだ。
9編の掌編が収められているが、重々しい作品というよりは、読後に爽快感が感じられる作品が多かった。劇中で発生する出来事によって、主人公が成長するという内容がほとんどであった。
しかし、ヘミングウェイもそうだが、狂騒の20年代と呼ばれる1920年代のアメリカの都市が持つ時代感といったら。現代ではいずれの国も持ちえない空気感ではなかろうか。若干の退廃的な雰囲気を感じさせつつも、未来への明るい展望を感じさせる。 -
悲しいけれど、淡々と語られてどことなくミニシアター映画のような短編集。
『お坊ちゃん』と『冬の夢』が好きだった。
『冬の夢』の主人公の現実や心を支えていたのは叶うことない夢だったのだろうか。
主人公の考え方には基本的に共感しないけど、孤独感や疎外感は誰にでも感じ得るものだけにどの作品も惹きこまれる部分があった。 -
古典新訳。フィッツジェラルドの短編集は、新潮の野崎訳は読んだことあるけど、かなり昔だしあんまり覚えてない…。
ということで、久しぶりに読む。
『冬の夢』『子どもパーティー』などすごくいい。というか、悲しい話も明るい話もほとんどどれもおもしろい。 -
私も一応「若者」に属するので気になって読みました。
20代の登場人物がでてきます。
20代って一番、色々な変化がある時期だと思います。
そういう悲しさっていうか、切なさっていうのか、そういうものが集まった短編集です。
とにかくみんな性格が激しいというか、心の浮き沈みが激しいというか…これも20代特有の不安定さなのかもしれません。
訳もとても読みやすくて、理解もしやすいです。
フィッツジェラルドはフィルム、映像を見ているような文体なので、ワクワクさせられました。
さらっと読めたのであまり心には残る感じはしなかったので、星3つです。
私は少し難読なぐらいの方が、じっくり読めるのですきだなぁと感じました。 -
フィッツジェラルドの短篇集。1920年代のアメリカを舞台に、人生の成功を夢見たり、狂おしいばかりの恋愛にのめり込む若者たち。
だが、キラキラする夢のような時は長くは続かず、分別とあきらめを身につけていく姿が、どこか物悲しく、ほろ苦い。 -
タイトルからして心を掴まれる短編集。みずみずしい訳が素敵☆
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夢から覚めてゆく若者たちの話。
大人になる悲しみってやつなのかな。
男性が読んだ方が共感できる本だと思う。 -
悲しいさ
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文体はとても引き込まれるんだけれど、偏見を量産するような文章な気がした
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2012.2.25読了。
フィッツジェラルドは映像が細やかに頭へ浮かんでくるので、読みながらにして映画を観ている気分になる。