マザー・マーダー

著者 :
  • 光文社
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本棚登録 : 793
感想 : 79
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  • Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334914363

感想・レビュー・書評

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  • ぞぞぞ…っとします(笑)

    第一話からふつふつと感じる梶原家の不気味感…
    最後まで読むと不気味感に加えて恐怖やら、気持ち悪さやら、色んなイヤーな感情を味わえます!

    嫌な気持ちを感じさせられるのに、読みたくなる不思議。

  • 危険な一冊。

    すごいな。登場人物達の口からこぼれ落ちる言葉に何度もざわざわと震えさせられた。

    そして各章、目くらましのような術が張り巡らされそれに気づいた瞬間に心はきゅっと縮み、その巧みな目くらましの術に感嘆すると同時に縮んだ心がぶわっと解放されていく、そんな感覚。

    これがたまらない。

    最終話はやられた。

    これはまるで大きな落とし穴にハマったよう。

    心だけでなく、毛穴まできゅっと縮んだ。
    そして鳥肌。

    家族って、親子、母って…あぁ、怖っ。

    こんな読後感を味あわせてくれるなんて良い意味で危険。
    完全、矢樹作品中毒患者状態。

  • 第五話まである短編集。

    登場人物が、どこかで繋がっていて、最初から不穏な空気を纏っている。

    そして、それぞれが嫌な感じのトラブルを起こす。

    この嫌な企みが、なんともいえない気持ちの悪さの正体なんだが…。

    母親とは、ひとつ歯車が狂うと狂気に変換してしまうのか…と恐ろしくなる。

    これは、どうなるのか…と一気読みせずにいられない。
    最後の五話のマザー・マーダーで、姿を見せない息子の存在が明らかになるのだが、まさかの結末だった。
    ここまで、騙されるとは…想定外だった。
    母親の支配力の凄さに驚愕し、恐さを覚えた。

  • 【書評・東えりか】~伏線が回収された瞬間「やられた」と。悔しさとともにミステリー小説の醍醐味を堪能『マザー・マーダー』 【書評】『マザー・マーダー』著◎矢樹純|教養|婦人公論.jp
    https://fujinkoron.jp/articles/-/5488

    ◆愛するがゆえの醜悪さ [評]細谷正充(文芸評論家)
    マザー・マーダー 矢樹(やぎ)純著:東京新聞 TOKYO Web
    https://www.tokyo-np.co.jp/article/159784

    矢樹純、身近な恐怖を描いた新作『マザー・マーダー』を語る 「自分の身に起こったら、どんなに怖いだろう」|Real Sound|リアルサウンド ブック
    https://realsound.jp/book/2022/02/post-966058.html

    『マザー・マーダー』著者新刊エッセイ 矢樹純 | 本がすき。 - 本がすき。
    https://honsuki.jp/pickup/51015/

    マザー・マーダー 矢樹純 | フィクション、文芸 | 光文社
    https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334914363

  • 5篇からなる連作短編集だが、夫々の話における主人公が異なり、個々の話に著者のお家芸でもあるキレのあるたどんでん返しが仕掛けられている。それでいて本作のキーとなるキャラクターが横串となり、ラストにはまた強烈で鮮やかなオチ。読み終わると至るところに伏線が仕掛けられていることに気付かされる。
    念願のマイホーム後のローンと隣家とのいざこざ、夫婦間のすれ違い、詐欺、引きこもり&自立支援、中学生の不登校等、ありがちな家庭の問題と社会問題をベースにしているし、心理的にも違和感なく、物語にすぅ〜っと引き込まれる。それ故、読了後のしてらやられた感とザラッとした感情のギャップが激しく後を引く。巧いなぁ。

  • 歪んだ母性が、やがて世間を震撼させるおぞましい事件を引き起こす…

    衝撃的なタイトルにイヤミスセンサーが働き、手に取りました。ビンゴ。ゾッとする連作短編集。


  • 第一話 永い祈り
    第二話 忘れられた果実
    第三話 崖っぷちの涙
    第四話 シーザーと殺意
    第五話 Mother murder

    一話ごとの短編かと思いましたが、
    五話繋がって一つのお話でした。

    読み進むにつれて謎が明らかになるのではなく、
    次第に深みにはまっていく感じがしました。

    読み終えて感じたのは、一話ごと異なるテーマに
    焦点を当てて描かれていたはずの話が、気づけば
    一つの強い想いに練り上げられていた気がします。
    それも深い狂気を含んだ恐ろしく純粋な想いに。

    予想以上に心を持っていかれた、
    とても心地よい充実感を覚える余韻でした。

    個人的には『忘れられた果実』と
    『Mother murder』が特に印象深いです。

  • 五話から成る連作短編集。
    どの話にも出てくるのが梶原家。
    梶原家に住んでいるのは看護助手をしている母とひきこもりの息子で、かつては父親と母の親が住んでいた。父親とは離婚。親は亡くなって現在は二人暮らしだ。
    ご近所トラブルだったり、職場でのいざこざだったり、その中心にいるのは母、梶原美里だ。彼女が息子への愛情は異常なほどだ。
    そして四話目に中学校時代の息子が出てくる。
    ここから物語は急展開して最後の母親殺しに至るが、驚きの結末だった。

  • 【収録作品】永い祈り/忘れられた果実/崖っぷちの涙/シーザーと殺意/Mother Murder

    なんとも嫌な感じの話。被害者も加害者もどこかねじが外れている。被害者に同情する必要がないのはいいが、それにしても気持ちが悪い。

  • 連作短編?といっていいのか。 
    全ての話に共通で出てくるのは梶原美里。彼女には溺愛する息子、恭介がいる。
    恭介は長い間、家から出てこず、引きこもっている…

    1 永い祈り
    佐保瑞希は中古で家を購入した。娘の陽菜がいる。隣人の梶原美里に陽菜の声がうるさいとクレームを入れられる。ローンもあることから、簡単に引っ越しできない彼女は気が進まないながら、元の職場の同僚、彩香の仕事を手伝うことになる…

    2 忘れられた果実
    相馬は病院で看護助手をしている。相馬には一人娘がいた。夫とは離婚し、一人で暮らしている。病院の同僚に梶原美里がおり、「娘は薄情だが息子は可愛い」と相馬に自慢していた。相馬と娘はあまり親密な愛情表現がない。元夫が死去し、娘が夫の財産を相続したが、その後、元夫に隠し子がいることがわかり、その子が相馬に接近してくる…

    3 崖っぷちの涙
    自立支援施設で働く戌亥。ある日、所長の三浦から引きこもっている人を外に連れ出す「引き出し」の仕事をしないか、と言われ、報酬に目がくらんだ野崎とともに、連れ出す人がいる家に向かう。その家が「梶原」宅だった…

    4 シーザーと殺意
    城戸千春の母は困惑している。千春が学校で怪我をしてから、学校に行けなくなってしまった。美術部の千春はシーザーの石膏像が落ちてきたことで怪我をしてしまった。千春の母はパート先の同僚である志保さんから美術部でイジメがあったこと、美術部に所属する梶原恭介の母にまつわる噂話を聞く。千春が学校に行けなくなってしまったのは、千春が「自分は梶原恭介に殺されそうになった」と考えているからだった…

    5 Mother Murder
    伏線回収話。寺町梨沙はライターである。母を殺害した梶原恭介の記事を書きたいと願っており、彼に手紙を送る。彼から手紙が返ってきたライターは今のところいないらしい。梨沙は編集長の秋月の子供を妊娠していることがわかり、どのようにするか決断出来ない状態が続いている。そんな中、梶原恭介から返事がくる…

    イヤミスで、もう読みたくない、と思うのだけれど、ついついページをめくってしまう、そんな奇妙な感覚だった。伏線回収は凄い、と思った。
    「恭介に殺してもらえて、美里は救われたでしょうね」この言葉、すっかり騙されたよ…
    3 崖っぷちの涙の野崎(多分 5 Mother Murderの神前寺伽弥子だろう)にも騙された。もう、絶対男だと思っていたのに。
    2 忘れられた果実が個人的には一番好きな話。

    マザー・マーダー、母を殺すのか、母が殺すのか、どちらだろう?と思っていたけれど、そのどちらもある、連作短編。どこにでもありそうな雰囲気で、でもどこにもあって欲しくない状況の小説。母と息子、という繋がりの強さが強調されているか、と言えば、私はそれほどまでには感じなかったけれど、それは見ないように目を背けているせいなのかもしれない。

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著者プロフィール

1976年、青森県生まれ。実妹とコンビを組み、2002年、「ビッグコミックスピリッツ増刊号」にて漫画原作者デビュー。『あいの結婚相談所』『バカレイドッグス』などの原作を担う。2012年、「このミステリーがすごい!」大賞に応募した『Sのための覚え書き かごめ荘連続殺人事件』で小説家としてデビュー。2019年に上梓した短編集『夫の骨』が注目を集め、2020年に表題作で日本推理作家協会賞短編部門を受賞。

「2022年 『残星を抱く』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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