- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334928742
感想・レビュー・書評
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介護をテーマとした大量殺人事件
介護と安楽死と尊厳死
どれも一言では語ることの出来ない現代社会での大きな問題
自分ならどうするのか?
考えさせられた一冊になった
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殺人事件の裁判の判決「死刑」言い渡しの場面から始まる。
事件に関わる登場人物のそれぞれの独白から、時間をさかのぼりその事件が明らかになっていく。その事件とは、介護度の重い認知症で、在宅で介護されている老人が亡くなっていく。事件性は認められていなかったが、自然死を装った殺人だった。
さて、その犯人は?
「こいつが犯人だ」と思いつつ読み進むが、自分の推理は見事に覆される。
介護する側と介護される側、双方のQOL(生活の質)を守ることがいかに困難か。
実際に介護の仕事に就いている私にとって、身につまされる場面が沢山あり、今まで経験してきたことが脳裏を駆け巡っていた。
「みんながニコニコしていられる介護」を目指して介護業界に飛び込んだけれど、特に在宅ではそんな綺麗ごとでは済まない。
相模原障害者施設の殺傷事件の裁判も始まった。
これからはもっともっと介護を必要とする高齢者が増えていく。
「みんながニコニコ…」は絵に描いた餅なのかもしれないけれど、初心に戻ったタイムリーな読書になった。 -
介護の問題は、映画や小説で何度も題材にされるが、いずれもまだ正解がでない
救いがでない問題であることを改めて考えさせられた。 -
戦後犯罪史に残る43人を殺害した凶悪犯『彼』に下された死刑判決。
死刑判決に満足げな『彼』
性善説を信じる検察官・大友は…
親の介護に追い詰められ、働くこともままならない。
斯波宗典や羽田洋子のように、貧困の連鎖に陥ることは決してめずらしいことではないだろう。
大友秀樹の父親のように、『安全地帯』の高級老人ホームに入居できるのは、ほんのひと握りだろう。
佐久間が言うように、『この世で一番えげつない格差は老人の格差』なんだろう。
働きたくても働けない…
思うように動けない…
認知症で記憶もままならない…
その介護に引きづられ、その息子や娘も…
介護は経済的負担、体力的負担、そして精神的負担が大きい。
貧困の連鎖が始まる…
介護疲れから親を殺してしまう。
『彼』のやったことは許されることではない。
が、『彼』がやったことで救われた人もいるだろう、羽田洋子のように…
『彼』がやったことは、日本の高齢化社会、老人介護問題に警鐘を鳴らしただろう。
『ロスト・ケア』という観点からも考える必要があるのではないか…
介護をする側へのサポートをもっと大きくしなければ…
が、犯罪は犯罪であり、暴力による解決はあってはならない。
同じ立場に立った時に何ができるのだろう…
考えさせられる。
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とある地方裁判所では、43人もの人を殺した殺人事件の公判が行われていた。…
老人介護の複雑な問題を切り込んだ作品。
犯人に至るまでの展開に工夫があり、想像はついたものの面白かったです。
多くの人が抱える介護問題。
介護にも、明らかな貧富の差があることは知っていても、今はまだ身近に感じてはいませんでした。
世の中の制度の充実を望みながら、それだけでは解決しないことも多々あるだろうと思います。
介護の終了が救いであることも否めないとも、今回感じました。
人それぞれに適した介護ができる、受けられる世の中が来るといいなと思います。
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ずっと前に読んだ本。
日々、介護に追われる身としては
これはフィクションではなく、現実とリンクする。
底流に流れるのは「キリストの黄金律」
心身削られて、痛い。 -
ぐいぐい引き込まれた
老人介護問題 みんな分かっていた、これからも
日本の抱える問題がえぐられている
そして ラスト えっ!
ミステリーの面白さを堪能できる
≪ 介護とは 何を守るか?ロストケア ≫ -
現代日本が抱える社会の「穴」、介護問題、介護ビジネスに焦点をあて、抉る。
問題の周辺に付き纏う、偽善、欺瞞、立場の違う正義感が次々に晒されていく。
犯人の思考に完全に異を唱えられない自分が確かにいた。
クライマックスに近づく中で明らかになる真相も、思わず読み返さずにはいられなくなる上手さ。
これは面白い。 -
第16回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。
デビュー作とは思えないほど堂々と、作品の
骨子が太くそしてグサリと突き刺さってきます。
ミステリの装丁を身に纏う事で自分のような
人間にも、見事にその重さと避けては絶対に
通れないこの先...を見事に提示してくれ、
自分自身が向かって考えないといけない...という
当たり前の事実を認識させて貰えます。
社会派ミステリーなんて枠を越えてでも
多くの人が手にして欲しい...と思える作品。
所謂コムスンの事件をベースに現代の
介護が抱える(というか単に先伸ばしに
している)問題、家族、高齢化...さらに
性善説、そして正義対正義と話は絵空事ではなく
確実に将来に待ち構えている事...について
淡々と抉るように展開されていく事に、
誰もが他人事...ではない現実と比べながら
身を削がれるような想いになってしまいます。
作中で犯人とされた「彼」がしてきた事の罪を
裁く現代社会と現代の法。「彼」の行ってきた
正義は一矢報いる事が出きるのか...。テーマが
重い...だけで済ませてしまうことが出来ない
痛烈な作品。
ちなみにミステリとしても犯人である「彼」
を追いつめる手法も見事でかなり面白い。
自分の今年のベスト3確実...っぽいです。